【ss】高校部活合唱の話 02
◯佛兎高等学校/1-1教室
根暗(…)
(……まさか新歓初日に合唱部部長に声かけられるとは)
入部届け「」ヨォ
根暗(……合唱か……)
???「根倉さん!」
根暗「えあ ハイ 根倉です」顔上げ
同じクラスの生徒「や!」
根倉(えめっちゃおでこ広 あ前髪短いのか いやどっちもか)
「どうも、…えーと……」
デコ「比田井!」
根倉「…ひたいさん」
比田井「うん! じつはうしろの席! じつは!!」
根倉「は? あ…えー、……ごめん」覚えてなかった
比田井「いいっていいって! ねえねえ根倉さんは部活どうすんの? 前髪長い部?」
根倉(お前は前髪短い部か?)
「きめてな
比田井「エ? 私?」
根倉「聞いてねーよ」
比田井「私はー、陸上かサッカー――」
ポツ
ポツポツ
ポツポツポツポツ
ザーーーーー
比田井「」
根倉「」
比田井「……今日は見学やめようかな」
根倉「…だね」
サーーー
比田井「雨じゃどーせどこの運動部も屋内で筋トレだろうなァ」つまらんの
根倉(…あ)
――「まぁ暇だったら明日も来てよー、新歓期間中最後まで演奏会やってるからさ〜」――
根暗「…あのさ、じゃあ」
◯佛兎高等学校/音楽室入り口
部長「おーよう来たのう〜〜〜〜〜〜」雨天は湿気が多くてノドに良いぜ!
根倉「こんちは」
比田井「どもっス!」
部長「ん? 友だち?」
根倉「あ、クラスの――
比田井「友だちの比田井です! よし、友だちになろう!」ネ!!
根倉「う、うん、おっけ……」
部長「オッケーオッケー友だち誕生の瞬間ねー ここの部長の府鳥で〜す」
根倉(早速不安なシンパシーが生まれている)
府鳥「まだ準備中だけど、のぞく?」
根倉「いいんですか」
府鳥「まかせろぉ!」ガチャ
部員「――じゃストレッチ終わったらつぎ横隔膜動かして 三十秒はかるよー」
比田井「…?? おお!?! あのお腹ぺこぺこしてるのなんすか!?」
府鳥「正確にはお腹じゃなくて横隔膜すな。ここにあんのよね」ユビサシ
比田井「ほほう」胃のうえかぁ
根倉「しゃっくり出る時のあそこか」
府鳥「そそ。んで、これをできるかぎり大きく素早く動くようにしておくというトレーニングなわけ。ビブラートも実はここでかけるヨ」ぺこぺこ
比田井「はー! そうなんだ! てゆか横隔膜って意識的に動かせんの!? うわ全然できねぇ!!」
根倉「これ攣りません?」イテテ
府鳥「まやってりゃそのうちね 鍛えてる男が胸筋動かすみたいなアレよ、あるいは耳動かせるみたいな?」鼻呼吸がポイントな
比田井「それはかっけぇ」
根倉「かっけぇ?」
部員「頭は背骨の真上にあるか? 首に力は入ってないか、巻き肩にならず腕は自然に真横にあるか、背骨はS字に保たれているか。はい足の裏ー、体重どこに乗せるか調節してー」
根倉「生徒が指示出すんですね」
府鳥「いつでも顧問がいるわけじゃないしねえ。大体だけど、トレーニングの管理担当と発声の管理担当がいるよ」
トレーニング担当「いいかー? 体幹大丈夫かー? ほんとうかー?? お腹押してもいいなー? そぉい」ガス
根倉(雑では?)
比田井「うお! やっぱかっけえ!!」キラキラ
根倉(…もしかしなくても比田井さん脳筋…?)
府鳥「お、そろそろ開演時間だ」
「んじゃ私そろそろ引っ込むわ、準備室で待機せんとまたどやされr
副部長「府鳥ゥ!!!!!!」
府鳥「行くってばさあ〜」
前科あるからねあんたは
わかったから〜〜
根倉「…なんか引きずられていったな」
比田井「ありがちぃ〜〜」
◯佛兎高等学校/音楽室
根倉(…………部活か…)
比田井「ねくらさんねくらさんはよ行かんと席取られちゃうんじゃ?」新入生入ってきてザワザワ
根倉「あ、そうだね行こうか」
比田井「どこすわる〜〜?」
根倉「(たぶん…比田井さんは部活合唱って馴染みがないよな)…ソプラノ…左寄りがいいんじゃないかな?」
比田井「じゃあ――」ねくらのほうむいたまま走り出す
比田井 「わっ」バフ
???「ひぇあ!」バフ
根倉「えええちょっと」
比田井「ごめぇんきれいに衝突した!! 大丈夫かね!」
金髪「ひぇぇこちらこそごめんなさい〜〜」
比田井「あ」ぱちっ
金髪「…な、…」
金髪「なな、なんでしょうか…あ、そうだ、あのわたしは日本人ですし日本語が母語でまたヤンキーでもなくだからその
比田井 「ねくらさんこのひとちょーかわいい!!!」
金髪「」
根倉「」
金髪「……え? ぁ えっと……」
根倉「引いてる引いてる」
比田井「新入生だよね? ここ座りますー?」
金髪「……あ、ぅえっと、あの、どうぞ! わたしソプ寄りならどこでもいいので…!」
根倉「じゃ並ぼうか?」
比田井「だね」
金髪「……はい!」
部員「5分後に開演しまーす」
比田井「羽溢さんていうんだ! 1組じゃないよね? 見たことないもん」
羽溢「はい、わたしは1年3組ですー」
根倉「…羽溢さんは合唱やってたの?」
羽溢「あの、私自身部活はやってなくて! 地元のコーラス隊だったんです。高校入学のタイミングで卒業しましたが、学生合唱が好きでちょっと追っかけとかもしていました」
根倉(…なるほどね)
比田井「へーじゃあ入部するの?」
羽溢「はい! 昨日も来てたんですけど、ここは今年でやっと三学年が揃うような新しめの団体にしては統率取れてますし…力を感じますから! やっぱり合唱はいいですね! とくにハイソプラノのこう! 軽く細い響きが好きなんです!」キラキラー
比田井「おおー、はいソプラノ? だからここの席なんだ。わたしは初めて聴くんだけどさぁ〜」
根倉(……好きだから、か…)
『a cold never bothered me anyway…』
根倉(さっき…羽溢さんハイソプラノ的な声が好きって言ってたけど)
(ここのソプラノそこまでレッジェーロじゃないし)
(選曲も、新入生にむけてだからやっぱり合唱曲として作られたものが少ないな)
学指揮「次リクエストないかな〜? どう?」
根倉「…あの、賛美歌やってませんか?」
比田井「?」
羽溢「!」
学指揮「Ave Regina Coelorumなら練習曲にしてるけど、それでもいい?」
根倉「はい」
学指揮「じゃそれで〜」
『Ave Regina Ave Angelorum…』
羽溢「……」
根倉(うーん……頼んでみたものの…あんまり教会音楽のアンサンブルっぽくないな…こっちを得意にしてる団体じゃないのか)
学指揮「ちょっとごめん!」パン
根倉「!」
学指揮「ソプ、村上と鈴木中心に細く揃えて」
ソプラノ「あい」
学指揮「メッゾは逆に密度と音圧下げて、アルトはもう少し出て」
メゾアルト「おk」
学指揮「音」
ピアニスト「」ポーン
学指揮「歌い出し和音だけ合わせるぞ、さんはい――」
『――』
羽溢「――っ!」キラキラ
根倉(……倍音が、)宙を見る
比田井「わあ」
学指揮「…うん、ポジション奥めで、丁寧に揃えて。ミュージカル曲のほうに引っ張られないように軽く」
「見学のみんなごめんね! じゃもう1回!」
◯佛兎高等学校/音楽準備室前
ザワザワ
ありがとうございましたー
またきてねー
羽溢「根倉さん!」
根倉「?」
羽溢「あの、、ありがとう! ここのソプラノ、あんな作り方もできるんだね」
根倉「えいや、私がお礼言われるような、…うん、そうだね、あれよかったよね」
羽溢「それでね、えーと…根倉さんは、入部しないの?」
根倉「え」
羽溢「いきなりごめん! でも、合唱、やってたのかなぁって…それで…」
根倉「あー…」
比田井「考え中かね?」
根倉「そんなとこかな…」
羽溢「あ、あのね、音楽準備室で、質問とかも受けてくれるんだって。だから…いってみたらどうかな…」
根倉「…あ、え〜と」
羽溢「あああなんか色々! いっちゃってほんとごめん!
その、私、入部届け出したから、…また、会えたら、よろしくね! じゃあ!」パタパタパター
根倉「あ、うん…」
比田井「だってさ 準備室行ってみる? せっかくだし! ね!」
根倉「う〜ん…まあせっかくだし…」
比田井「おーらい!」
根倉「なんか付き合わせてごめん」
比田井「いやいや! わたしも筋トレの話聞きたいんだよね!!」ガッ
根倉(やけに前向きに押してくると思ったらそれか…)
つづく
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