見出し画像

ストーリー構造のおはなし 〜登場人物の種類 人と神②〜

○前回のおはなし

前回は、物語の登場人物を葛藤の有無によって2つに分類しました。以下その分類。

人:(人間性の変化の伴う)葛藤がある
神:(人間性の変化の伴う)葛藤がない


今回から、「人」「神」のストーリーにおける役割についてお話しします。まずは、より主人公に向いているのは?というお話。


○人は主人公に向いている

読者や視聴者が、感情移入しやすいのは「人」です。

読み手にとって、人物の思考・感情または葛藤がわかる、より人間的な人物の方が、読み手は感情移入しやすいということですね。
この点は、理解しやすいところだと思います。


さて、より感情移入しやすいのは「人」とお話ししましたが、 実は「人」の方が「神」よりも主人公に向いています
これには、以下の2つの理由があります。

理由1: ストーリーへの没入感が増す
理由2: 葛藤がストーリーを生み出す


○理由1: ストーリーへの没入感が増す

「人」が主人公である方が、読み手はストーリーへの没入感が増します。

多くの場合、主人公を軸にストーリーは進行していくため、主人公はストーリーの観察者と言えます。
そして読み手は、ストーリーの観察者である主人公を通して物語を読みます。言い換えれば、主人公とは読み手の代理人です。

そのため、読み手が主人公に感情移入するほど、読み手はそのストーリーに没入しやすくなります
ということで、感情移入しやすい「人」の主人公の方が、読み手がストーリーに没入できるため適しています。

読み手は主人公を通してストーリーを読む

○理由2: 葛藤がストーリーを生み出す

ストーリーとは課題/アクション/結果の流れです。
ちょっとピンとこないかもしれません、例で考えてみましょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
例) テストで90点を取れば新しい靴がもらえるお話

    →靴が欲しい。テストで90点必要。 ーー(課題)
      →猛勉強する。テストに挑む。 ーー(アクション)
        →90点達成!靴を獲得! ーー(結果)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この例では、テストで90点が課題です。
そして、猛勉強というアクションを起こします。
最後に、靴を獲得するという結果を得ます。
このように、多くのストーリーは課題/アクション/結果で構成されています。

この課題/アクション/結果の流れは、ストーリーの核と呼べるものです。
読み手は、この一連の流れにストーリー性を見出します。

痩せたい人がダイエットするストーリー
強くなりたい人がヒーローになるストーリー

さて本題。
「人」の持つ葛藤が、ストーリーの起点となる課題を生むというお話です。

葛藤とは、2つの相反する選択肢を天秤に掛けて迷うことです。
そのため人は葛藤した時、選択に迫られます。
その選択の必要が、そのまま人物が乗り越えるべき課題になります。

登場人物の葛藤の末の選択は、その人物の方向性の明示です。
言い換えれば、登場人物の意志の表明です。
人物は選択によって「私はこの方向に進みたいと思っています」と読者に示します。

恋人と夢、どちらを選択するかと葛藤する課題

ここで注意したいのが、「葛藤の末」の選択でなければ課題とは呼べないということです。
葛藤という過程を経るからこそ、それは課題となります。
「神はサイコロを振らない」という言葉がありますが、葛藤がなければそれは一本道であるため、そこに過程はなく、原因と結果しかありません。
迷いが生じず結果が決まっているため、それは課題とはいえません。


葛藤を持つ「人」課題を生み出し、そこからストーリーが紡がれるため、「人」が主人公である方が、読み手はそのストーリーに感情移入しやすくなります。
多くの物語の主人公が往々にして、物語の初めに弱い存在として描かれるのは、弱い存在である方が問題を解決する能力が低く葛藤しやすいからですね。

また、「人」「神」と違って葛藤する不安定な存在であるため、ストーリーに揺らぎを生じさせます。
そのため、読み手はその先の展開がどう転ぶのかが気になって、ストーリーに没入していきます。

葛藤する「人」が主人公として適しているのは、原因と結果だけのあらすじではなく、揺らぎのあるストーリーを生み出すからです。


○まとめ

より主人公に向いているのは「人」です。
以下、その理由。

理由1: ストーリーへの没入感が増す
理由2: 葛藤がストーリーを生み出す

これが、今回お話しした内容です。
しかし、疑問が残りますね。

ではなぜストーリーには「神」がいるのか?
「神」の性質を持つ主人公もいるのはなぜなのか?
   

次回は「神」の役割についてお話しします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?