ニート、麻酔を学びたい。

世界で初めて全身麻酔による手術を成功させた人は華岡青洲という日本人である。「通仙散」という華岡青洲考案の薬で麻酔をしたと言われている。通仙散は、チョウセンアサガオやトリカブト(どちらも猛毒の草)を原料に絶妙な配合のもと作られた薬であり、この配合を見つけるために華岡青洲は自分の母親と妻を被験者として治験を繰り返した。
その結果、母親は中毒で死に、妻は盲目になってしまったという。
母親の命と妻の視覚とを引き換えに、華岡青洲は世界で初めて全身麻酔薬を使った手術を成功させ、多くの人の苦しみを救った。

この話を本で読んで、私は「複雑な気持ち」になった。
No pain, no gain. (痛みなくして得るものなし) というように、研究(というか名誉全般)に犠牲はつきものであるとは思っているが、かけるコストが親と嫁だというのは、正直引いてしまう。
一方で、現代日本においては治験の症例集積スピードの遅さが1つの要因となって国際的な薬の開発国としての地位が危うい状況にあるという話も聞いたことがあるし、華岡青洲の科学(その時代にその言葉はなかったが)の発展に資する姿勢には見習うものもある気はする。(いや、この場合、青洲の親と嫁の姿勢に倣うと考えるべきか。)
現状、私はニートな上に治験にも参加していないので、明確に国民の足を引っ張っているが、春から大学院で麻酔の研究を始める予定である。
という背景も相まって誘引されたのが、華岡青洲の伝記を読んだ後の「複雑な気持ち」の大まかな内容である。

(前置きが長くなったが、)そんな私が今年学びたいと思っていることは、

  1. 麻酔科学

  2. 消費者行動論

  3. ゲーム開発

の3つである。

麻酔科学に関しては、春から研究するとは言っても研究すべき課題が列挙できるほど深くは知らないので、まずは手当たり次第に本を読み漁りつつ、学んだことはnoteで発信して周りにもアピールして、外面的にも内面的にも麻酔オタクになっていこうと思う。周りへのアピールは、他の人がふと考えた麻酔への疑問を共有してもらえる可能性を高めることを期待してのことなので、気軽にコメントしてもらえるような文体を心掛けていきたい。

消費者行動論に関しては、先に書いた治験への参加の悪さは、治験に対するイメージの悪さも問題だと思うので、そこを払拭(あるいは刷新)する方法を考える材料として学びたい。その方法が思いつかなくても、資本主義社会を生きるうえで学んでおいて損はしなそうだという考えも一応ある。

ゲーム開発に関しては、自作の音楽をもっと広く聴いてもらう手段として、プログラミングを学ぶ手段として、そして、製品としてのゲームをもっと深く味わう視点を得る手段として学びたいと考えている。麻酔の研究をする日々をそのまま送っても、あまり関わりはないであろう情報科学系やロボット工学分野の人ともプライベートで仲良くなるための会話の糸口にできるかもしれないなんて下心もちょっとある。

上記の3つを今年はしっかりと時間をかけて学んで、ゆくゆくは華岡青洲のように国の科学発展に貢献するような麻酔研究者になっていきたい。と、伝記を読んだ直後の正常な判断が若干麻痺したニートは思っている。


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