能稽古のススメ、再び
窓を開けて就寝する習性の宇宙人は、この3日程キンモクセイの花の香りで目を覚ましている。ようやく秋らしい気候になったのだ。例年はもう少し早く開花するのだが、残暑が長くて今頃満開なのだ。涼しくなって頭もスッキリ冴えた宇宙人は運勢鑑定を再開したよ。あ、再開告知はエキサイトブログの「土星の裏側」のみで、「土星の裏側note」にはしていなかったね。このnoteは読書好きが集まる性質上、告知類の記事はあまり載せないことにしている。運勢鑑定の看板ほか、「あなたの山水画」や演能会のお知らせなどはブログのみの掲載なので、そちらも読みたい方はブログ版をご覧下さい。広告が挟まるのがジャマだけど。
「宇宙人、水戸藩に出没」の記事もnoteには載せなかったから、noteのみの閲覧者には話が繋がらなかったかもしれない。改めて書こう。能は一般人でもお稽古事として習えます。プロの能楽師を目指すなら手順と実績が必要ですが、素人弟子ならいつでも入門可。場所と時間と料金が合えば好みの先生に弟子入りできます。宇宙人などはネットで調べて入門したよ。集団稽古と個人稽古が選べて、大体前者の方がお安いが、後者でも英会話より安いところはある。途中から個人稽古に変更も利く。宇宙人は初めから個人稽古だが、庶民にやさしい金春流なので家計を圧迫されない。業界最大手の観世流はお高いと聞く。また日本舞踊などは入門が安くても段々出費が嵩んでいくシステムで、一般庶民が長く稽古を続けるのは経済的に苦しいようだが、わが金春流はかようなシステムがないのでお値段そのまま。但し素人演能会に出場するとなると参加者たちで場所代等を負担するので、それなりに出費がある。出場は任意。宇宙人もここ数年は出たり出なかったりしている。昨今の物価上昇でますます出場は厳しくなりそうだ。米と味噌を優先する宇宙人なのだ。
先日の茨城県の芸術祭は、県が補助金を出しているので参加費は安く抑えられている。宇宙人はというと、助っ人地謡として友情出演だったので参加費免除であった。まあ東京から水戸までの交通費は自腹だったから個人的には赤字なんだけど、自分としてはレジャーだからいいのだ。お弁当とお菓子も出たし、楽屋では観世流の先生がお茶を立ててくれるというので、遠慮なく頂いた。本格的な茶碗に泡立った抹茶が出てきて驚く宇宙人。道具をわざわざ持って来たのだな。いろんな趣味人が集まっていて刺激がある。茨城県で稽古を始めたい方は、「茨城県能楽連盟」に問い合わせれば相談に乗ってくれよう。金春流でやりたい人は宇宙人に問い合わせてくれてもいいよ。
声優・俳優の津田健次郎氏は二人の子供に能を習わせているという。「七海役」で海外のアニメファンにもその名が知られている国際人(?)として、日本の伝統文化を子供に躾けたいらしい。小さい頃から能を始めると、素人であっても能の本舞台に子方として出演する機会があり得るので、小さなお子さんをお持ちの方は是非体験教室をお試し下さい。ジャニーズに送り込むより安心で高尚なのだ。儲からないけど。印と禄は反比例するから仕方ない。
アニメと言えば、この秋から『化物語』の新作がスタートした。宇宙人はこの<物語>シリーズが好きで、原作のラノベは読んだことないが、そのシナリオの端々に見られるちょっとした真理に好感を抱いている。例えば最初回のセリフに「被害者づらが気に食わない」というのがあって、今でも覚えている。宇宙人は算命学者だから、幸運も不運も呼び込むのは本人だという考えは譲らないのであるが、世の中に溢れる恨み節の殆どはまさにこの浅薄な被害者意識から生まれており、「誰かのせい、何かのせい、宿命のせい」にしたくて運勢鑑定を求めてくる相談者にはこの「被害者づらするな」のセリフを一律に言ってやりたいと思っている。いや相談者でなくとも、例えば戦争被害者であっても、それまで事態を傍観していたり、おかしいと思っていても見て見ぬふりをしたりして、人生や社会に責任をもって向き合って来なかったツケがこういう悲劇を招いたのだから、こうなったのは自業自得で、他者ばかりを糾弾するのはお門違いだと考えている。
そういった日常によく見られるこまごました理不尽や腑に落ちないモヤモヤを、<物語>シリーズはスパッと指摘してくれることしばしばなので、今回も楽しみにしている。新作の初回にはこんな内容のセリフがあった。「不安や不満がないと、人間は生きている実感が得られないのではないか。ぬくぬく甘やかされて暮らしていると、生きているのか夢を見ているのか区別がつかなくなる」云々。如何ですか。不安や不満を抱えるミドルエイジ・クライシスの提唱者や、「悩まないで」と安易に慰撫して事態を見て見ぬふりする輩に言ってやりたいセリフだと、宇宙人は思うのだが。安心と満足だけの人生の、なんと味気なく彩り薄いこと。そんな単調で浮き沈みの波のない人生は、アニメやラノベにも及ばない。素粒子だって波立っているというのに。起伏のない単調な人生を過ごしているからつまらない老人になるのだよ。行き着く先は認知症まっしぐらなのだ。不安も不満もわが人生のドラマのネタだくらいに思ってどんと向き合え、なのだ。