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ふりかえりで「象、死んだ魚、嘔吐」をやる際に気をつけておきたいこと


象、死んだ魚、嘔吐

物騒な名前のふりかえり手法ランキングぶっちぎりの一位、「象、死んだ魚、嘔吐」ですが、ここ最近は @piyonakajima さんによる精力的な発信もあり、徐々に市民権を獲得してきています。

そのため、「象、死んだ魚、嘔吐をやってみたいがどうやったらいいかわからない。何か不安。」という質問をいただく機会が増えてきました。

確かに、この手法はともするとチームの空気を悪化させることにもつながる劇薬のようなものです。なので、あなたのチームでもうまく嘔吐し、未来につながるふりかえりにするために、実施する際に気をつけておきたい点について解説していきます。

なぜ「象、死んだ魚、嘔吐」をやりたいのか考える

象、死んだ魚、嘔吐に限った話ではありませんが、何か新しいプラクティスを試す際には、なぜ自分がそれを試したいのか?を言語化しておきたいところです。

象、死んだ魚、嘔吐をやりたい!と思ったときに、なんでそう思ったんだろう?をまず考えてみましょう。

  1. チームに「言いたいことを言えない」空気があるからそこを突破したい

  2. 自分の不安な気持ちを吐露したい

  3. なんだか楽しそう!!

1の場合、もともとこのフレームワークが生まれた目的が「言いたいことを言えない空気の払拭」なので、フィットする可能性は高いです。

2の場合、もちろんフィットする可能性はありますが、もしかしたら「ドラッカー風エクササイズB面」など「できないこと」を吐露することにフォーカスしたワークのほうが更にフィットするかもしれません。以下のnoteにおいて言及しています。

3の場合、最近よく聞くからとりあえずやってみたい!という気持ちがモチベーションになっています。その勢いでやってみるのもよいでしょう。ただ、しっかりと「象」に向き合うとけっこう気持ちが沈んだりするので、その点は覚悟して実施するといいでしょう。

前提条件の確認

象について話すことができる環境か?

何かフレームワークを導入すれば、たちどころになんでも話せるようになるわけではありません。

  1. 言いたいことを言えない相手が同席している

  2. 言いたいことを言った経験に乏しく、どうやって心の内を開示すればよいかわからない

  3. 言っても変わらない、という無力感に苛まれている

1に関しては、上司(評価者)が同席している状況を想定しています。上司との関係性がよくない場合や、まだ信頼関係を結ぶほど長い期間一緒に働いていない場合、上司が同席した状態で言いたいことを言うのは難しいかもしれません。とても気さくな上司で「言いたいこと言っていいよ!」と言ってくれるかもしれませんが、自分がその気にならなければ難しいでしょう。
なので、場合によってはいったん上司には席を外してもらう、というのも有効な手段です。

2に関しては、心の中にあるちょっとしたストレスを言葉にすることに慣れていない状況なので、いきなり「象について話してくれ」と言われても話すことができない可能性があります。
いきなり象、死んだ魚、嘔吐をやる前に、デイリーハッスルズ(普段から経験するような日常の些細な出来事から感じる)を言葉にするワークなどを実施し、自分の中にあるネガティブに気づく、言葉にする練習をするとよいでしょう。

3の状態になっているのであれば、象、死んだ魚、嘔吐を実施しても良い未来につながる場にすることは難しいでしょう。

  • KPTなどで小さいカイゼンアイデアを出しそれを実行、カイゼンするという成功体験を積む

  • 1on1で個人と向き合い、対話とリフレーミングを通して前向きさを獲得していく

  • 空気が悪くなるのを覚悟で、象、死んだ魚、嘔吐を実行する

このようなアプローチが考えられます。空気が悪くなるのを覚悟で・・・は一定の痛みが伴いますが、つらみを全部出しきる、みんなで共通認識をもつ、という意味では有効です。

次につなげる道筋を用意できているか?

この手法は文字通り「吐き出す」ものなので、単独でネクストアクションを導きだすことはありません。単独でやってしまうと、ただ吐き出して終わり、となってしまうため、次につなげる道筋があるかは確認しておきましょう。

もし熟練のファシリテーターがいる場合は「象、死んだ魚、嘔吐を経てどういう状態になりたいか」をインプットしておき、ファシリテーターが示す流れにのってふりかえっていくとよいでしょう。
そうでない場合、スモールスターフィッシュで「もっとやりたいこと、減らしたいこと」を明確にする、など具体的なアクションにつなげるプラクティスを用意しておくとよいでしょう。

自分たちは最善を尽くしている、という前提をもつ

ネガティブと向きあうと、誰かを責めたり、自分を責めたりしたくなります。あかん!
というわけで、じぶんたちは最善を尽くしてきたんだよ、という前提を持ちましょう。ノーム・カースの最優先条項を読み上げるのが、簡単かつ効果的です。

悲惨な話を明るく話そう

いざ実施する段になったら、心の底から気になってることを吐き出していきましょう。そして、悲惨な話なんだけれども、明るく話していきましょう。

  1. あえて当事者意識をもたない

  2. 叫ぶ

みなさん、基本的に「当事者意識を持て!」と言われながら日々の生活を送ってらっしゃると思います。このワークをやるときは、当事者意識には眠っていてもらいましょう。

「なんか不具合めっちゃ起きてるんですけど大丈夫ですかね」「スプリントレビューにステークホルダーこなくなっちゃって3ヶ月くらい経ってますね」「来週リリース予定なのにバグが1,023件起票されたままなのヤバくないですか?」「最近退職者多くない?」

こういったトピックに当事者意識を持つと、まず「自分のせいだ・・・」みたいな気持ちが出てきてしまいます。それを脇においておいて、「いやーどうするんですかねーこれ」というテンションでやっていきましょう。

それでも、場が暗くなってしまったら・・・それはもう、叫ぶしかありません。挙げられたトピックを読み上げ、最後に「象ー!」とか「嘔吐ー!」とか叫びます。このわけのわからなさが、不安な気持ちを曖昧にしてくれます。

吐きっぱなしにしない

参加者たちが胸の内を外に出し、それぞれの嘔吐がきらめく。象、死んだ魚、嘔吐の醍醐味です。けれども、吐きっぱなしにしてしまうと、吐き出した言葉が呪詛となりチームの士気を低下させるものになってしまいます。

なので、吐いたら掃除する!(ふりかえりの話です)

さきほど少し触れたように、スモールスターフィッシュで具体的なカイゼンアクションを考えたり、吐き出したあとに「熱気球」でありたい姿を描いていくのもよいでしょう。
吐き出しっぱなしにしてしまった吐瀉物は汚物になってしまいますが、次へとつながるアクションを実施することでチームを育てる肥料にすることができます。あのとき嘔吐しておいてよかった・・・そう思えるように、しっかり準備しておきましょう。

象!死んだ魚!嘔吐!

というわけで、個人的には大好きだけど、取り扱いには要注意な象、死んだ魚、嘔吐について気をつけておきたいことを解説しました。みなさんの嘔吐のお役に立てば幸いです。

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