「サンボマスターたかし」ロシア流柔術とロックンロール譚
登場人物
たかし:サンボの達人、ギター&ボーカル
やすし:サンボの達人、ドラム
よういち:サンボの達人、ベース
サンボ:ロシアの格闘技。
ギターとベースが盗まれる事件:サンボマスター2003年の全国ツアー中に、ギターとベースが盗まれる。
X(旧Twitter)にて、「サンボマスター」が含まれる呟きに、サンボマスターのドラムの木内氏が「いいね」を押してくれることに気が付く。それならば「サンボマスターたかし」(サンボマスターのギター&ボーカルの山口隆がモデル)という小説を連載すれば、毎回いいねがもらえるのでは? と思いついた悪ノリ企画をまとめ、再構成。
たかしはいつか誰かを愛する時のため、愛する人を守るため、強くなることを誓った。
「サンボ道場が出来たんだって。ロシア流柔術だってよ」
親友のやすしに誘われて、たかしは近所に出来たサンボ道場に入門した。道場の隅には、その頃には誰にも弾かれることのなかったギブソンのレスポールが立てかけられていた。
(中略)
ロシアで開かれたサンボ世界大会決勝を前に、やすしはたかしを必死に取り押さえていた。
「折れてんだろ!」
たかしは準決勝の勝利と引き換えに、左腕を骨折していた。
「あいつが、よういちが待ってんだよ!」
決勝の相手は同じ日本人のよういちであった。三年前の完膚なきまでの敗戦が、たかしをここまで強くしたともいえる。腕が折れたくらいで、たかしは逃げ出したくはなかった。
(中略)
サンボ協会から永久追放処分を受けてしまった、たかし、やすし、よういちの三人は、金もないので徒歩と遠泳で故郷の日本まで戻った。昔通った懐かしのサンボ道場は、今ではロシア料理屋となっており、師範が道着姿でボルシチを作っていた。店の片隅にはあの頃と同じようにギブソンのレスポールが転がっていた。その隣にはベースとスネアドラムもあった。
「これからどうする?」三人同時に声に出した。何も決めてはいなかった。青春を費やしたサンボからは締め出されてしまった。締め技は得意だった。どうする、どうする、と言いながら、三人の目は楽器の方ばかり見ていた。師範の作ったボルシチは不味かった。
(中略)
全国ツアー中に、やすしの車に載せていた、たかしのギターとよういちのベースが盗まれてしまった。座席に残された手紙には「サンボ協会への復帰を許す」と書かれていた。
「俺たちは今、ロックンロールやってんだ。もう腕を折るわけにはいかねえ」
たかしは手紙を破り捨てた。それはその後に襲いくる、サンボ協会からの刺客たちへの合図ともなってしまった。
(中略)
フジロック最終日の大トリにて、圧巻のライブパフォーマンスを見せていた三人のステージに、一人の男が乱入する。裏サンボの世界王者、フ◯チンであった。フ◯チンはたかしのギター演奏を止めようと、腕をキメにかかる。しかしサンボとギターで鍛え上げられたたかしの腕は止められず、フ◯チンを腕に取り付かせたままで演奏を続けた。ちなみにフ◯チンは全裸であった。フ◯チンでもあった。
(中略)
ロックンロールとサンボの世界同時制覇を果たし、ついでに世界も平和にした三人は、ワールドツアーを終えると、徒歩と遠泳で故郷へと戻った。師範の作るボルシチはあの頃と変わらず美味しくはなかった。それでも腹いっぱい食べた三人は話し合った。
「これからどうする?」
「少し休んで、愛する人でも探しに行こうか」
「その前に、腕につけてるフ◯チン追い払えよ」
(「サンボマスターたかし」全500話完)
(怒られたら削除します)
入院費用にあてさせていただきます。