未来を知りたい願望と、結末を知りたくない物語の二律背反
未来を知りたい本能
人間誰しも、これからどうなるのかって知りたいですよね。『未来予想図』という曲もありますが、10年後、自分は何をしているのか気になるものです。学生であれば、将来どんな仕事をしているのか。結婚はしているのか。相手はどんな人なのか。子供はいるのか。幸せでいるのか・・・。
などなど、気にならない人はいないと思います。
では、なぜ未来を知りたいと思うのか。
それは、人間も生物である以上、未来を知ることで危険を回避したいという動物的本能があるからです。
特に女性は、占いが好きな方が多いと思いますが、女性は安定や安心を強く求めます。運勢や結婚相手などの未来を知ることで、安心したくて占いをしてもらうんだと思います。占いが正しいかは別にして、占いによる結果が、良くも悪くも、そう信じて生きていくことで、引き寄せたり現実化させることもあり得ると思います。そうなれば、結果的に占いが当たることになりますが、人に未来を決められるようで、道楽家としてはちょっと嫌ですね(^^;
名作にみる、未来を知りたい欲望
未来を知りたいということは「本能」だと言えますが、もう一つの要因は「欲望」です。
名作『パック・トゥ・ザ・フューチャー2』(BTTF)では、未来を知ることで、ギャンブルで大儲けするということが描かれました。
マーティとドクが未来に行った際、欲張ったマーティがスポーツ記録史の本を買いましたが、未来を書き換える危険がある為、ドクが捨てました。それを見ていたマーティ家の元使用人で、おじいちゃんになったビフが、デロリアン(タイムマシン)の存在を知り、本を手に入れて過去に持ち帰って若い自分に渡します。それにより若いビフは、ギャンブルを的中させ、その時間軸の現在では大金持ちになっていました。
未来を知りたいという欲望によって、現在がめちゃくちゃになってしまいました。欲望は時として、世界を崩壊させることもあるのかもしれません。
タイムパラドックスの認識変化
気になるのは、ここにタイムパラドックスがあることです。ビフが成功者になった世界線は、記録本を手に入れた冴えないビフがいる時間軸とは過去が変わってしまった為、異なる違う世界線ということです。であるならば、時間軸が変わってしまった世界線では、結果が変わる為、ギャンブルで勝てるはずがないんです。なのに、映画ではビフは成功していました。
タイムトラベルやタイムリープを描く作品としては、『シュタインズゲート』や『Re:ゼロから始める異世界生活』などがあります。最近の作品は、描き方がとても高度になっていて、アニメだからと言って、バカにできません。
最近の作品を参考にタイムトラベルを紐解くと、現在が変われば未来は変わるように描かれています。もちろん、過去が変われば現在も変わります。ただそれは、元いた時間軸とは違う世界に分岐してしまうという、「パラレルワールド(多世界解釈)」として、違う時間軸の世界を展開をしていくことになるので、同じことは起こらないし、元いた世界線には戻れなくなる、ということです。
こういった作品を見た上で、改めて『BTTF』を観ると、確かに面白く、過去を変えることで現在が変わったり、未来が変わったりします。ただ、1985年の作品ということもあり、『シュタインズゲート』などのタイムリープ作品に比べ、一つの世界線でしか描いていないので、やはり古さを感じてしまいます。ぜひ、『シュタインズゲート』と見比べてみてください。
話が大きく逸れましたが(笑)、未来を知りたいと思うのは、「欲望」によるものもあり、欲望によって大きく世界が変わってしまう、かもしれないということですね。
知りたくない未来もある
未来を知りたいと思うことは、動物的本能と、欲望によるものだということがわかりました。
しかし、知りたくない未来というものもあります。
それは「物語の結末」です。
我々は、物語を楽しみます。それは、内容はもちろん、どんな展開になるのか、どんな結末を迎えるのか、ということがあります。おっさんになっても、未だに少年ジャンプの続きが気になって、一週間が待ち遠しかったりします(笑)
もう原作は完結しましたが、圧倒的人気を誇った『鬼滅の刃』は、発売前にネタバレ動画を配信する輩がいました。中には、気になりすぎて発売を待てずに観た方もいるかもしれません。『鬼滅の刃』に限らず、ネタバレ動画は、「先がどうなるか知りたい」という欲求を狙った、悪質な動画だと個人的に感じました。
未来を知りたがるのも本能だと述べましたが、現在進行形で進めていく物語において、結末(未来)を知ってしまったら、面白さは半減してしまいますので、ネタバレは、犯罪のようなものです。ネタバレ、ダメ絶対!です。
完結した物語を見たり読んだりする分には、純粋に物語を楽しめますが、『リゼロ』にしろ、『進撃の巨人』にしろ、これから結末を迎える人気作の結末を知ってしまったら、どうですか?
楽しみにしているスポーツの試合で、結果だけを知ってしまったらどうですか?
未来は楽しみにするものとして、ネタバレは気をつけていきたいですね。
未来を楽しみにして、現在と向き合う道楽家
我々道楽家は、「人生は物語」だと捉えています。善も悪も、幸不幸も、敵も味方も、自分の人生において、面白い物語にする為の役割であり、登場人物です。
これからどうなるのか、どんな結末を迎えるのか、もちろん気にはなりますが、ネタバレして展開を知ってしまったら、面白くありません。仮に、うまくいくならまだしも、絶対に失敗するとしたら、やる気失くしますよね。
「結末を知る」ということに関して、『ONE PIECE』のルフィは言いました。
ルフィは、間違いなく自由を愛する道楽家です。
それに対して、このセリフを言わせたウソップは、臆病で弱い存在だと言えます。(もちろんそれも役割ですが…)
アンビバレント(二律背反)を楽しもう!
先を知りたいウソップの気持ちもわかりますが、「ワンピースが何か?」という"ネタバレ"は、ルフィにとっては、冒険の終わりを意味し、海賊をやめるほどのことなのです。
「答えは教えてもらうのではなく、自分で見つける」
それが、ルフィであり、道楽家です。
物語を楽しむには、今目の前に展開されているストーリーと向き合うことです。今と向き合うことです。
人は、未来を知りたいものです。それは、未来を知れば、不安を取り除くことができるし、未来を知れば、今何をすればいいかわかるからです。
でも、知らないからこそできることがあります。むしろ、知らない方が、これから知る楽しみもあるし、無駄に悲観することもありません。
私(MAX)自身、知らないからこそできたことがありました。それにより、人生は大きく変わりました。もし、どんな苦労があるかを知っていたら、一歩を踏み出せなかったかもしれません。
未来(結末)を知れば、物語は終わります。未来を知りたい気持ちはわかりますが、知らないからこそできることがある、今と向き合い続けるから、予想を超えた面白い物語になる、ということを述べておきます。
今と向き合っていけば、きっとどんな未来であっても受け入れられると思います。逆に言えば、どんな未来でも受け入れられるように、しっかりと今と向き合って生きていきたいですね!
道楽舎では、「なりたつ原子」アニメ化プロジェクトを実行中!
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次回は、「やくだつ原子」をお送りする予定ですので、お楽しみに!!
画像出典:『ONE PIECE』/尾田栄一郎 集英社