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遂げて見せよう、私の本懐① 女性労働編

⓪プロローグ

女性労働や結婚の研究を始めて、早n年。その長い旅路の中で、あらゆることを考えてきました。
東京大学経済学部では結婚や家庭の研究を幅広く行い、大学院では女性労働、ワークライフバランスについて研究してきました。特選論文、卓越大学院と業績はあるものの、リトルリーグみたいなもんなのでまだまだこれからだと思っています。
幸いなことに、いろいろな方に自分の研究について聞いていただく機会も増えてきました。

今回は女性労働といった大きな社会問題について、論点を整理しながら自分の研究や本懐を紹介していきます。

なぜその研究を人生を賭してやっているのかは、会ったときに聞いてください。

次回は結婚についてで、次次回は子供の貧困・格差についてです。
もっと深掘りして、「仕事と家庭の関係」、「ワークライフバランス」、「離婚」、「未婚化」とかやるかもしれません。

①女性労働について

論点1 就業率の変化、M字カーブ

就業率は、1980年代から着実に拡大している。

年齢階級別労働力率で必ず話題にあがる、M字カーブはどうだろうか。「M字の凹みがましになっている→結婚及び出産を機とする退職が減っている」という議論は大間違いです。
未婚化や晩婚化、少子化が進んだから辞める女性が減っただけ。

論点2 歴史的展開をさっくりと。

法制面での展開は、雇用機会均等法、育児・介護休業法、男女共同参画社会基本法、女性活躍推進法があげられるか。
これらの法律や、労働力の活用という社会的要請を追い風に女性活躍推進が進んできたのは事実。

均等法成立前は、大学を出ていても賃金は半分、仕事はお茶汲み。結婚で退職、35歳定年という凄惨な有様であった。

歴史的展開を考える上で、2つのキーファクターを提示しておきたい。コース別雇用管理制度と育児休暇。

コース別雇用管理制度は、1985年の男女雇用機会均等法成立を契機に導入が進んだ。男女別の雇用管理制度を改め、導入されたものだったが、結局総合職のほとんどを男性が占め、一般職のほとんどを女性が占めた。一般職は育成対象ではなく、未婚女性が結婚までの短期間働くことを前提としたシステムであった。就職時点で、自分の人生を大きく決める選択を強いることになってしまったのだ。

「ちゃんとやってまっせ」という建前で導入されたものにしかみえなかったが、その後本格的に女性が働き続ける時に、企業は対応を迫られた。

どのように女性の(結婚後もしくは未婚の場合の)継続的な就業をサポートするかというと、「男性並み」を求めたのだ。

それをサポートしたのが、女性だけが長期間取得できる育児休暇である。1992年に成立した育児休業法は、少子化対策という一面を持っていた。
結婚・出産しても就業を続けたいという女性の願い、少子化の進展の原因は仕事と育児の両立の困難性であるという認識を持った国の狙いが相まって、女性労働者の育児支援に舵を切った。

ただ、男性が家庭を支援するという形ではなかった。女性が子育てをするという最前提条件が満たされたうえで、その上で働きたければはいどうぞという形だった。

育児をした上で働きたい女性をサポートして、それでいて育児休業によって数年のブランクがあるし育児と両立しなければならないから昇進昇格の機会が得づらくなったという「マミートラック」という問題も明らかになった。

論点3 統計的差別

こういった差別が継続されてきた背景はもう一つある。「ステレオタイプ」や「アンコンシャスバイアス」を経済的に説明すると、統計的差別という言葉になる。
事実として、女性は現状、産休・育休を取得するケースが多く結婚や出産による退職可能性がある。これによって、平均の就業年数や賃金が下がっている。

現状のシステムによって就業年数が短くなっているのにもかかわらず、女性が退職する可能性が高いため、最初から雇い止めるということが普通に行われている。

並びに、就業年数が短くなることで女性の育成コストが相対的に高くなる。金かかる割に役に立つ期間短いやん。だから最初から雇わなければええやん。となる。それで賃金もあがらない。賃金格差も起こる。結果、家庭方向、家事を担うことに男性と比べ比較優位を持ってしまう。
(比較優位:他の人より得意なことに集中すれば社会全体の生産性があがること。もしくはその状況。本質的に家事は男女どちらがやっても変わらないけど、統計的差別が引き起こす賃金格差によって男性は仕事に比較優位、女性は家庭に比較優位を持つ)

そして、平均的に女性が離職率が高いから、リターンも少ないと見込んで賃金を低くすると、生産性の高い女性ほど辞めていくという逆選択の問題もしっかりと引き起こす。この逆選択の問題は、そもそも就業継続をサポートするワークライフバランス施策が大切。

女性の就業継続が成し遂げられない⇨女性の雇用コストが高くなる⇨ほな女性は必要ない⇨女性の社会進出が進まない⇨女性の就業継続が成し遂げられないというループになっていて、そういった社会経済構造が「家事は女性がやるもの(やる方が合理的)」というステレオタイプ、アンコンシャスバイアスを形成している。

論点4 課題は何か?

女性管理職割合は依然と低い。30%を超えている海外と比較すると明らか。就業率拡大に寄与したのは、非正規雇用の増加によるものだったことがわかる。雇用形態が就業内容やキャリア選択に大きな影響を与える日本においては、正規雇用が増加せず、非正規雇用ばかりが増加していくことは、果たして女性活躍に寄与するのか?

また、依然として女性は出産を機に退職する。育児休業制度の利用は増えているものの、出産前後で就労継続している女性の割合はこの20年間変化がない。


論点5 働く女性の夫である男性側

活躍推進を図っていくには、男性側の理解も欠かすことはできない。

家庭内で労働時間と家事時間を2人で分配しながらやっていくととらえたら、男性に家事・育児の参加を促すためにも、男性のワークライフバランスの確立も重要になる。

しかし、育児休業取得率及び日数は未だ低く、長時間労働が家庭参加への大きな負担になっている。

実際に家事時間をみてみよう。
厚生労働省「第6回全国家庭動向調査」を使います。
妻の年齢が60歳未満の世帯を対象としたこの調査では、平日の妻の1日の平均家事時間は263分(4時間23分)であるとしています。なんと、夫は37分です。

第4回調査は2008年、第5回調査は2013年に行われたものです。まあ、専業主婦など家計補助的な労働に従事している方も入っての数字なのでこの数字だけで結論付けるのはまだ早いので、さらに見ていきましょう。
妻の従業分類ごとに見ていくと、以下のようになります。

ここにおける「常勤」とはフルタイム労働に従事している人で、正規雇用者が該当することが多いです。

「その他」は大部分が専業主婦です。常勤の人でも、25%以上が平日の毎日4時間以上の家事をしていると考えると恐ろしくなりますね。えっていうかさ、8時間働いて4時間家事しているの?いつ寝てるん?

そして、妻と夫が遂行する家事の総量を100としたときに、それぞれが分担する割合の平均は妻が83.2、夫が16.8です。妻の分担する割合が圧倒的に高いということが理解できる結果であるようにみえます。

年齢ごとに分解しても、20代カップルの妻の43%が9割以上の家事を分担しているという結果がでています。ちなみに、30代だと半数以上妻が9割以上の家事を分担しています。切り口を変えて、就業地位別に見た妻の家事分担の割合を見てみましょう。

ま、男性も家事やろうぜ。

②どうすればいい?

今からこの問題について取り組むから、ちょっと待っててといいたいところだけど、ざっくりこうしたらいいのでは?というのをいくつか人生の公約としてあげておきます。

①結婚・出産をしても就業継続できる社会に
②家庭方面への進出に対する職場の理解、配慮を
③同一労働価値同一賃金(Gender Pay Gapを是正する)

①結婚・出産をしても就業継続できる社会に

なぜ辞めるって、辞めたくてやめているわけではない。
そもそも時間がなかったり、産む性が女性なら辞める性も女性なのはおかしい。これはあまりにも不条理。教育された女性が社会で活躍できないburdenがあるのはさすがにやばくない?

働き続けた場合、直面するのは仕事と子育ての両立の困難性。家事時間が共働き家庭の男女同士で比べたとしても3倍以上の差があるとんでもない国の日本では、主に子育てに時間をさくのは女性です。その両立の苦しみは、おおむね女性だけが直面することになります。それは「平成24年度版 子ども・子育て白書」の妊娠・出産前後に退職した理由にも現れています。

「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた」が全体の2番目の多さなのです。ひどい話だ。就業継続を望んでも、できなかった女性が26%もいるなんて、とんでもない話だと思いませんか。

ちなみに両立が難しかった具体的理由は、勤務時間があいそうもなかった、職場に両立を支援する雰囲気がなかった、自分の体力がもたなそうだったがトップ3です。

短時間正社員の導入が進展すること、労働時間の調整の容易化(年間労働時間さえ変わらなければOKなのだから、いつでもどこでも働けるような仕組み作りは大きく効果がでるかもしれない。)等が大切。多様な選択肢を提示できるように企業や社会を変えていきたい。

なんとか就業継続を図っていけるような社会を作ろう。

②家庭方面への進出に対する職場の理解、配慮を

日本自体は、女性労働だったりワークライフバランスだったりという問題を強く認識している。

が、企業としては教育コストがよりかかるしやめるかもしれない女性を雇用するインセンティブがないから、いまいち革新的な変化には至っていない。

辞めさせないためには、職場の不理解をなくし、解雇や雇い止めといった不利益な扱いを止める必要がある。マタハラとか、ミクロなレベルでの不利益をやめさせないとはじまらない。
短時間勤務への不理解は、もしかしたら話に聞いたことあるかもしれない。あとは、男性育児休業取得への向かい風の解消とか。

企業の社会的責任、CSRの一つとして取り組むのもいいけど、そもそも就業継続してくれたら企業としても教育コストとか無駄にならないし多様な考えが社内に取り込まれるしよくない?

従業員満足度とかコミットメントとかモチベーションもあがるしさ…まじで、男女共に多様な選択していいよ!ってなってくれないかな。

こういった啓蒙活動を続けていきたい。

③同一労働価値同一賃金(Gender Pay Gapを是正する)

年功賃金の慣行があるとすれば、途中で退職する女性の賃金は押し下げられる。それはそう。で、キャリア実現がより遠くなる。

しかも、男女共に同じ仕事をして同じ賃金をもらえない。
一般労働者の男性の平均賃金水準を100としたとき、女性は71.3。なんやねん!

そこで、賃金、雇用管理制度の設計を公正明確にし、その透明性を確保できるように取り組みます。
男女による取り扱いの違いをなくし、過去の性差別的な雇用管理から脱却できるように取り組みます。
職場に残る役割分担意識を草の根レベルで取り組み改善し、格差を解消できるようにします。

③おわりに

どうだったでしょうか。ちょっと長かったですかね。

でも最終的に言えることはひとつ。
こんな不条理許されていいんか?

皆様からのご意見ご感想お待ちしてます。

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