算命学余話 #R5「鳳閣星を基礎から考える」/バックナンバー
龍高星と玉堂星のそもそも論を掲げた余話#U116と#U117は、思った以上に人気の回となりました。龍高星は調舒星と並んで算命学界におけるお騒がせ星なので読者の関心が高いのは頷けるのですが、並列させた玉堂星は一般には地味な星とされており、敢えて龍高星と比較してその類似点と相違点を際立たせたことで、知性の陰陽とは何ぞやという視点から興味を持って読んでもらえたようです。
ところで龍高星・玉堂星という知性を司る星の話は、執筆する側としても気持ちがいいです。資本主義からこっち、知性を剋す対立項である経済(金銭)の勢力が世紀をまたいで伸長し続けており、相対的に知性や理性が劣勢に立たされている今日、巷では佐藤優氏をはじめ知性主義の復権を叫ぶ書籍がちらほら出てきました。木火土金水の五行はこの世に平均的にばらけているのが良いのですが、地球の重力を味方(魅力)にしている土性(禄)はいつの時代にあっても力をつけ易く、相剋関係にある水性(印)と木性(福)はその犠牲になりがちです。土性に限らず五行のひとつが過度に偏重した世界というのは、宇宙の淘汰の対象になるので長続きしません。従って、偏重を避けるには劣勢に立たされている五行を手助けしてバランスを取り戻す必要があります。
私自身が水性偏重の命式ということもあり、知性星の紹介を重ねて社会におけるこれ以上の禄の伸長を抑えようと微力を尽くしているわけですが、勿論知性だけに偏っても世界は歪むので、算命学余話も五行に平等に話題を振り分けなければなりません。
というわけで、今回のテーマは十大主星の基礎話に立ち戻り、財星とは逆の方向から知性星と対立する、寿星についてです。寿星とは鳳閣星・調舒星のことで、健康や寿命を司り、また伝達本能を担当している星でもあります。どうして健康や寿命が伝達とセットになっているかは後述しますが、既にお気付きの方もおられるように、私はこの寿星というのが苦手で、これまでほとんど取り上げてきませんでした。
なぜ苦手かというと、人体図に置き換えれば知性星というのは頭部に当たり、文字通り頭を使った話をすれば良かったのに対し、寿星というのは腹部に当たり、腹部といえば聞こえはいいですが、要するに生殖器のことなのです。つまり寿星を扱うとどうしても話が下ネタになってしまうので、筆が進まなかったわけです。
知性の対立項として取り上げるなら、まだしも財星の方が書きやすい。というわけで金銭第一主義の今日の社会批判をはりきってやってきたのですが、水性との対立軸で考えれば「水火の激突」の相手である火性の動向も無視できません。「水火の激突」の顕著な現象を促す推逆局と円推局については既に余話で述べましたが、局法の解説の前にまず寿星について論じるべきだったと思い至り、下ネタを恐れず、今回は寿星の陽星である鳳閣星にフォーカスしてみます。
GDPやら所得額やら納税額によって人の人生の良し悪しを判断しようとする昨今の風潮は、算命学的には明らかに禄の偏重であり、知性(印)を欠いた活動形態です。そして禄の偏重によって減退した印は、相対的に火性に属する寿の伸長を許し、火性は土性を生じるためますます禄の世界に勢いを与える、という悪循環が現代社会に蔓延しています。人間は五行のバランスを欠いた世界では快適に過ごせませんから、様々な心身の病がはびこる主原因はここにあると算命学では見ています。
寿が伸長するなら長生きできて良いではないかと思われるかもしれませんが、確かに現代社会は寿命は延びたものの、果たしてそれが幸せと同義なのかという点について議論されることは稀です。昨今では、寿命は寿命でも健康寿命が延びていないなら意味がない、という発言も聞かれるようになりましたから、この辺りで算命学が考える寿とは何かを基礎に立ち戻りつつ、星の特徴を眺めてみます。
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