今を終わらせるリーダー/武器になる哲学【山口周】
武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50【山口周】
なぜ読んだか
クリティカル・ビジネス・パラダイムに感銘を受け、批判的思考を習うのにのに哲学が参考になりそう。同じ著者であれば哲学の活用についてタイトルのとおりヒントがあると考えました。
何を学んだか
本書は、哲学が人、組織、社会、思考のそれぞれについて洞察があると整理し、章立てをしています。今回は「組織」について。
個人が集まって集団を作ると、その集団は個人特性の単純和では計り知れないような、不思議な振る舞いをする。これをより深く理解するのに役立つ洞察を与えてくれるとのこと。
変革の手順
私は「変革のアイデアを組織に浸透させるにはどうすればよいか」ということに関心があるため、まずレヴィンの「解凍=混乱=再凍結」のモデルが直接参考になる。
解凍:今までの思考様式・行動様式を終わらせるための入念な準備。共感レベルのコミュニケーションが必要
混乱:変化への不満が噴出。十分な実務面、精神面のサポートが必要
再凍結:新しいものの見方や考え方による効果をアナウンスし、褒章を出すなど、実感を持たせる。
変革を主導するリーダーの重荷が半端ではない。
特に終わらせるのが難題だ。どのようなリーダーなら可能だろうか。
リーダー像
ヴェーバーが挙げた三つの支配の正当性のうち、「歴史的正当性」すなわち創業者の血筋は必ずいるわけではなく、「合法性」は現代企業のトレンドと合わない。そこで「カリスマ性」(「この人についていこう」という内発的な動機を与える指導者)を人工的に育てられるかがポイントになってくる。
今のシステムの何かを終わらせるということは、ひとりの果敢な行動で達成できるとは思えない。織田信長のようなマキャベリ『君主論』的リーダーは、国家存亡の危機ならともかく、平時にはあわない。
現代において終わらせることができるリーダーとは、そのシステムに安定している人々にも変革の内発的動機を与えられるもの、つまり味方を増やせるリーダーだろう。
では、味方を増やすにはどのようにすればよいか。
ミル『自由論』から、自分の意見に反証する自由を完全に認めることこそ、自分の意見が自分の行動の指針として正しいといえるための絶対条件である。
レヴィナスのいう「他者」(わかりあえない者、理解できない者)こそ、学びや気づきの契機であり、わかる=かわることがでいる。
ホフステードの調査から、日本は他の先進国と比較して、声を上げることに抵抗を覚える度合いが強い。積極的に自分に対する反対意見を、探して求めるという態度が必要になる。
これらの示唆から、変革が正しいと保証するためにも、反対意見を積極的に探し、批判を受け入れて学びとするリーダーなのだろうと思う。
おそらく、元の自分の意見は跡形もなくなる可能性が高いが、変革の目的は我を通すことではない。
反脆さは耐久力や頑健さを超越する。耐久力のあるものは、衝撃に耐え、現状をキープする。だが、反脆いものは衝撃を糧にする。
反対意見は耐えるものでなく、糧とするものだ。
bio
要約系動画とPIVOTで関心を広げながら、惹かれた本を精読するスタイルです。
座右の書
山口周『クリティカル・ビジネス・パラダイム』
伊藤邦武『プラグマティズム入門』
岡田隆『除脂肪食』