【やくだつ原子】Vol.9「銅(Cu)」
本日の原子【銅】
キーンコーン♪カーンコーン♪
ひこまる先生
「さて、今回の授業を始める前に、前回取り上げた【塩素】について振り返りたいと思います。ではまず、喜多くんからお願いします」
喜多
「生殺与奪の権を持った原子!」
MAX
「混ぜるな危険」
カミィ
「酸性のものとね〜!」
YMT
「消毒作用があって、コロナ対策には必要な原子」
ひこまる先生
「はい、皆さんありがとうございます!喜多くんはやっぱり『生殺与奪の権』がお好きですね(笑)
それでは、本日の授業を初めて行きます。今回取り上げる原子は、【銅】です」
喜多
「どうだ!」
ひこまる先生
「【銅】です。
【銅】は、私たちにとってもとても身近な原子ですが、どのようなイメージがありますか?」
喜多
「やっぱり銅メダルですね」
MAX
「一位にはなれない、ちょっと残念なイメージはありますね・・・」
カミィ
「でもほら、『金と同じ』と書いて【銅】だから(^^;」
MAX
「確かに(笑)。あ!聖闘士星矢は、ブロンズセイント(青銅聖闘士)だから、【銅】が主役でしたね!!」
喜多
「あ!奈良の大仏は銅で出来てるんですよね!?」
カミィ
「そういえば、アメリカの自由の女神も銅が使われてたはず」
YMT
「ベタですけど、十円玉は銅ですよね」
【銅】は縁の下の力持ち
ひこまる先生
「皆さんありがとうございます。しっかりと【銅】の特徴を捉えていますね。
【銅】の原子番号は29で、非常に柔らかい性質を持ち、加工しやすく、電気伝導性が高いのも特徴です。その歴史も古く、一万年以上前から使用されていて、とても馴染みの深い金属ですね」
MAX
「銅って、調理器具とかでもよく使われてますよね」
ひこまる先生
「そうですね。【銀】に次ぐ熱伝導率の高さを利用して、鍋などによく使われています。他にも、銅線として使われることが多く、コンセントやケーブルには、ほとんど銅線が使われているんですよ」
喜多
「へぇ〜!見えない所で大活躍しているんですね」
MAX
「縁の下の力持ちってやつだね」
ひこまる先生
「そうですね。私たちの生活は、【銅】なくしては成り立たないのかもしれませんね。しかも【銅】は、体を維持する為に必要な栄養素でもあるんですよ」
YMT
「それって、鉄分とは違うんですか?」
ひこまる先生
「YMTさん、鋭い質問ですね!鉄分は、血液内の赤血球を作る為に必要な栄養素ですが、銅には、その鉄分を運ぶ役割があるのですよ。鉄分が十分にあっても、銅が足りなければ、貧血になることもあるんです。他にも、酵素になったり骨の形成を助ける役割もあって、まさに『縁の下の力持ち』のような原子ですね」
喜多
「【銅】って、そんな役割もあるんですね!」
足尾銅山の公害
ひこまる先生
「そうなんです。ただ、やはり良い部分だけではなく、公害問題にもなったことがあります」
カミィ
「足尾鉱毒事件とかですか?」
ひこまる先生
「さすがカミィ君。社会科の教科書にも載っていて、明治後半の頃から起こった、日本で初めての公害事件です」
MAX
「今話題の『鬼滅の刃』は、大正時代が舞台ですが、炭治郎達が鬼と戦っている裏では、公害に苦しんでいた人たちがいたということですね」
喜多
「あれ、銅は体に良いんじゃないですか?」
ひこまる先生
「そうですね。この公害は【銅】そのものによるものではなく、銅精錬の際に発生する亜硫酸ガスにより、樹木が枯らせたり、渡良瀬川に流れ込んで水質汚染を引き起こしました。犠牲になった方も多く、今では足尾銅山は閉山しています」
喜多
「やっぱり『生殺与奪の権』を持った原子じゃないですかぁ!」
(出典:『鬼滅の刃』/吾峠呼世晴 集英社)
ひこまる先生
「そうですね。どの原子も、安全なだけのものも、危険なだけのものもない、ということですね」
MAX
「何事もバランスが大事ってことですね」
喜多
「閉山してるなら、日本ではもう【銅】は取れないんですか?」
ひこまる先生
「そうですね。日本で採掘されていた銅山は、すべて閉山してしまいました。ただ、精錬は行われており、別子鉱山という日本一の銅産出を誇った愛媛にある東予工場や、岡山の直島精錬所、秋田の小坂精錬所などがあります」
カミィ
「【銅】の産出はできなくても、精錬という技術は残ってるんですね」
歴史的建物に利用されている【銅】
ひこまる先生
「そうですね。日本は資源の少ない国ですが、技術も資源の一つと言えるかもしれないですね。
さて、銅が使われているものとして、奈良の大仏や自由の女神が挙げられていましたが、銅といえば何色でしょうか?」
喜多
「茶色系ですよね?」
ひこまる先生
「そうですね。新しい十円玉は、金のように輝いているものもありますよね」
MAX
「金色に光るから、『金と同じ』と書いて【銅】ってことなんですか?」
ひこまる先生
「漢字の成り立ちには諸説ありますが、そういう訳ではないようですよ。
【銅】は、赤茶色のような色味ですが、自由の女神は何色でしょうか?」
喜多
「青っぽいですよね?」
ひこまる先生
「そうですね。奈良の大仏や鎌倉の大仏も銅作られていますが、どれも青みがかっていますよね」
MAX
「これが青銅なんですか?」
ひこまる先生
「半分合っていて半分違います。青銅は、【銅】と【錫(すず)】を混ぜた合金です。【銅】だけだと柔らいので、合金することで、強度を上げているのですね」
喜多
「【金】でも同じようなことを言っていたような・・・」
ひこまる先生
「そうです。柔らかい金属あるあるですね(笑)
自由の女神や鎌倉の大仏は、完全に緑青ですが、元々は、赤茶色をしていたんですよ。奈良の大仏も、出来た当初は黄金に輝いていたんだとか。長い年月をかけて酸化することで、緑青に変色してしまったんです。配分によって色も変わりますが、奈良の大仏は、銅が93%も使われているので、黄金に輝いていたのでしょう」
MAX
「そんなに銅を使っていたら、とんでもない額になりそう・・・」
ひこまる先生
「そうなんですよ。建設費は、今に換算すると4657億円程だそうですが、疫病に苦しんでいた当時としては、切実な願いが込められていたのでしょうね」
カミィ
「それが、千年以上も残ってるなんて、当時は思ってもいなかったでしょうね。道楽だなぁ」
ひこまる先生
「そうですね。今でも、多くの人を見守ってくれているのかもしれませんね。
最後に、もう一つおまけの情報を。以前、【窒素】を取り上げた時に、花火にも使われていると言いましたが、実は、【銅】も花火に利用されているんですよ」
YMT
「銅を使うと、何色になるんですか?」
ひこまる先生
「青緑色ですよ。青銅といい、【銅】は青系に縁があるみたいですね」
ひこまる先生
「さて、【銅】について学んできましたが、いかがだったでしょうか?」
喜多
「『生殺与奪の権』を握っている!」
MAX
「やっぱりか(笑)
縁の下の力持ちのように、見えない所でも役立っているんですね」
カミィ
「身近な原子だからこそ、気をつけないと危険もあるということですね」
YMT
「体に必要だということを初めて知りました」
ひこまる先生
「はい、皆さんありがとうございます。
【銅】は身近な金属なので、詳しくなって、生活に役立てていきたいですね。
それでは、授業を終わります」
【銅】のまとめ
・【銅】は柔らかくて加工しやすい
・高い熱伝導率を持ち、調理機器に使用されている
・電気伝導率が高く安価の為、電気製品に使用されている
・体の中で鉄分を運ぶ大切な栄養素
・銅を精錬する際に、亜硫酸ガスが発生し、公害を引き起こしたことがある
・酸化すると、緑青色に変色する
・青緑になる炎色反応を持つ為、花火に利用されている
道楽舎では、「なりたつ原子」アニメ化プロジェクトを実行中!!物語にして小説化、漫画化、そしてアニメ化を目指しています!
「やくだつ原子」シリーズもプロジェクトの一環として、書籍化を予定していています。過去コラムも今のうちに要チェックです!
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