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スプリントゴールが自律的な選択と集中を生み出す
はじめに
これは、「[いちばんやさし,いきいき]+いくおの Advent Calendar 2021」二十四日目の記事だ。
金曜日は「踏ん張ってやりきる」。今回はスクラムにおいてスプリントゴールを設定することの有用性について書く。私が書かなくても様々な有識者がスプリントゴールの大切さについて説いているが、最近自分たちのチームでスプリントゴールを設定することの大切さを頭ではなく心で感じたので、そのことを書く。
スプリントバックログは「全部やる」?
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スプリントゴールを設定するようになる前、私達チームにとってスプリントバックログは基本的に「全部やる」ことを前提としたものだった。「ゴール」が明確に定められていないため、「スプリントバックログをすべて片付ける」ことが暗黙的にゴールとなっていた。
もちろん優先順位順に並べているので、高い優先順位のものがうまく進んでいなかったら下位のものを次に回す、などはしていた。が、今思うとスプリントゴールを設定しないスプリントには以下のような弊害がある。
「終わらせる」ことがゴールなので、確実に終わらせられる「置きにいった」プランニングをしてしまう
下位の優先順位のタスクを進めていたメンバーが、手が空いているのに上位の優先順位のタスクに参加しない
前者がなかなか曲者で、ベロシティをベースに自分たちにやれることを予測してプランニングすることになる。いや、それ自体は正しいと思うのだが、やれることがやるべきことであるかをあまり検証せず「ベロシティ的にできること」を積む意識になりやすいのだ。(自分たちはそうだった)
スプリントゴールでスプリント終了時になっていたい状態を描く
![](https://assets.st-note.com/img/1640169206735-gCKxw0r5Hd.jpg?width=1200)
スプリントゴール。そのスプリントで自分たちがこなせるだけのプロダクトバックログアイテムを積もう、ではなく、そのスプリントで自分たちが達成したいこと、なっていたい状態を描く。
私達が設定しているスプリントゴールはこんな感じだ。(研究開発部門なので、すこしクセがあるかもしれない。)
Biz側に触ってもらえる試作版が完成している
プロトタイプでの品質評価が完了しプロダクトコード開発が可能になる
試作案が実現可能なものか判断できている
スプリントゴールを設定するようになってから、上記の「置きにいったプランニングになる」などの弊害が出現することはあまりなくなった。また、下位の優先順位のタスクを担当しているメンバーが率先して高い優先順位のもの(多くの場合、直接的にスプリントゴールに寄与するもの)にコミットするようになった。
そして、ryuzeeさんがいうように「スプリントゴールが達成できればスプリントバックログが全部終わらなくても構わない」という意識が芽生えていった点も大きい。
スプリントゴールが達成できれば、スプリントバックログが全部終わらなくても構わないんやで
— Ryutaro YOSHIBA (@ryuzee) June 30, 2021
仮説としてスプリントバックログを立てたが、ある程度進んだら全部こなさなくてもゴールが達成できる、と判断できることがある。
逆に、いざ始めてみたら立てたスプリントバックログをこなしてもゴールにはたどり着けない、と気づくこともある。
ゴールを設定していないと、スプリントレビューの段になってからようやく「このスプリントバックログをこなしても目指すところにたどり着かない」と気づくことになる。いや、スプリントレビューで気付ければ上出来で、数スプリントこなしてからようやく気付くということもあるだろう。
「全部を終わらせない」勇気
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スプリントゴールを設定することで、そのスプリントで達成したいことにフォーカスすることができる。しかし、この選択と集中を阻むのは「全部を終わらせない」ことへの恐怖、抵抗感だ。
「約束したことをやりきらないのはプロフェッショナルとしていかがなものか」という気持ち。
でも、私たちがコミットメントするべきは「価値を生み出すこと」「課題を解決すること」だ。「計画したことを計画したとおりに作ること」ではない。
計画したことを計画どおりに遂行するということには安心感がある。その計画の是非は計画者に委ね、自身は「計画づくり作れば一定の評価を得られる」という感覚があるからだ。
スプリントゴールが自律と勇気をもたらす
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「全部を終わらせない」勇気を持つためには、なによりこのマインドセットからの脱却が必要であるように思える。頭で理解でき行動できるなら、それでもよい。しかし人間は心で納得しないとなかなか行動できないものだ。
その「心で納得」を生むためには、それがうまくいくという実感を得ることが必要になる。
スプリントゴールに集中することで「約束したことをこなす」のではなく「生み出したい価値を生み出す」体験を重ねていく。そうすることで「全部を終わらせない」勇気は育まれていくだろう。(そして、組織が「約束どおり仕事をこなす」ではなく「価値を生み出す」ことを評価するように変革していると、このマインドセットへの転換は後押しされる)
スクラムには取り組んでいるがスプリントゴールは設定していない、と言うチームはぜひ試してみてほしい。