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架空書籍紹介(127冊目~133冊目)

127冊目「ぬいぐるみたちの追憶」

全ての職種がAIに置き換えられた未来において、作業を行うのは、愛らしいぬいぐるみたちであった。人類は自分たちの席をぬいぐるみに譲って生物界から退いていった。高性能AI搭載のぬいぐるみたちは、過去の遺物である人類について書き残すことを始めている。

※「ぬいぐるみ小説集」の諸編へ発展。

128冊目「紙を切る」
床屋で紙を切ってもらった。ばっさり短くカットしてもらった。持ち込んだ原稿の束が切り刻まれていく。さっぱりしていく。文章量は元の十分の一になった。切る前よりずっとよくなっていた。理髪師さんは紙を切らされて怒っていたようで、全てシャンプーで台無しにされた。

※しばらく諸事情により「紙」ものが続く。

129冊目「紙を被る」
髪の毛が薄くなってきたので紙を被るようになった男の話。始めは好きな小説を被っていたが、作者に失礼だと指摘され、自作の小説を被るようになった。何か思いついた際には被っていた紙を外して文章を書き加えた。余白を嫌って空白・改行なしの文章で埋められていた。

130冊目「軽い罪」
少年は少女を軽く殴り、中くらいで殴り、強く殴った。少女が教師に被害を訴えたために、少年は教師に叱責された。少年は罪を認めた。軽く殴ったことを認めた。その他の少女の訴えは証拠がないので聞き入れられなかった。叱責と謝罪で少年は罪を清め、無垢な少年へと戻った。

131冊目「責任逃れマニュアル」
教員向けの保護者対応本。学校側に一切責任が発生しないように仕向ける方法が網羅されている。
・料理の用意などで立て込む時間帯を狙って連絡をする。
・圧力をかけられる立場の教員で臨む。
・相手の意見を遮り続けて神経を逆なでさせ、相手の暴言を引き出す。

132冊目「ハレの日不要論」
日本で古くからいわれる「ハレ」と「ケ」の概念であるが、日常的に規則正しく楽しく充実した生活を過ごせている人間にとっては「ハレ」はむしろ継続的習慣を壊す対象でしかない、という論旨を展開する一冊。後に著者は催事対象連続爆破テロ犯として逮捕された。

133冊目「最後の絵本」
紙で印刷された最後の本。余白をたっぷり取り、書くべきことを失った作家、描くことがなくなった画家、弾ける楽器がなくなった演奏家などを描く。建物の消えた都市部、動物の消えた草原、星の消えた空、水のない海など。読者の消えた世界で、ただ一冊の本が残される。

※ぬいぐるみ小説集の一編
ぬいぐるみ小説集「公園の廃墟で最後の絵本を読むクマ」

の中で登場した絵本。この話を絵本向けに再構成し、「えほんに はいきょが ちらばる りゆう」としてkindle絵本化。


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