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定量と定性は表裏一体、フォーカス指標で組織文化をデザインする

普段プロダクト開発を進めていると、つい機能リリースにばかり目が向いてしまい、「本当にユーザーの役に立っているかどうか」を見失ってしまうことがあります。短期的な目標としてリリース数を指標にするのも一つの方法ではありますが、中長期的な視点で見ると、その考え方にはズレが生じることがあります。リリースを重ねることで、プロダクトが機能過多になってしまうこともあるからです。

そこで役立つのが「フォーカス指標」です。ユーザー体験(UX)を考慮し、「何を達成すればそのプロダクトがユーザーの役に立っていると言えるのか」を明確にし、それに基づいて数字を追うことが重要です。わかりやすく言えば「ユーザーが感じている価値とフォーカス指標が一致する」ともいえます。

ユーザーが感じている価値=フォーカス指標

組織文化とは、組織が大切にしている価値観を指します。この価値観が欠けていると、従業員が熱中して働くことが難しくなると考えています。その理由は、指標のズレがあると「何のために働いているのか?」が分からなくなり、モチベーションが低下するからです。

「何のために働いているのか?」という問いについて、組織は利益追求を前提にしつつも、最終的にはユーザーがそのプロダクトを通じて幸せになり、価値を感じてもらうことが目指すべき目的です。組織文化が成熟している状態とは、従業員がその目的を正しく理解し、業務に熱中している状態だと思います。だからこそ、ズレのないフォーカス指標が組織文化に深く影響を与えるのです。

フォーカス指標とは何か?

フォーカス指標とは、プロダクト・アナリティクス(製品分析)において特に重要とされるデータ指標のことです。これらの指標は、製品のパフォーマンスやユーザーの行動、ビジネス目標の達成度合いを測定するために選ばれます。通常、フォーカス指標は、売上やアクティブユーザー数などの直接的な成果に結びつくものですが、プロダクト開発の状況や組織戦略に応じて適切なものが選定されます。

指標の立て方

フォーカス指標を選ぶ際には、ビジネス目標や製品戦略と密接に結びつける必要があります。例えば、製品の成長を測りたい場合、「新規ユーザー獲得数」や「リテンション率(ユーザー継続率)」などが指標に選ばれることがあります。指標を立てる際のポイントは、以下の通りです。

具体的な目標設定

目標は測定可能で具体的であることが重要です。例えば、「ユーザーの月次アクティブ率を10%向上させる」といった具体的な数値目標を設定します。

達成可能性

指標は現実的で、達成可能なものでなければなりません。現実的な指標設定により、進捗を定期的に確認しながら戦略を調整することが可能になります。

ビジネス価値との連携

指標は単なる数値ではなく、組織のビジネス価値にどれだけ寄与するかが重要です。たとえば、「ユーザーエンゲージメントの向上」や「LTV(顧客生涯価値)の増加」など、収益や成長に直接影響する指標を選ぶことが理想的です。

良いフォーカス指標は「プロダクトのビジョンを体現している」「その時の性戦略の重要な指標として機能する」のが良いみたいです。

組織のフォーカス指標例

動画サイトを運営する組織

  • ユーザー維持率(Retention Rate): ユーザーがサブスクリプションを継続している割合を測定します。顧客の継続的な利用がどれほどあるかを把握するための重要な指標です。

  • 視聴時間: ユーザーがどれだけコンテンツを視聴したかを測定します。視聴時間が長いほど、コンテンツが魅力的であることを示唆します。

  • 新規ユーザー獲得数: 新規に加入したユーザー数を示し、成長性を測定します。

宿泊予約サイトを運営する組織

  • 予約完了率: ユーザーが物件を予約した後、実際に宿泊に至る割合を測定。成功した取引の割合を示します。

  • ゲストとホストの評価: プラットフォームでのユーザー(ゲストおよびホスト)の評価を反映し、サービスの品質や信頼性を測定します。

  • リピート率: 過去に利用したユーザーが再度サービスを利用する割合を示し、顧客ロイヤルティを測定します。

音楽配信サイトを運営する組織

  • DAU/MAU(デイリーアクティブユーザー/月間アクティブユーザー): 日々、月々アクティブに利用するユーザーの数を測定し、ユーザーのエンゲージメントを確認します。

  • プレイリストの再生回数: ユーザーが作成したプレイリストやシェアされたプレイリストの再生回数を測定し、コンテンツの魅力を評価します。

  • ユーザーのプレミアム契約率: 無料プランからプレミアムプランにアップグレードしたユーザーの割合を示し、収益化の成功を測定します。


指標を元にした戦略の立て方

フォーカス指標を選定した後、次に行うのはその指標を元にした戦略の立案です。戦略を立てる際には、指標をどう活用して製品改善を行い、目標達成に結びつけるかを考えます。

  1. データ収集と分析
    まず、選定したフォーカス指標に関するデータを収集します。そのデータを分析し、現在の状況を把握します。例えば、ユーザーがどの機能を多く利用し、どこで離脱しているかを分析することが必要です。

  2. 問題の特定
    分析を通じて、どの部分に改善が必要かを特定します。たとえば、ある機能の利用率が低ければ、その機能を改善するための戦略を練ります。

  3. 実行と評価
    改善案を実行に移し、その結果を評価します。結果が思わしくない場合は、新たな仮説を立てて再度戦略を修正します。これを繰り返すことで、目標達成に向けた最適なアクションを見つけ出すことができます。


フォーカス指標はOKR・個人目標の上位概念

フォーカス指標、OKR、個人目標は、以下のように連動して機能します。

フォーカス指標が上位概念

フォーカス指標は、プロダクト全体が「成功」するために注目すべき最重要な数値です。この数値を達成することが、組織の成功やユーザー価値に直結します。

OKRが具体的な行動指針

OKRは、フォーカス指標を達成するために中間的な目標や成果を分解したものと考えられます。たとえば、フォーカス指標が「月間アクティブ率(MAU)を50%に引き上げる」だとしたら、OKRはそのための具体的なアプローチを設定します。

  • Objective
    ユーザー体験を改善して、MAUを向上させる

  • Key Results

    • ページの読み込み速度を2秒未満に改善

    • 新規ユーザー登録の完了率を70%にする

個人目標が実行レベルに落とし込まれる

個人目標は、OKRを実現するためにメンバーが果たすべき役割やタスクを具体的に定義したものです。たとえば、「ページの読み込み速度を改善する」というKey Resultに対して、エンジニアの個人目標は「画像圧縮技術を導入する」などになるでしょう。

フォーカス指標が「どこに向かうべきか」を示す羅針盤だとすれば、OKRはその目標を達成するための設計図であり、個人目標は日々の活動として具体的に動くピースのようなものです。この3つを連携させることで、個々の活動がプロダクトの全体目標に確実につながるようになります。


フォーカス指標の落とし穴

フォーカス指標は非常に有用ですが、いくつかの落とし穴も存在します。主な問題点として以下のような点が挙げられます:

単一指標への依存

単一の指標に依存してしまうと、他の重要な要素が見落とされる可能性があります。たとえば、ユーザー数の増加だけを指標にしていると、品質やエンゲージメントの低下を見過ごすことがあります。

短期的な成果重視

短期的な成果を重視するあまり、長期的な視点での戦略が欠ける場合があります。プロダクトやサービスの改善は、時間がかかる場合も多いため、長期的な目標を見据えた指標設定が求められます。

ユーザー行動の多様性を無視

フォーカス指標を元に戦略を立てる際、ユーザー行動の多様性を無視してしまうと、全体の改善に結びつかないことがあります。ユーザーの異なるセグメントを意識して戦略を立てることが重要です。


まとめ

フォーカス指標は、プロダクト・アナリティクスにおいて製品やサービスの改善に直結する重要な役割を果たします。適切な指標を選んで、それに基づいて戦略を立てることが、製品の改善やビジネス成長に繋がりやすくなると考えています。

個人的には、フォーカス指標をうまくデザインすることで、その組織の文化の成熟にも貢献する部分があると感じています。「フォーカス指標=その会社が何をしているか?」をシンプルに表現しているため、その組織のコアな部分を反映していると言えるでしょう。それを明確にすることで、組織文化もより鮮明になると感じます。

冒頭にありましたが、良いフォーカス指標はその組織のビジョンを体現しています。なんのためにその組織で働いているのか?その組織に勤めている理由は?その質問に明確に答えることができる状態が組織文化が成熟しているのではないでしょうか。


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