華麗なる闘痩 2 黎明編
◆前回までのあらすじ
俺は具志堅、渡嘉敷に次ぐ沖縄の生んだ第3のハードパンチャー、ぽぽぽ氏にダイエット対決を挑んだのだった。
「勝負しようぜ……ダイエット対決をよ!」
「……いいズェ」
携帯のメール越しにぽぽぽ氏が闇の中、ゆるりと体を起こしたのがわかる。その瞳には昏い炎が燃えていた。闘志の炎が。
「勝負は先に体重を5%落とした方が勝ちだ」
そう私が送ると、ぽぽぽ氏はチッチッと舌を鳴らしながら人差し指を振った。
「いや、10%だ。そして落とした体重を半年キープした時点で勝利とする」
ざわ…ざわ…
意外! それは倍プッシュの要求! しかも瞬間的な減量ではなくリバウンドも許さないルール!
親善試合のつもりで竹刀を担いでやってきた私にぽぽぽ氏が渡してきたのは真剣だった。その重みに膝が震える。だが、ここでイモを引いては武術家の稼業は立ち行かない。
よーし、やるぞダイエット。やる! やってやる!
私は早速、ロッキーのテーマをかけながら寝そべり、ポテチにマヨネーズをディップして食べつつ、世にあるダイエット法を検索した。
……うーん。どれも一長一短、非科学的に感じる。
やはりここはオリジナルで行こうと、別の世界線から痩せてる自分を連れてきて置換する異世界ダイエットや、痩せてたころに戻って人生をやり直すタイムリープダイエットを試みた。
しかし、歴史の修正力、神の見えざる手は強力で、どうやっても私が太っているところに戻ってきてしまう。動かせない事象の結節点があるようだ。この記事を書くのもタイムリープ17回目である。らちがあかない。
しかし不思議なものだ。
ダイエット。それはゴルフやマラソンと同じで同伴者がいてもやることは同じ。自己ベストを尽くすという以上のことは出来ない。なのになぜ同伴者がいると俄然、はりきってしまうのだろう?
そんなことをつらつらと考えていると、ぽぽぽ氏からメールで画像が届く。
甘かった。これは権謀渦巻くデスゲームだった。同伴者はいてもいなくても同じではなかった。
つづく。