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炎える五月の妖精(第五稿)

自我と自由と身体
アナキズムの三本の座標軸
の身体の軸に置かれる
笑いの暗黒面
が出土する
廃墟=胎
の中に埋まっている
古い月
(から何が産まれる?)
銃・火器
を手にしたサディストたち
よりもこわいもの
パブロフの犬
のように戦争の知らせ
に反応する人面犬の群れ

   *

洪水の夢を見た。それは夜の洪水だった。高い屋根の上で建物と建物の間にあるギャップを超える順番になる。向側が下に傾斜していてどう見ても怖い。よく見るYouTuberがその微妙な距離を平気で渡ってしまう。もう一人は落ちかかるが途中でうまく引っかかって下に降りた。私は最初からギャップを超えることを諦めて下に降りることにした。恐怖が安堵に変わった。人間が死ななければならない理由がわかった。この世界には死ななければ癒えない傷がある。

   *

Die Fee ist böse.
あの妖精は悪い。

一九世紀のある作家が「人間は誰でも自らのうちに一人の殺人鬼を担っている」と述べた。それは肺のあたりにいる半人半獣の見えない生き物で、かつてケンタウルスと呼ばれたこともある。人間は死後、先ず動物界に降り立つという。そこが死者たちにとっての大地なのである。神々の配慮か、死者たちはそこで自らの獣性を抑える術を学ぶことになる。

   *

死者たちは星を読む

恒星
子音
の外へ

惑星
母音
の外へ

獣帯
死者たちのアルファベットが炎える周縁

太陽
宇宙の炎える書物

死者たちの視線が全宇宙の外縁からわれわれに注ぎ込む。


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