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【イベント参加レポート】XP祭り2020基調講演:エンジニアの創造力を解き放て! XPと歩んだ17年・技術・現場・仲間

はじめに

神部さん
・アジャイル開発フィールド実践者
・巨大SIerの中でアジャイル17年
 ・中規模アジャイル
 ・ふつうのひとたち

17年何かを継続するというのは、それだけでもすごい。それがSIerの中でアジャイル実践となればなおさらだ。

アジャイル開発と日本型ITのギャップ

「日本のアジャイルはキャズムの瀬戸際」これはいろいろなところで見聞きする。
そして、なぜ「瀬戸際」かというと、このギャップがあるからということのようだ。

イノベーションではなくコスト削減を、能力ではなく頭数を、指示待ちを、規約と統制を重んじてきた日本の現場は、確かにアジャイル開発の価値観との間にギャップがある。

Agile+ Studio静岡見学者の声

「DX担当」のような方々がやってくるけれども、アジャイルを「できない」理由を探しているように見えてしまうとのこと。

ペアプロは、内製開発を行っている現場でも「生産性悪そう」といわれがちなプラクティスだろう。こういった「やってみて良さがわかる」プラクティスをまずやってもらう、というのがなかなか難しいんだよな…。

DXとは

企業の在り方や、そこで働く人たちを変化させること。
その手段としてデータやデジタル技術の活用がある。

そう、あくまで手段なんですよね。で、その手段としてアジャイル開発がある。

理解したつもりでも、そう簡単にはうまくいかない。これもよくわかる…。

この分類は興味深かった。個人的には、カンバンってプロダクトバックログ/スプリントバックログの状態を可視化するものという扱い。これらなしにカンバンはない、という使い方をしているので、それらはNGだとカンバンはOK,という状況がちょっと想像し辛い。

未来は不確かだから失敗する前提で行動しようぜ、がアジャイル。そこと向き合うためにチームが育っていく必要がある。

過去の話

受託開発を始めてから、開発の在り方など悩み始めたとのこと。

アジャイル開発に取組むきっかけ

2002年頃にXPの第1次ブーム。

通信大手SIが内包していた課題
・短期の人員育成
・リスク早期発見

これらをペアプロや常時結合で対応。
開発者のモチベーションUP,高い品質,スピード向上を実感。

体制の流動化に伴い未熟な開発者が急激に増えた
開発サイクルが短期化する中で、性能問題が一番のリスクだった

動くコードを書きながら進める、というのはこっそりやっていたとのこと。よりよいものづくりをするために努力しているのに隠れキリシタンみたいにひっそりとしなければいけない時代があったのだ。

カルチャーギャップ

米国と日本。自由と規律。子供のころから「周囲にあわせる」「いわれたことをやる。はみだすな」そういう教育を受けている日本で新しいことが生まれにくい、というのはむべなるかな。

規律の話でクリムゾンのDisciplineが出てきて、個人的にテンションがあがる。

モノと仕様が完全に一致する

「神部さんのもってくる仕様書は、バッチリものとあってるから助かるよ」

そう、だいたい仕様書って「仕様書(1)」「仕様書_最新版」「仕様書_20080912」とかなってしまうのよね。アジャイルの効果を既存の工程に当てはめて示す、というのは組織変革を行う上で重要な勘所だ。

IT系人材の差

海外と日本の圧倒的差。母数が違うしコンピュータサイエンスの知識のレベルが違う、とのこと。ここは厳しいが受け止めなければいけない現実だ。
教育を変えるというのは、我々現場のエンジニアにとっても無関係なことではない。

プロトタイピング事例

作ったものが酷評された
「何も使う側をわかっていない」と言われてしまう
ここは難しい、何度もやってしまう

これは胸が痛い…そして耳も痛い…

だからこそ、実際に自分で使う。それが無理ならシャドーイングする。というのが大切なのだ。

自分が作っているものは、自分で使えるものだ。日々使うものだ。その気になれば使うハードルは低い。ドッグフーディングはもっと積極的にやらないとな…と肝に銘じた。

SIアジャイルの課題

・顧客都合で変動が多い。
・常に育成が必要。
 ・現場が入れ替わる。チケットでトラッキングできるようにしておかないと、人が入れ替わるので本当にヤバい。
・「それが富士通の品質ですか?」といわれ無理を強いられる
・WFからの転換の難しさ
 ・ここは前よりよくなってきている

エンジニアの良心に訴えかけて無理をさせるのは本当によくない…一種のハラスメントではなかろうか。

意識改革

フリーアドレス制で清潔な作業場所を維持
個からチーム志向へ意識改革

頭脳改革が必要ってことですね!

文化

日本はアジャイルの導入が難しい文化。
講演中にもあったけど、パーティションで区切られた欧米のオフィスより日本のオフィスのほうが協調しやすそうな雰囲気なのに、これは本当不思議。変えていかなきゃ。Buliding the Wall!(違う

自律的に動く

ループから知識がうまれる。
むだを省く、品質を作りこむ、透明性を作る。
官僚文化からイノベーション文化へ。

XPとスクラム

どちらが良い悪い、ではなく、上手いチームは組み合わせているということ。

SIアジャイルのさらなるギャップ

神部さんの組織の売り上げは、全体の0.02%。影響は微々たるもの。
SIでの受託アジャイルは規模が小さすぎる。
SEの憧れは大規模なWFのプロマネ

組織の中での影響力もさることながら、大多数のメンバーが目指している方向が違う、というのはなかなかタフだ。
しかし、「大規模なプロマネ」って、なぜそれを目指すんだろう。よいモノづくりと規模の大きさになんの関係があるのだろう。

大手のお客様からアジャイル適用の相談が急増
なぜなら、世界と戦えなくなってきているから
DX, 内製化, 人材育成が商談キーワードとして躍っている

尻に火がついている、というのは改革には必要なことなのかもしれない。

アジャイル導入への課題

人を育てなければならない
なぜなら、アジャイル開発では丸投げできないから

WFと混合でやってみたり
レイヤーで分割してみたり
ツールを導入してみたり。

外野に丸投げアジャイル

コンサルに「アジャイルやれ」といわれ、丸投げされ、それぞれが違うことを主張する。これはこのあとWFに戻ったそうです。

受託でアジャイル開発を長く続ける秘訣

お客様にたくさんお金を使わせないこと

みもふたもないwww

みもふたもないが、とても大事なことだ。無い袖は振れぬ。

危機感

強いエンジニアは実践でしか育たないと考えてきた
今はそんなことをいっている時間がない

だからDojoを作った、とのこと。SIerの失敗パターンを体験できるとのことで、体験してみたいようなしてみたくないような…

アジャイルと日本型ITのギャップは乗り越えられるか?

このままでは乗り越えられない。
そこを埋めていくのがXPとカイゼン。

日本のアジャイルは、普及の瀬戸際。
でも美辞麗句では動かない。スクラムだけでは越えられない溝がある。
今こそ基本に立ち返り、あらためてXPの思想を伝えてゆこう

感想

XP-アジャイル黎明期の話は自分が知らない時代のものなので、純粋に勉強になった。

そして怒涛の「アジャイルアンチパターン」。主にSIerの文脈で語られていたが、これは自社開発の現場でも起こりうることだ。
(SIer未経験の自分にはわからない「SIならそうでしょ」話が多々あり、そこにdiscord上で同意が寄せられているのが印象的だった。)

「アジャイルじゃないと発注しない」など手段が目的化しているのは、いいことなのか悪いことなのか。いろいろと考えさせられる。

90分の長丁場があっという間に感じられる、おもしろく、かつ生々しい基調講演でした。ありがとうございました。

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