![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/164108060/rectangle_large_type_2_5adf9c4fdf3852f4d2cf548f9ae5f037.jpeg?width=1200)
深川のカツベン講座
カツベン講座の受講生による発表会を見に行った。カツベンとは活動映画の弁士の略で、映画のタイトルにもなったそうだが、昔の白黒の無声映画の時代に音声をライブで入れていた芸人のことである。その後トーキー映画の登場で廃れてしまったが、無声映画そのものはまだ残っているので、その上映の際には弁士が呼ばれることがある。弁士はもう数人しかいないようだが、日本独自の消えゆく伝統芸能として技が継承されているわけなのだった。その第一人者である澤登翠(さわとみどり)氏が主宰する文化講座はもう17年目と言っていたかな、講座の終了時に生徒さんたちの発表会をやっていて、宇宙人のご町内だったので見に行ってみたのだ。
何が特筆すべきといって、生徒さんはいずれ劣らぬ変人ばかり。舞台正面に投影された無声映画を眺めながら舞台袖に立つ生徒弁士がアニメの声優よろしくセリフを言ったり情景描写したりするのだが、弁士の様子も客席から伺える。まず格好が普通でない。明治大正を意識したチンドン屋のような派手な着物姿の女性もいれば、メイドカフェのコスチュームばりの女性(しかも若くない)もいるし、ホストのようなタイトな黒スーツ・黒シャツに赤ネクタイ姿の男性(これも決して若くはない)もいる。どういう集団なのだ。やっぱりカツベンをやりたいなんて人は常人の感覚とは違うのだな。そんな弟子たちを優しく講評する主宰者の澤登氏も、やっぱり見た目からして普通の人ではない。弟子は師匠に似るのだな。師匠がOKを出すから弟子はやりたい放題なのだ。しかし実に楽しそうである。カツベンという特殊な表現に魅了された面々なのだ。そして映画が好きな人たちである。
宇宙人はこのカツベンをドキュメンタリー番組で知ったのだが、かくいう宇宙人の趣味である琵琶も、戦前の無声映画の時代に活動弁士と共に活躍した楽器である。宇宙人の先生の先生である昭和のレジェンド、鶴田錦史師も少女時代に琵琶付きカツベンをやっていて、当時の琵琶奏者はカツベンが主たる収入源だった。という繋がりで宇宙人もカツベンに興味を惹かれたわけなのだが、しかし宇宙人は映画好きというほどでもないからねえ。傍から見ていて自分もやりたいとは思わなかったな。チャップリンの映画とか全然興味ないんだよね。単純で。
でも先日モスフィルム・フェスでエイゼンシュタインの『イワン雷帝』を久しぶりに見たら、やはり心臓にズシンと来るものがあった。あれはエイゼンシュタインの技の効能かな。それに音楽がプロコフィエフと贅沢だった。音楽は大事だ。
音楽と映画といえば、劇場版『進撃の巨人』最終章を見てきた。1年程前にテレビで放映された前後編を合わせたものだが、宇宙人は前編を見損ねたためハンジの死を見ておらず、これを目当てに珍しくカネを払って映画を見ることにしたのだった。サービスデーだったし損はなかった。今時は映画も美術館も二千円するのだな。零細の宇宙人には贅沢な娯楽だ。『進撃』はストーリーも秀逸だが、何と言っても澤野弘之の壮大な音楽がいい。何度聴いても巨人と立体機動装置が思い浮かぶ。
その澤野弘之が手掛ける音楽で、来春『ベルサイユのばら』が劇場版リメイクで上映されると予告で知った。アニメ制作も『進撃』と同じMAPPAである。どういうベルばらなのだ。巨人でも出てくるのか。でも予告を見る限りでは、あの池田理代子の昭和タッチの作画が令和風にアレンジされて、顔面の迫力が欠けていた。子供っぽい顔になったし、フェルゼンなんかも今どきの細面になって弱そうに見えた。まあベルばらはオスカルたちが10代の頃から30代くらいまでを描いた成長ドラマだから、後半はもっと大人びた顔に描き替えるのかもしれないが。とりあえず澤野弘之の音楽目当てに見にいくつもりの宇宙人なのだった。
いいなと思ったら応援しよう!
![土星の裏側note](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/130931339/profile_b59aa7141fcbc927512eeec6c4f9f24e.jpg?width=600&crop=1:1,smart)