
モノづくり大国が良かったのに…
宇宙人が子供の頃は学校で「日本は技術立国・モノづくり大国である」と習ったが、そんな宇宙人が織田信長の年を超えてしまうくらい月日が経った今、日本の看板は米国と同じ「金貸し大国」なのだそうだ。いつの間に。金貸し国家のトップを走る米国にはまだまだ及ばぬものの、日本の歳入はかつて自動車や家電などが上位を占めてその輸出で国を富ませていたのが、今や金貸しによる歳入がこれらモノづくりを抜いたという。
何だかがっかりした気分になる宇宙人。債務者よりは債権者の方がいいけどさ、モノづくりしている人の方が金融業者よりカッコいいし、世の役に立つ真人間に思えるんだよね。だって金貸しとか商人って自分では何も作らないのに、モノやカネを右から左へ動かすだけで手数料取る人たちじゃん。古今東西カッコいい職業ではなかったし、ユダヤ人などまさにこの職業のせいで西洋人に差別されてきた歴史がある。
日本は江戸時代に士農工商のランクがざっくり広まっていたから、歌舞伎などを見ても商人は大抵悪役や小役だ。ずる賢い小者として登場する。商人より貧しくともモノづくりを生業とする農民・工人は善人で、そんな善人を騙そうとする悪徳商人や代官を懲らしめるのが武士の役目であった。と思っていたが、昨今はこの士農工商の存在自体が危ぶまれているそうだね。源頼朝の肖像が実は別の誰かだったり、「1192(いいくに)作ろう鎌倉幕府」の年号が変わったりと、歴史研究の進展により学校の教科書もその都度更新されていくが、士農工商もその一つだと聞く。まだ撤廃するところまでは行かないようだが、宇宙人などは士農工商には地域差があったのではと考えている。藩政は一律ではなかったからだ。
いずれにしても士族がピラミッドのトップであったことは事実だし、武士に憧れても農民や町民が武士になることはできなかった。なれたのは幕末の混乱の短い期間だけだった。その後明治初期には殖産興業の功労者が爵位をもらったりして尊敬されたが、彼らを一般的な商人や金貸しと同列に見ることはできない。儲けた金を酒池肉林の浪費に費やしたわけではないからだ。「お国のために」かなりの部分を還元していた。
では今の日本の富豪はどうかと言えば、残念ながら一般的な金貸しか、浪費型の商人なのだった。それで宇宙人はガッカリした気分になったのだ。それが日本の主要な国力の元だと知って。経済力が国力に直結する時代とはいえ、モノづくり大国ニッポンの方が良かったな。皆さんはそうでもないですか。一般的な米国人の夢は「働かずに暮らすこと」だそうで、若いうちに資産を蓄えて、引退後はプール付きの自宅で毎週パーティーでも開いて悠々自適に暮らすのが成功した人生図なのだそうだが、なるほどそんな生活がしたいのなら株の配当や債券の利息は欠かせまい。しかし自宅にプールがある必要性もパーティーの必要性も感じない宇宙人などは、昔ながらの職人のように生涯現役でピンピンコロリが理想の人生なのである。まだ働ける年齢なのに早々に引退して飲み食いに明け暮れる人生など、願い下げだ。そんなの糖尿&認知症まっしぐらではないか。
世間には豪華客船をホテルにして世界旅行をする富裕層がいるが、あの映像を見るにつけ宇宙人は「乗りたくない」と思う。だって乗客はシワシワブヨブヨの高齢者ばかりで、しかも「プール」を好む習性で水着姿を堂々と晒しており、申し訳ないが見苦しいのだよ。面積の狭い水着は健康的なハリのある肌の若者が着るからキレイなのであって、高齢者には高齢者に相応しい装いというものがあるだろうに。それが判らぬ男女の老人で船内がひしめいているから、およそ目の保養にはならず、せっかくの豪華クルーズも残念な視界で満たされるから乗りたくないのである。まあ宇宙人は零細だからそもそも乗れないけどさ。皆さんはどうですか。株の配当や債券の利息を当てにして、世間の何の役にも立たずに飲み食い・糖尿の人生を終えたいですか。それとも体を動かして社会に貢献し、自分のささやかな功績を後世に残す人生を選びたいですか。
以前紹介した現代ロシアのハイパー・ディストピア小説『サハリン島』には、こんな描写があった。
――(全ての歯が抜け落ち、歯なしで暮らしたこの)二年間で、チェークの食道と性格は全く使い物にならなくなった。以前は哲学や文学の話をしてくれたのに、今では食い物と排泄の話しかしない。――
ロシア文学、健在である。米国がウクライナを使ってまでロシアを目の敵にするのは、この分かり合えない価値観の違いのせいなのだ。ところで佐藤優氏は最近、社会思想家エマニュエル・トッド氏をよく引き合いに出しているが、両者がモノづくりについて同じような観点から持論を展開していたので、宇宙人は慰められた気分になった。以下はその抜き出し。
――繰り返しますが、アメリカの目的は、ウクライナを勝利させることではなく、ウクライナを使ってロシアを弱体化させることです。…ゼレンスキー政権は、歴史の例で言えば、ベトナム戦争の時のアメリカに支援を受けていた南ベトナムようになってきています。…アメリカの国力も下がってきている。これまでのような「世界の警察官」として地球上のあらゆる紛争地区に派兵するようなことは、もはや無理です。…ロシアの弱体化とアメリカの弱体化、どちらが早いかといえば、アメリカでしょう。根本的な理由を言えば、ロシアは物を作ることができますが、アメリカは物を作れないという違いからです。フランスの人口統計学者エマニュエル・トッド氏の著書の概要を挙げてみます。「(世界は)「生産よりも消費する国家」と「消費よりも生産する国家」とに分かれていった。前者は主に西側陣営の国家、後者は西側特にアメリカの目論見と対立するロシア・中国・インド。ロシアは天然ガス、兵器、農作物を、中国は工業生産物を、インドは医薬品やソフトウエアを生産し、世界市場に供給している。しかし西側、特にアメリカ、イギリス、フランスは自国の産業基盤を失っている。」日本はまだ生産できる側に属しています。本来であれば、インドと同じ立ち位置になった方が国益につながります。――
――ウクライナが勝てるとはアメリカは全く思っていない。ウクライナに対して資金を投下し続けていますが、焦げ付くだけだということはアメリカもわかっています。もちろん、焦げ付いた不良債権は、西側各国から取り返そうと思っているのでしょう。(そしてウクライナへ供給している旧式の武器もタダではなく、戦後に代金を払ってもらうつもりだが、ウクライナにそんな金はないので、国の主権や利権の譲渡でで払わせるつもりなのだ。)――
以上は、佐藤優×鈴木宗男『最後の停戦論~ウクライナとロシアを躍らせた黒幕の正体』からの抜き出しである。モノづくりニッポンに思い入れのある方は全編お読み下さい。宇宙人はいろいろビビビと来るものがあって1年程前にあれこれ書き抜きをした。掲載機会を逸していたので、今回ここに並べておくよ。以下は同対談本の引用なので、興味のない方はスルーを、興味のある方は本と被っていることをご承知置き下さい。※印は宇宙人の合いの手。
――「植民地の英語」を使わされてはならない。グローバル化を標榜して大学の授業を英語で行うことが一時期流行りましたが、今は大分少数になりましたよね。あのようなことを進めていくと、国力が落ちて植民地化されてしまうのです。例えばマクドナルド、スターバックスとか、日本上陸の最初の頃、日本語の動詞も接続詞も全然使わないような英語を店員が使っていました。これは典型的なピジン・イングリッシュ、つまり植民地で使われる英語です。単語だけをつないでいくやり方であり、全部命令形で、私はこれが非常に不愉快でした。でも今のスタバは普通の日本語に戻りました。…これが浸透すると、ピジン・イングリッシュを使うことがグローバルスタンダードだと勘違いする輩が出てくる。…アメリカのスタンダードやグローバル化について考えても、当のアメリカ本土でもグローバル化していない人は山ほどいます。一部の人たちの考えで世界の全てを単一にしてしまおうというのがグローバリゼーションの主張であり、すべてアメリカ的価値観を押し付けている。グローバル化は決して普遍的な考え方ではありません。…日本はヨーロッパに近いのです。ヨーロッパは伝統を持ち、それを大切にしている。グローバルエリート=アメリカとの最大の違いは、結局お金なんです。アメリカという国は、お金を持っている者が偉い。人間をお金の軸で評価するのが基本です。ヨーロッパと日本は、お金が究極的な価値ではない。…本当はゲルマン民族であるドイツも、アメリカをスタンダードとする世界のあり方には困惑しています。今回のウクライナ戦争でアメリカが仕掛けているのは、ロシアの弱体化だけではなく、むしろドイツの弱体化だという分析もあります。ロシアから安くガスが買えるのをやめさせて、アメリカの高いガスを売りつけている。更には戦費も負担させている。ドイツにとって良いことは何もありません。――
――(ウクライナ戦争について軍事面でも国際情勢でも仰天するほどいい加減な持論を展開する「識者」が多い中、)基礎研究をやっているきちんとした学者たちはいるのだが、例えば東大にしても外大にしても、そうした人ほど発言を控えている。今のメディアの論調はおかしいとか、事実はこうなっていると、決して発言しないのです。これに私は最大の問題があると思っている。要するに、この人たちはバッシングが怖いんです。研究の当該地域の有事に直面して、臆病になるのであれば、政治の研究なんかするなという話です。政治ジャンルだけではなく、ロシア文学者も同罪です。…(そうした中でも信頼に足る識者の名を四人挙げて)一級どころは情報戦争に流されることなく、極めてしっかりしています。――
――巡航ミサイルのトマホークを米国から買わされるのは、ある意味理解できる。そうしておかないと中距離ミサイルの方を買わされるでしょう。日本のような国土の狭い国家の場合、中距離ミサイルを配備しようにも基地の隠しようがない。トマホークは時代遅れなのですが、逆にトマホークだから周辺国もそれほど脅威を感じないというメリットはあります。…ただ時代遅れということで言うと、今回ウクライナに送られている兵器は、かなりの割合で古いタイプです。例えばスティンガーミサイルは映画『ランボー3』(1988年公開)に出てきた兵器だし、ジャベリンは1990年代前半のもの。ポーランドとスロバキアがウクライナに供給することになったミグ29は1983年に配備が開始された機体です。まさに在庫一掃的な兵器供与。(ドイツからの兵器も同じく。)…これは根本的な問題なのだけれど、各国の兵器には互換性がありません。だから弾が合わないし、融通が利かない。整備の方法も異なる。一方ロシアは規格が統一されています。更に弾切れも起こしていない。――
――有事の情報分析で重要なのは、感情を搔き立てる情報があったら、まずそれは排除することです。…(ゼレンスキー大統領がイギリス議会で事実に反する演説をした例を挙げて、)池上彰さんも言っておられましたが、ゼレンスキー大統領の演説はほとんどが煽動で、分析の対象にならないのです。プーチン大統領とは位相が全然違う。――
(※池上彰氏は芸人相手のテレビ番組でよく見かけるが、宇宙人の印象では中立的ではなく、西側の価値観に寄っている。それは芸人の頭にも判るような番組作りのせいだろうか。或いは佐藤氏が言うように、池上氏がロシア語を解しないからだろうか。)
――アメリカは、経済制裁でロシア国民の生活が参ってしまうだろうと想定していたようですが、現実は全く違っていました。…両国の大都会のモスクワとニューヨークを比べると、ニューヨークで一番大変な戦いは「ネズミとの戦い」だと市長が宣言しています。ゴミ収集などの公共サービスがうまくいっていないし、ホームレスが増加している。モスクワにはそんな状況はなく、衛生面でも格段の差がある。平均寿命は米国の方がロシアより上ですが、乳幼児死亡率は米国の方が下です。経済統計は嘘をつきますが、人口統計は嘘をつきません。ロシア人とアメリカ人は根本的に違うのです。――
――(西側がウクライナ軍に不利な戦況を報じないのと比べて)ロシア側メディアは自国に不利なところも含めて放送します。その目的は、国内の引き締めにあると思います。ウクライナみたいに「いつでも我が国の勝ちだ」といった煽動ではない。不利なところを報道すれば、国民の気持ちが緩まなくなります。政権運営において、国民の信頼を得ることは非常に大切で、国民に対して嘘をついているというレッテルを貼られると大変なことになる。ロシア人は穿って見る傾向が強い。…情報へのリテラシーは、日本人よりロシア人の方が高いのかもしれません。――
(※日本の政治家や経済人、大手メーカー、メディアに言いたいねえ。国民がそっぽを向くのは、嘘ばかりつかれて嫌気がさしているからなのだと。)
――外務省の在ウクライナ大使は、あの松田邦紀氏が務めている。――
(※『外務省ハレンチ物語』などに「赤ちゃんプレイ」他が描写された人。ウクライナにはお似合いの大使ということなのか?)
――イギリスでは社会福祉がなぜ発展したかというと、自由主義で個人がバラバラで、たとえ家族であっても互いに面倒を見るという発想がないからで、だから国家で面倒を見なければならない。核家族化が進んでいった結果です。日本が福祉国家にならないのは、家族で面倒を見るという考えが残っているからです。最初から国家が福祉に乗り出してくるということは、家族が助けないという文化や伝統があるからです。――
――ポーランドは「世界の大国」であるという自意識が強すぎるのだと思います。実力以上に自国の力を見せようとする。…しかし発言力が国力に釣り合っていない。経済力がないのです。…西ウクライナはカトリック教徒が多い地域で、ポーランドも同じ。だからポーランドとバルト三国がヨーロッパの不安定要因になって、非常に強く(アメリカ主導の)西側的な価値観を出しています。そうした状況について、ドイツやフランスはいい加減にしてくれという立場であり、イタリアとスペインとポルトガルは、仕方なく嫌々西側に追従しているという感じが現れています。――
――(ロシアのテレビ討論番組で語られた、ロシアの専門家による日本分析の例:)「日本には非常に短期間で核兵器を完成させる力があるが、いくつか問題がある。一つは弾道ミサイルを正確に誘導し、中国を攻撃する独自のミサイルと宇宙システムを持っていないこと。二つ目は日本が独自の航空産業を持っていないこと。そのため核兵器の運搬に支障が生じる。更に加えれば、核戦争においては発射場の数が死活問題になる。それは国の面積に比例する。日本の面積は小さすぎるのだ。中国は400以上の発射場を持っているので、100~150発のミサイルを撃ち込めば物理的に日本を壊滅させることは簡単だ。中国の中距離弾道ミサイルは日本に到達する。…アメリカは支援するようでいて、日本をウクライナやポーランドのように扱おうとしている。」――
(※こういう内容の番組が一般国民のお茶の間に流されているロシアと、時間を稼ぐために水で薄めたようなうっすーい報道や解説をどの局も横並びに放映する日本とで、リテラシー格差が広がるのは当然なのだ。)
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