短編小説「気がつけば、手軽に買える万年筆の話をしていた。」
何かに発展する事もなさそうな文章を書いて、ペンを投げ出して、布団の上で横になってしまう。
頭の中が縮まって、グチャっと混ぜられた感覚に陥ってしまった。多分、何も栄養を入れずに書くという作業をしているせいだろう。書かねばならぬというのに、何も進んでいないのだ。
ぼんやりと今ほど投げたペンを見た。プレピーという安い万年筆。ブルーブラック。
たまには万年筆を使ってみようと思ったが、高いのは買えない。そんな中、文房具屋の片隅で見つけた、この万年筆。
最初は万年筆というものに戸惑って書きづらかったが、今となってはものすごくスラスラ書ける。気持ちがいいし、書いたものを見ると筆の様に綺麗に跳ねているところもある。
そう、気持ちがいい。これは結構大事で、気持ちがいいと筆も進むし、それによって何か閃く事もある気がする。気がするだけなのだけれど。気持ちは大文豪である。
なんて言っても、結局のところは何も進まず、原稿用紙の前でもがいているのである。
とりあえず、この書き味を感じるためだけに文字を書いていれば、そのうち何か書けるのではないかと、プレピーを持って、スラスラとまた文章を書き始めていた。
明日はきっと、晴れる様な気がした。