イノベーションのジレンマ/共喰い現象

スタートアップが取るべき3つの戦略にて、スタートアップは不協和戦略を取るべきと述べましたが、具体的に、なぜ「大企業はイノベーションを起こせないのか?」について、次の著書を参考に解説したいと思います。

プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーション

まず、解説に入る前に、2つのイノベーションの種類を解説します。

【プロダクト・イノベーション】
既存製品よりも、品質の高い製品・サービスを生み出すこと。

【プロセス・イノベーション】
既存製品を、より少ない費用でつくること。

では、上記を踏まえて、具体的に大企業がイノベーションを起こせない理由を解説します。

大企業は、新製品を出しても売上が上がらない。

例えば、AppleはiPhoneを出したことによって、iPodの売上は落ちました。
なぜなら、iPhoneはiPodの代わりになるからです。
この関係性を経済学では「代替性が高い」と言います。

しかし、iPadを出しても、MacBookやiPhoneの売上に影響は殆どありません。なぜなら、iPadはiPhoneやMacBook等の代わりにならないからです。
この関係性を経済学では、「代替性が低い」と言います。
つまり、次のような力学が働くことで、大企業のプロダクト・イノベーションが阻害されてしまいます。

一度ヒット商品を生み出す。

代替性が高い新製品を出すと、既存製品の売上が下がる

新製品を出すことによる売上インパクトは小さい

プロダクト・イノベーションに投資するモチベーションが低い

大企業は、コストカットによる恩恵が小さい。

原価率50円かかる製品を、原価率30円で作れるようなプロセス・イノベーションが生まれたとします。

既存企業がその製品を1個売ったときの利益は+20円です。(もともと30円分の利益が確定したため。)
しかし、新規参入者がその製品を生産し、1個売ったときの利益は+50円です。

この差を経済学的に「置換効果」と呼びます。
つまり、新規参入者のほうが置換効果が高く、既存企業のほうが置換効果が低いため、既存企業のプロセス・イノベーションへの投資モチベーションが低いです。

考察

つまり、次のようなケースにおいて、既存企業のイノベーションへのモチベーションが低くなると言えます。

・既存製品に対して新製品の「代替性」が高い場合。
・新しい生産手法の「置換効果」が低い場合

しかし、だからといって新規参入者のほうが全ての面でイノベーションを生み出すのに有利である。とは述べられていません。
新規参入者の弱点などを次回以降で解説したいと思います。

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