母とむすめの幻視

母子は市外の小さな資料館、
あるいは公民館のワークショップ、休日の、ひとのいない遊園地。
それが休日だったということ。
おさない子どもが、葉ずれの音をひろいながら眼を細めている、
なんだって有りうるじゃないか。
ルーフをあけたちいさな車の、
道すがらがもっとも楽しくて、
安心なことが、どれだけ、
だから、おもいでを辿るように、
いつか言えなかった気もちを指で捲りひらくように、かざす幻燈の、
いくつも過ごした日々が織り、つもっていくほど、
当然のように、時間のおもみが
それがこの地点からのぞんだ遠景だとしても(あのお船が遠くかすんでいるのは、わたしの思い出ではない。そんなことは、どうでもよい。いつかみかんの葉をかき分けて、あのホテルからその一艘を)
確かに見たのだ。
(――おかあさん。)


あれは油です
使い古され悲鳴さえ鈍く
いつまでもあの空に揚がらない
寂しさの油なんです
おかあさん。

木ノ衛ちょむ @knmrchom
X 投稿より(2020.04.02)

みかんの花が 咲いている
思い出の道 丘の道
はるかに見える 青い海
お舩が遠く かすんでる

みかんの花咲く丘 / 作曲・加藤省吾|作詞・海沼實

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