スタートアップが取るべき3つの戦略
マイケル・E・ポーターも、競争は業界全体を疲弊させてしまうため、競争力が弱いスペースを攻めなさい。と言っているわけですが、そもそもスタートアップのような圧倒的弱者は、既存企業と正面衝突してはいけません。
そこで、「スタートアップはどのような戦略を取るべきか?」について、次の本が参考になったので考察したいと思います。
競争しない戦略は3つ
この本では、次の3つの戦略を取りなさいと述べているわけですが、1つずつ解説します。
1. ニッチ戦略
→ 既存企業にとって魅力的でない特定市場を攻めること
2. 不協和戦略
→ 既存企業が狙えない市場を攻めること
3. 協調戦略
→ 既存企業と手を組んで競争しないこと
1. ニッチ戦略
ニッチ戦略とは「既存企業にとって魅力的でない特定市場を攻めること」ですが、具体的には既存企業にとっては小さすぎる。効率が悪すぎる。といった領域のニーズを満たすことが一般的です。
例) Youtuber
今でさえ、市場規模300億円を超える勢いを持ち、企業も参入し始めているYoutuber市場(R)ですが、数年前までのYoutubeは一芸を持った素人が投稿してスターになれる、ニッチ市場でした。
例) 仮想通貨取引所
他にも、Bitcoinが流行り始めたときに生まれた、仮想通貨取引所など既存企業が参入しないニッチ市場でした。
(現在では、GMO等の大手が参入した結果、スタートアップのニッチが破壊されてしまいましたが。)
しかし、ニッチを守るためにはあえて控えめであることが大事だと述べられています。具体的には次のことを意識することです。
1. 市場規模をあまり大きくしない。
2. 利益率を高くしすぎない。
3. 市場を急速に立ち上げない。
2. 不協和戦略
不協和戦略とは「既存企業が狙えない市場を攻めること」です。
魅力的な市場を見つけた新規参入プレイヤーに対して、資源を多く持つ強いプレイヤーは「同質化(模倣する)戦略」を取ると言われていますが、強いプレイヤーでも同質化出来ないポジションを狙うことで、競争を避けることが出来ます。
強いプレイヤーが同質化出来ない条件とは、次のような条件だと述べられています。
1. 企業資産の負債化
2. 市場資産の負債化
3. 論理の自縛化
4. 既存事業の共喰い
【1. 企業資産の負債化】
既存企業が抱えるリソースが逆に、負債になってしまうケースです。
例) ライフネット生命
保険業界では、複雑な保険を説明し、売るための営業部隊を抱えることが一般的な戦略でしたが、それに対して、「シンプル安い保険をインターネットで売る」という戦略を取りました。
しかし、既存企業がその戦略を選択するためには、自社の営業部隊と複雑な保険システムが負債となってしまうため、参入でき、ません。
【2. 市場資産の負債化】
ブランドイメージや、顧客数自体が優位性となっていたものが、負債になってしまうケースです。
例) Facebook
Facebookが出る前には、MySpaceという時価総額最高15億ドルまで達成したSNSがありました。また、日本にはmixiがありました。
SNSといえば、ユーザーのネットワーク効果が大きいビジネスモデルですが、Facebookとの違いは匿名制だったことです。
その結果、匿名制のMySpace、mixiは実名制のSNSのビジネスモデルに転換できずに、Facebookに抜かれてしまいました。
【3.論理の自縛化】
既存企業が顧客に打ち出していたメッセージと矛盾するような戦略と取ることによって、既存企業が参入できないポジションを取ることです。
例) Loco Partners / Relux
従来の宿泊予約サイトでは、宿泊サイト側からお金をもらっていたため、宿泊サイト側の広告費用等が優遇される、「クライアントオリエンテッド」なビジネス設計でした。
しかし、Reluxのサイトでは、厳正な審査にクリアした、品質の高い宿泊先のみが出稿できる、「100%顧客オリエンテッド」なサイトを構築しています。
その結果、既存の宿泊サイトは「広告費を出してくれれば優遇する。」というメッセージが崩れてしまうので、参入することが出来ません。
【4. 既存事業の共喰い】
そのビジネスを選択してしまうと、かえって自社の売上や利益が下がってしまうため、参入できないポジショニングのことです。
例) カーブス
コナミスポーツは次の2つの資産を保有しているがゆえに、業界1位のポジションを築いています。
・高い設備投資
・あまり通わない会員(人が増えると器具が使えなくなるため)
しかし、それに対してカーブスは、次のようなポジションを選択することで、業界2位のポジションに上り詰めました。
・女性専用
・安い設備投資
・安い会費
・毎日通う顧客
もし、コナミがカーブスの戦略を同質化してしまうと、設備投資の回収ができない。会費が下がり売上が下がる。といった状況をはらんでいるため、参入することが出来ません。
3. 協調戦略
ニッチ戦略と不協和戦略とは、既存企業とパイを奪い合わない。つまり棲み分けの戦略ですが、協調戦略とはパイを一緒に獲得する共生戦略です。
基本は、既存機能のバリューチェーンの一部を補完・代替・追加するのが基本となります。
一番わかり易いかもしれないですね。
例) PKSHA Technology
アルゴリズムライセンス事業を提供しており、NTTドコモ、LINE、リクルート等の大手企業に対して、機械学習・DeepLearningのアルゴリズムを提供しています。(R)
つまり、戦うのではなく、既存企業が得意でない領域を保管する。といった戦略になります。
まとめ
ニッチ・不協和・協調の3つの戦略を解説してきましたが、スタートアップビジネスはリソースで勝てないので、必ず抑えておきたいですね。
しかし、いくら競争しないポジションだからといって、市場が小さすぎては意味がありません。
ですから、市場規模の推定や、本当に売れるのか?なども検証する必要があるので、よかったらこれらの記事も見てみてください。
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