令和しち年だよ謹賀新年
あけましておめでとうございます、ニョロ(お辞儀)。土星の裏側のタコ・クラゲ型宇宙人です。新年が皆にとって良い一年となりますように。
旧年は老いるショックの極まる年となった。年末に至っては、コロナ以来滅多に開催されなくなった忘年会で浮かれて盃を重ね、いい気分でお開きとなったまでは覚えているが、その後の記憶は自宅の最寄り駅で下車するまで霧の中。改札口ではたと気付く。カバンを持っていないではないか、宇宙人よ。財布もスマホも何もかも入っているカバンだぞ。
二日酔い必至の頭を精一杯回転させて、駅窓口に忘れ物を告げる宇宙人。もう終電で遅いから明日また来いと言われ、大人しく帰宅する宇宙人。奇跡的に家の鍵はポケットに入っていたので助かったが、明日起きたらカバンを探さねばならぬ。サイアク盗まれたやもしれず、クレカその他をストップする段取りやらスマホの探索などあれこれ課題が山積だ。このまま眠っては忘れそうだから、一旦風呂に入ろう。と殊勝にも風呂を沸かす宇宙人。熱めの湯に浸かる宇宙人。さすがに目が覚めたがそれも束の間、ほろ酔いでそのまま寝入ろうとする宇宙人。いかん、溺死してしまうではないか。あわてて湯から上がる宇宙人。朦朧としながら服を着、布団を敷いてばたりと倒れ込む宇宙人。
翌朝、目を覚ましてむくりと起き上がる宇宙人。記憶を整理すると、帰宅途中のどこかの駅のトイレに籠っていたのを思い出した。その証拠に、脱ぎ散らかした昨晩の衣服を改めると、なんとゲロだらけ。思い出したぞ。ゲロしましたね。子供のいる友人にメールして吐瀉物の洗濯方法をレクチャーしてもらう宇宙人。「それは重曹水に漬けてだな、すすいで天日干しし、まだシミが残るなら酵素系漂白剤を試すべし」。ふむふむ、と素直に実践する宇宙人。日差しも爽やかなベランダに哀れな衣類を吊るす宇宙人。このところ晴れ続きで良かった。シマダヤのセールで買った新しいブーツもやられた。登山靴を洗う要領でブーツをベランダにしゃがみこんで洗う宇宙人。
そうやって作業している間に二日酔いも覚めて来たので、最寄り駅へ出頭する宇宙人。
「昨日の続きです。カバン一式の忘れ物をしました」
「どんなカバンですか」
「四角い箱型で、全体は茶色ですが表に絵が描かれています。オレンジ色の馬と騎士です(つまりビリービンの自作カバンであった…)」
盗まれていなければトイレのフックに掛けっぱなしで出て来た可能性が高いので、そう告げる宇宙人。駅員が問い合わせている間に、盗まれた場合の諸手続きを脳内でシミュレーションする宇宙人。まず駅前の銀行に行ってカードをとめて、電話はスマホしかないからPCを持って図書館に行ってネットでその他の連絡をし…すると意外と早く結果が出た。やはりビリービンは目立ったのだ。供述通りのカバンが保管してあると告げられ、狂喜する宇宙人。中身を訊かれたのであれもこれも憚りなく列挙する宇宙人。必死だよ。その日の昼間に購入した菓子類まで残っているそうだ。つまり丸ごと出て来たようだ。財布もスマホも入っているという。トイレの掃除人が回収してくれたのだな。有難い。日本人のモラルは素晴らしい。
保管駅まで出向いて無事にビリービンを回収する宇宙人。駅員の皆さん、ご迷惑お掛けしました。日本っていい国だな。外国ならまず戻って来ないか、財布は抜かれているよ。カードも現金も揃っている。マフラーも入っている。素晴らしい。日本バンザイ!
とはいえ、己れの失態にいたく失望する宇宙人。トシのせいにはしたくはないが、いくら久しぶりの忘年会だからって自分の酒量を忘れるなど、この30年なかったことだ。老いるショックであちこちぶつかって歩くようになったり、物を落とすようになったりするのはまだしもなのだ。先が思いやられるのだ。昨今は物価上昇で日々の買い物の値札にも目を光らせておらねばならぬというのに、出るのはため息とカネばっかりとはこのことなのだ。
新年早々かような話題で恐縮でありますが、そこのあなた、今笑ったでしょ? 笑ったよね? じゃあ体が温まって免疫がアップしたということで、めでたい新年スタートということに致しましょう。本年も土星の裏側をよろしく。ニョロ。