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本当の意味での新たな知が生まれる

 宇宙人が気晴らしに楽しく視聴しているYouTuberの懲役太郎氏が、運営側から一方的に収益停止処分となった。最近は「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」にサングラスと帽子で顔を隠した本人が登場し(それまではアニメだった)、ヤクザ漫画の監修もするようになったと言っていたので、新たな事業展開をし始めたのだと思っていたが、動画再生による収益の減少を補うための模索だったのかもしれない。処分の理由は「反社会的活動を擁護・助長するもの」と判断されたせいだと思われるが、この人はもう更生してヤクザではないし、動画は過去の自分が属した環境を揶揄したり、カタギの人間が反社から身を守るための知識を開示したりといった内容だったので、処分理由には当たらないはずだ。大方AIか頭の悪い誰かに判断させて、雑な括りで「反社」扱いされたのだろう。本人には気の毒だし、視聴者はこれ以上本当の話が聞けなくなって非常に損した気分だ(動画自体は視聴できるが収益が本人に入らないので、以前のように熱意を以って更新しなくなるだろう)。ニセモノや作り話ばかり溢れる世の中で数少ない真実を語るチャンネルだったのに。

 AIがなぜアホなのか、その回答はそれっぽく見えても実際は的外れになるのか。それは学習もとであるビックデータそのものに誤情報が溢れているからだ。間違ったものを学習すれば間違った回答しか出て来ないのは当然である。「いずれもっと進化すれば正しい回答を出せるようになる」という楽観論に宇宙人は懐疑的だ。ではどうして懐疑的なのか、自分でも言語化できずモヤモヤしていたが、言語学者による見解に触れることができたので、その人の著書を紹介しよう。
 川原繁人著『なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか?』。この本は小学校で行った言語学授業を文字に起こしたものなので、小学生でも読めるやさしい内容の言語学入門書であるが、終章では社会学者の橋爪大三郎氏と対談して大人向けの意見を交わしているので、そちらから少し抜粋してみる。※印は宇宙人の合いの手。

――言語学が今向き合っている大事な問題は、AI技術を使って言語の本質をどこまで捉えることができるかで、いろんな意見が出ています。…大事なのは、自動応答チャット生成技術は既に書かれているテキストデータを元に作られているという点です。…チャット生成技術は、質問に対して過去のデータからあり得そうな答えを探し出しているだけで、質問の内容を理解し考えた上で、質問に対する答えを出しているわけではありません。質問を理解しているように見せているだけなのです。…人間が言葉を理解するプロセスはまだ数学的に解明されていないので、機械学習によって全く同じことをさせるのは、現段階では不可能だろう、と思っています。…それにChatGPTはある意味、壮大なスケールで行なわれている過去のテキストからの盗作ですから、そこから本当の意味での新たな知が生まれてくるとは考えにくい。――
(※まさに盗作!だから胡散臭く聞こえるのだな。「本当の意味での新たな知」とは何か、AIが気の利いた回答を持って来れるとは到底思えない。なぜなら人間がそれについていくらも考察して来なかったから、盗作すべき元ネタがないはずである。)

――ここから先は私の仮説です。表音文字は言語が変化すると、表記もそれにつれて変わっていく。文字が言語の変化をとどめる力が弱い。(一方、表意文字である)漢字は表音文字ではないので、文字が一度できたら簡単には変わらない。今使っている漢字も二千年前にはもうできていて、あまり変わっていない。音は変わるかもしれないが概念は変わらない。…だから(表音文字である)印欧語族の人々と、中国語(=漢字)を使う人々の歴史は、違っていて当然だと思うんです。…では日本については、日本語は漢字を輸入して日本語に採り入れ、仮名もあるという二重構造です。蘭学もあって西欧語の概念や発想を漢字の熟語に置き換えた。それでもはみ出す部分はカタカナにする。このやり方で自分たちの思考や体験が開かれたり制約されたりしているはずです。その開かれ方や制約のされ方に、気が付かないとまずいと思う――
(※懲役太郎周辺の話題に寄せると、日本のヤクザは下っ端でも、海外のマフィア・ギャングに比べて断然優秀だという。なぜなら(日本語という複雑な構造の母語で)義務教育を受けていて読み書き計算ができるから。海外のギャングの下っ端などは読み書きもあやふやなレベルの人間に銃を持たせているだけだから、戦闘になっても知恵が働かないし、気転も利かない。ちなみに「断指」という習慣も、外国のギャングたちを震え上がらせているという。日本人にとっては指どころか命をもぎ取ったり、日本にはない去勢手術を社会的習慣として持っている外国の方が余程恐ろしいのだが。価値観いろいろ。)

――(高校生の皆さんに向けて)試験のために勉強するのはやめましょう。点数であくせくするのは、勉強にも失礼だし、自分の頭にも失礼だ。自分の頭は貴いのだから、本当に大事なこと、一生覚えていようと思うことを頭に入れるべきで、一夜漬けの勉強なんかやるだけ無駄です。…テストで百点取ること自体に価値はない。百点を目指しているとそれが取れなかった時に落ち込むだけで、それは人生の無駄。答えがある問題だけを勉強の目標にしてしまうのは危険だと思います。――
(※「自分の頭は貴い」。いい言葉だなあ。一夜漬けの勉強どころか、くだらぬテレビ番組や芸人の空疎なトークなどを頭に詰め込むことで、「一生覚えていようと思うこと」の入る隙間がなくなることを恐れよう。人生全体が無駄になってしまわぬように。)

――SNSの爆発的な普及で、長期的な努力の大切さや長い目で自分の努力の成果を待つことが忘れられていないか不安です。…少なくとも「勉強に関しての時間的なコスパ」という考え方には、私は賛成できません。短期間で勉強したものは本当の意味では身に付かないことを痛感しているからです。――
(※「短期間で勉強したものは身に付かない」というくだりは、懲役太郎氏も似たようなことを言っていた。シャブつまり覚醒剤を打つと、一時的には集中力が上がり記憶力も良くなるけれど、薬が切れると元に戻るどころか原点よりもマイナスに下がり、結局キマッている間にしたことは何も頭に残っていない。それが判っているので懲役氏はシャブはやらないのだと言う。こういう経験者の言葉こそAIが提示できない「新たな知」ではないのか。こちらを禁止してAIのつぎはぎ盗作話を自由にするとは、本末転倒なのだ。宇宙人は頭がねじれるぞ。ねじねじ。)

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土星の裏側note
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