非連続泥啜的妄想譚 成田編
↑を先読んだ方が何かと都合ええかと、
如何にしてこのお店がキメラになったのか。考察していきましょう。
*ザッと書いてから気付いたんですが、これ関東やのに出てくる人全員関西弁なってました。ご了承ください。
在阪局が二夜連続で”時代を超えた家族の絆を描く”みたいな辛気臭い人情物ドラマ作った 的な。
以下、自己都合でミッシングリンクを埋めてみた です。
1960年代のとある夏。高校から帰ってきた一人息子は食堂の手伝いもせんと二階の窓開けてギター弾いてたんやろな。
ほんでこういうやつの名前の相場は慎太郎なんよ。
そこにまあ二つ上の学校のマドンナが自転車で店の前通るわけやな。
ちなみにマドンナは近所の酒屋の娘で幼馴染なんやな。
名前は純子な。まあ純米大吟醸から来とるわけやね。
通りすがりに「慎ちゃんギター上手になったねぇ」言うてくるな。
「慎ちゃん言うな!」
言うやろな。慎太郎絶対言うやろ。
たいがいマドンナは自分の家の手伝いちゃんとしよるやろ。
多分に漏れず純子も学校終わってから酒屋の手伝いで配達に行きよる。
もちろん慎太郎の家の食堂にも配達行きよんねん。
慎太郎のおとんは「純ちゃんご苦労さん。お茶でも飲んで行くか?」聞きよるわ。
慎太郎のおかんは「純ちゃんは真面目にちゃんと働いて偉いね。同じところで育ったのにうちの子は、ほんまに」言うてため息つきよんねんな。
純子は「おっちゃんおおきに。せやけどウチ次のお店も行かなあかんさかい。慎ちゃん、おばちゃん手伝わんとあかんよ。ほな」言うて店出よるわ。
二階から「慎ちゃん言うな!」
また言うたな。慎太郎また言うた。
「慎太郎、お前そろそろ仕事覚えていかなあかんぞ。アホみたいにギターばっかり弾いてんと。高校卒業したらお前もウチで働くねんから。」
「分かっとるわ。やりたい仕事見つかるまでの間だけやけどな。」
別に店継ぐのが嫌なわけではないけど、なんとなく釈然としてへんねんな。
それはさておき純子は真面目に仕事やってんのよ。
「お父ちゃん。日本酒だけやのうて、うちも洋酒扱っていかんと」
「洋酒てウイスキーとかかいな?そんなケッタイなもんよう扱わんわ。そもそもうちは元々酒蔵なんやぞ」
「あんた。純子の言うことも一理あるで」婆ちゃんが言うて。
戦時中はなんとか耐えたものの戦後の米不足の煽りで酒蔵は畳んでもうたんやな。
さらにハイカラ文化の流行で日本酒が売れんようになってたんやな。
お父ちゃんは元々評判のある杜氏やって洋酒を親の仇みたいにおもてんのやね。
お母ちゃんはそんな昔気質の堅物な旦那に嫌気がさして出ていってもうてんな。
せやけど純子は卸しの業者が来たときに置いてった洋酒のカタログを枕の下に隠しとんねん。
ほんで寝る前にお父ちゃんにバレんように「綺麗な瓶。これはどんな味がすんのやろか?」って呟いたりな。
ある日、お父ちゃんが珍しく上機嫌で帰ってきて、
「酒蔵またやれるかもしれん!」言うわけや。
「ほんまかいな!あんたよかったなぁ」
「お父ちゃんよかったなぁ」
「俺が満州におった時に同じ部隊におったやつがな、引き揚げてから商社で働いとんねんけど、これから絶対世界で日本酒が流行るから 言うて。そのためにどこへ出しても恥ずかしない美味い酒作りたいから俺の腕借りたい言うてきよってな。」
「今度の日曜契約書作りに会社行くさかいに純子、配達頼むわな」
「分かった。任しといて。」
ほんで待ちに待った日曜、お父ちゃんはいつも配達に使てるダイハツミゼットに乗って契約しに行ったわけや。
「おばちゃん。こんにちは。」
「あー純ちゃんご苦労さん。契約、今日やっけ?」
「おおきに。そうなんです。紙に名前書くだけやのにお父ちゃんわざわざスーツ引っ張り出してきて。ネクタイどこや 言うて朝から大騒ぎ」
「大の男が舞い上がって。でもそんだけめでたいことやないの。」
「ほんまに」
電話が鳴んねんな。
「はいもしもし、ええ、ええ、え!?分かりました。すぐ伝えます。」
「おばちゃん、どないしたん?」
次回、平穏な暮らしに訪れた青天の霹靂。過酷な運命に翻弄される家族の行く末とは。
流石に長いので一旦やめさしてもらいます(サスペンダーの紐直しながら)。
流石にこれは続くかもしれないです。
話のゴールに辿り着ける気がしないですが。