【Shake it off. vol.036】 また旅できる日を願って ー Spain 2019.2/④
雷雨で起こされたBilbao2日目の朝。
この街は本当に天気がころころと変わる。
さっきまで晴れていたかと思えば雷雨、はたまた雹。喜怒哀楽が激しい思春期のティーンエイジャーみたいだな、なんて思う。
雷で起こされた私たちは朝食を済ませ、(何度も言うが本っ当にホテルの朝食が最高!)私が身支度を済ませている間にサンセバスチャンへの行き方諸々、そしてbarik(バリック、suicaの様なもの)をゲットしておいてくれた。(Thank you!)ホテルへ帰ってきて街の様子が映った写真を見せてもらったら、雨上がりの朝がとっても素敵で、更には現代的な地下鉄に興奮した。行けば良かった…とちょっぴり後悔した。Bilbaoの地下鉄はとってもエコ。ホームの照明が少し暗くなったり世界中で是非取り入れてほしいアイディアがいっぱいだ。
今回は路面電車を使い高速バス乗り場まで行き、サンセバスチャンを目指す。ここBilbaoから高速バスで約1時間半くらいだったろうか。ちらっとあの空港で出会った彼女が教えてくれた行き方だった。高速バスの切符を買うのに地味に苦戦しながらも無事ゲットし乗り込む。座り心地も抜群に良い素敵なバスだった。そして何より景色が素晴らしい。牛や馬、羊が飼われているコテージをぼんやり眺めながら、のどかな風景がどこまでも続く。天気がころころと変わるから冬でもこんな美しい緑が生い茂り、人間と自然が共存し調和しているということがひしひしと伝わってくる。
無事高速バスの旅を終え降り立ったサンセバスチャンも、雨。結構な冷たい雨だったがきっと大丈夫、これまでのようにいつか上がるだろう。出番を待ちわびていただろうしっかり常備していた折りたたみ傘を使い、昼間のバルへ繰り出す。ここサンセバスチャンもやっぱり街が美しかった。そして彼女がオススメしてくれた理由がすぐ分かった。食や街の美しさだけじゃない、人々が“日常”を“美食”を通して心底楽しんでおり、また料理を提供する側も食を通して“楽しんでいる”のだ。こんなに楽しげな人々を久しぶりに見たんじゃないか。兎に角バルは幸せと豊かさに充ち満ちていた。
バルは人々を幸せにもするし、馬鹿にもする。
もちろん良い意味で。
幸福感ってこういうことだ、とこの時思った。何を食べるかじゃなくってどこで食べるかでも実際無い、誰とどのような時を過ごすか、そして心を通わせるかが幸福感に繋がるんだ。
脳内Happyな私たちは昼間のバルを後にし歩いた。雨は上がっていてサンセバスチャンに来て初めて青空を見上げた。目的も無く漂流するというのは良いものだとつくづく思う。いつから私たちは効率や最短を考える思考になってしまったんだろう。
無駄こそ豊かだというのに。
ただただ海沿いを歩いているとコミュニティーホールとでも言うのだろうか、大きな建物に辿り着き入ってみた。中はとってもオシャレな造りになっていて、現代アートのように見えた。これまたオシャレなカフェなんかも併設されていてそこに観光客の姿はなく、ローカルな人たちの憩いの場といった感じ。遊具なのか疑問だったが子供たちが楽しそうに遊んでいた。ホールというと無機質な空間をイメージするが、要所要所に緑があり建物の中に居ても閉鎖的な感じはなく、開放的で自然すら感じられた不思議な空間だった。そこは屋上もあり私たちも登ってみることにした。登るとティーンエイジャーたちのデートスポットとなっていて初々しく、そして微笑ましかった。
海側は厚い雲がまだかかっていたけど、そこに太陽が差して神々しい風景と出会えた。とっても見晴らしの良い素晴らしい場所だった。そりゃここでデートしたくもなる。
このサンセバスチャンは訪れる予定では一切無かったことは最初の記事でも書いたけど、ちょっとしたトラブルから出会えた日本人の女性に勧められ行くことを決めた場所。一期一会の出会いが連れてきてくれた大切な場所であり、貴重な景色。さっきも書いたけど、目的がなければダメ、とか最速最短でなければいけない、とかいつからそんなルールに私たちは縛られるようになってしまったんだろう。
暮らしに、人生に、無駄があってはいけない?
やることなすこと効率的且つ順序よく行わなければいけない?
いつからそんな肉体や思考を持つようになったんだろうか。そう思うと旅は“疑う”ということを意識させられるよい機会とも言えるだろう。私たちが日々暮らす“普通”や“ルール”は、本当に正しいのか、真実なのか。信じているものを疑うことは、社会を、世界を変える大きな一歩だと思う。もっと日常を漂流しよう、ただ理由や目的もなく漂ってみよう。普段カットしていた物事や世界がパっと目の前に現れて、カラフルに映し出してくれるから。
サンセバスチャンに別れを告げ、Bilbaoに戻ってきた。何故だろう、住み慣れた街かのようにホッとした。Bilbao最後のディナーを終え、明日からBarcelona入りをするため荷物をまとめる。ワクワクより、もうちょっとここに居たいと言う気持ちがお互い感じられたと思う。バスクの地を訪れたことは私たちにとって良い影響でしかなく、なんとも素晴らしい経験だった。絶対またここへ戻ってこようと誓った。