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女子より棒倒し

 昨年に引き続き今年も防大開校祭に行って来た。だって棒倒しがバカバカしくて笑えるんだもん。安全を理由に町内の公園から昔馴染みの遊具さえ撤去する味気ない現代において、体力自慢の成人男子が行うこの棒倒し祭りは大変貴重である。観覧無料だし、結構な見物客で賑わうのだが、何せ自衛隊関係者が仕切っているので万事粛々として秩序立っている。最寄り駅からバス乗り場までの誘導も、去年は気付かなかったが、バス停周辺の歩道がバス待ち客で塞がれないようわざわざ少し遠回りするように誘導して細長い行列を作らせているのだった。停滞することなく続々とバスに乗り込む来場客たち。往路は速やかに発車するため料金は後払い。復路は速やかに下車させるため前払いである。バスは正門前で降ろしてくれるが、入場には金属探知機と荷物チェックがあるので、道路を少し戻って列に並ばねばならい。秩序を以って粛々と列に並ぶ来客たち。いいなこういうの、速やかで。

 朝10時開始の訓練展示に真っ直ぐ向かう宇宙人。うまい具合に通り道に弁当や土産物屋が並んでいる。昼時は混雑するから今のうちに買っておけ、ということなのだろう。ちょっと高めだけど横須賀カレーパンと焼き菓子を購入する宇宙人。隣のブースには自衛隊グッズと共に防大グッズが並んでいる。手の平サイズのクマのぬいぐるみに防大の大隊カラーのシャツを着せた棒倒し応援グッズもある。大隊とは防大の縦割りクラスのことで、第一から第四まで赤・青・緑・橙のチームカラーがあり、棒倒しでは攻撃班がこのカラーの揃いのシャツを着る。防御班はどの大隊も白一色だ。土曜日は予選の二組、日曜は決勝の一組が組まれている。試合開始はいずれも15:00。
 訓練展示も防大ならではの出し物だが、時間が早いので見物客はさほどでもない。立ち見する宇宙人の後ろに佇む制服姿の防大生が内輪のコメントを垂れている。「あれ(ライフルを持っての匍匐前進)は結構キツイね」とか「(迷彩で偽装した狙撃手が「展示」のために敢えて白い壇上に伏せているのを)あれ迷彩の意味ないよ」とか。なるほど。
 豆知識を得て次の出し物へ向かう宇宙人。記念講堂に入ってみたら、舞台上でボディビルをやっていた。プログラムにある「フィジーク」とはこれのことだったのか。30人くらいの肉体自慢が登壇し、司会の号令に合わせてポーズを取っている。かなり本格的だ。客席の同級生たちが歌舞伎のように掛け声をして舞台の仲間を鼓舞しているから、会場は結構騒がしい。でも掛け声もポーズも長時間だと結構疲れるし、ネタ切れもする。掛け声が途切れるとボディビルは空しい。なので司会は「防大生、掛け声がんばって下さい」とこちらにも檄を飛ばさねばならない。そして直ちに復活する掛け声。無理をするのが日常の学生生活なのだな。

 非日常の光景を満喫して外へ出る宇宙人。構内では一日中どこかで何らかの出し物をやっている。東京湾を臨む野外の茶席が設置されているが、去年と同じく整理券に届かず。購買部に赴き記念グッズの「防大珈琲」を手に取る宇宙人。売れていたので買ってみたのだが、翌朝飲んでみて結構おいしかった。
 防大ならではの出し物には、儀仗隊もある。これも人気で屋外会場には人だかりができる。儀仗隊が何であるかはネットで動画を見てくれたまえ。要は儀式用ライフルのジャグリングなのだが、今回は女子生徒が混じっているのを目撃できた。木製ライフルはかなり重いはずだが、訓練すれば女子もできるのだな。

 儀仗隊と並行して応援団のパフォーマンスを向こうでやっている。これは去年見た。学ランに白手袋という古典的な姿の応援団が大太鼓を叩きながら、声の出し過ぎで潰れた喉を更に張って応援歌をひたすら歌う。見ている方が疲れる狂気のイベントである。しかも結構長い。さっきのボディビルの掛け声のようにムリしていてツライのだ。でもやっている人は結構楽しいのかな。理解できないが、見物客は大層多く、背伸びしないと見えないくらい人気である。
 その応援団が終わると、プログラムには提携女子大の学生によるフラダンスショーとある。男子が圧倒的に多い防大生のために、他校の女学生と交流できる数少ない機会を設けてやっているというわけだな。そう思って眺めていたが、何ということだ。肝心の防大生は全然いないではないか。応援団の時に比べて1/10以下に減った見物客は父兄ばかり。なんとなれば、メインイベントの棒倒し予選まで1時間を切ったからである。皆そっちへ向かったわけね。場所取りとか、校舎前で行われる戦前パフォーマンスとか、色々あるのは判るけど、女学生たちかわいそうじゃん。海風で寒いのにノースリーブのドレス姿なんだよ。観客が少なくて風よけにもならないよ。そう思いつつも、やはり棒倒し会場へ足を向ける宇宙人なのだった。

 陸上競技場に設置された棒倒し会場は既に満席だが、お一人様の宇宙人は小さな空間を見つけてちんまりと腰掛ける。規律を好む観客たちは狭くとも誰も不満を漏らさず、秩序を保っている。背筋を伸ばして選手入場を待つ宇宙人。校舎前で気炎を吐いていた選手たちが入場し、狂気の運動会が始まった。
 経過は去年と同じなのでここでは繰り返すまい。動画があるので見てくれなのだ。棒倒しの決勝は1試合だけなので、宇宙人は2試合見れる初日に来ることにしているが、二日目は観閲式というこれまた防大らしい催しがあって、見てみたい気はする。さすがに二日続けて見に来ようとは思わないけど。見物するだけでも結構疲れるイベントなのだ。

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