デフレの正体@藻谷浩介氏
日本の「財政破綻」問題に関して
①財政破綻はありえない。
②但し、経済成長は必要
③人口減(インフレギャップ)を埋めるために設備投資等が必要
それにより生産性を高め、賃金を上げる。
④「失われた30年」のきっかけは消費税増税だった。
⑤移民を受け入れてはだめ
という三橋貴明氏、藤井聡氏の論を紹介しました。
今日はその論に対して、結局は目的が「GDP増」になってしまっているという藻谷浩介氏の論を紹介したいと思います。
内容はこちらの本を参考にしてます。
早速ですがおさらいです。
私もよく理解できていないのですが、GDPには「三面等価の原則」があるそうです。
話が長くなるのでざっくり
1言で言うと、国内総生産と国内総所得と国内総消費は同じであるという理論です。
そこに待ったをかけてるのが藻谷浩介氏です。
藻谷浩介氏の主張
藻谷浩介氏は経済成長できるという三橋氏や藤井氏の意見に対してミクロ経済の視点から反論します。
・労働人口が減の社会でGDPは増えない ❶
・生産性向上はGDPを減らす(付加価値と付加価値学は違う)❷
(三橋氏や藤井氏は)GDPを上げることが目的になっている
としています。
順に見ていきます。
❶労働生産人口の減
藻谷浩介氏はもっぱらデフレの正体を労働人口減少とします。
1番消費の大きいのが労働人口であり、純粋にここが減っている。
モノの買い手が減っているのに、無理にモノを増やしてもしょうがないということです。
GDPの理論上、モノを作れば作るだけGDPは上昇します。
※GDPは国内総生産
その商品が売れようが売れまいが関係ないです。
その売れなかった商品は
ⅰ.在庫」という形で残って、劣化し価値が下がる。
ⅱ.値引きという形で売られる。
ということがGDPに反映されていないというのが藻谷氏の意見です。
要するに三橋氏や藤井氏の言うように設備投資をして生産性が上がったとしても、そのモノを買う人(消費者)が減っているというところが抜け落ちているという指摘です。
❷生産性の向上はGDPを下げる
更に三橋氏や藤井氏の言うように設備投資をして生産性が上がった場合のもう1つの弊害を述べています。
日本における生産性向上とは働く人を減らすことであって、結果的に付加価値額の増加にはつながらない。
結局、生産性が上がる(1人当たりの労働によるアウトプットの増加)と、結果として働く人が減ってしまう。結果的に仕事に関連する人が減り、給料(国内総所得)は減り、付加価値額(国内総生産)は減るということです。
生産性=付加価値額/労働者数となります。
分子である付加価値額は消費者人口減少やモノの供給過剰に伴い、低下しています。
なので生産性の大幅な上昇はない。
かつ、生産関連人口が減ることにより、むしろ付加価値額は減少するといいます。
※三面等価の原則では国内総生産=国内総所得(付加価値額)
元禄バブル
日本には過去3度バブルがあったそうです。
「元禄」バブル
「昭和」バブル
「平成」バブル
です。
元禄文化が花開くという言葉があります。
江戸時代の元禄期に大きく日本経済が成長しました。
その成長の元となったのが「インフラ整備」と「減税」だったようです。
江戸幕府はインフラ整備を進め、ひと段落したところで減税をしました。
それにより増えた可処分所得が増え、衣・食・住全て進歩した。
(麻⇨綿など)
国外領地を解決策とした「昭和」バブルはおいておいて、「昭和」バブルと「元禄バブル」は「投機」という共通点があるらしい。
それは「井原西鶴」の「西鶴織留」という書物に記載されていて商人が「投機」に失敗している様子を書いている。
「商人が先高をみこんで買いだめしたのが裏目に出た」
要するに民間の過剰投資がバブル崩壊を呼び込んだと言っている。
まさに現代と同じ構造になりそうです。
またそこに大名(武士階層)も影響を受けた。
金を借りた武士が利子すらも返せなくなったのだ。
その辺りは当時の新井白石の貨幣改鋳(流通量減少)が影響している。
端的にいうと
貨幣改鋳⇨貨幣が減った⇨お金が強くなりデフレ⇨米価格低下で農民困る⇨給料が米である武士も米価格が下がり困る⇨商人に借りた金を返せない⇨商人も詰む
という流れである。
詳しくは知りたい人は下記を参考にして欲しい。
結局のところ、藻谷浩介氏は在庫積み上げで発生した「元禄」バブルという過去の実例をあげているわけである。
在庫と価値の毀損、ミクロ経済おそるべし
藻谷浩介氏の処方箋
では藻谷浩介氏のデフレへの対策は?となる
Ⅰ.若者への所得移転を(所得1.4倍)
遺産相続を受ける年齢の平均が67歳らしいです。
しかし、67歳で遺産相続をしても将来を危惧して貯めてしまう。
使わないので経済は停滞する。
ならば早めに現役世代に所得を移転してもらおうということだ。
1.4倍の根拠は労働生産人口が3割減るので所得を1。4倍してやれば従来の規模で消費できるというもの。
Ⅱ. 女性の雇用増
労働人口が減って消費者が減るのであれば、労働人口を増やして消費者を増やすしかない。
そうなったときに1,200万人いる女性が働くしかない。
そしてその副次効果として人口増を挙げる。
共働きの夫婦の方が所得が多くなり、子供を多く作るという統計があるのだ。
Ⅲ.外貨の活用
日本は外貨を荒稼ぎしてきた。
しかし、それを有効活用できていない。
ここに関しては大西つねき氏と同じ見解である。
Ⅳ.ブランド化して単価を上げる
フランス、イタリア、スイスのように高単価化すべきという。
※今はデフレで価格低下圧力が強く上がらない
しかし、全産業では無理だろうとも。
まとめ
難しい本ですが、ミクロ経済の世界如何だったのでしょうか
量的緩和(日銀の国債買取)しても経済が上向かなかったり、インフレが起こらないのは、藻谷氏の言っていることが合っているような気もします。
生産性の議論、目に見えなくて難しいです。
安易に生産性が上がれば賃金が上がるという三橋・藤井氏の意見よりは納得感があります。
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