【Shake it off. vol.034】 また旅できる日を願って ー Spain 2019.2/②
7:30 a.m.
意外と目覚めは良かった。
朝起きてバルコニーから外を眺めてみて改めて、私はヨーロッパの地を訪れているんだという気持ちになる。だって目の前に広がる景色が、日本のバルコニーから見る景色とまるで違う。どちらが良い悪いという事じゃなく、この違いを感じられていることに細胞が疼いているのが分かった。そう、ここはスペイン北部、ビルバオ。朝でもまだ薄暗く、寒い。明るくなり出すのが8時過ぎと言うから、私がここに住んだら寝坊しそうでビクビクしちゃいそうで恐ろしくなる。
前日のハプニングが続いたフライトも今振り返ってみたら、微笑ましい。結局ホテルのチェックインは11:30過ぎくらいだったか。日付が変わる前にたどり着けた事にホッとしたし、何よりホテルのベッドが好みだったことはかなり大きい。結果ぐっすり眠れた。そしてバルコニーからの眺めがこれまた良かった。ネルビオン川(Rio de Nervion)が目の前を流れていて、旧市街地へのアクセスにはもってこいの場所。
足早に準備を済ませ、まずは腹ごしらえ。ホテルで朝食をとることにした。折角美食の街に来ているんだし、バル巡りも楽しみたいから朝食は控えめにしようね。とあれだけ言っていたのに、朝食を目の前にしたらそんな約束は吹っ飛んでしまった。この朝食がまた、素晴らしかった。特にフレッシュな100%ブラッドオレンジジュースが忘れられない。今まで飲んだことがないフレッシュさと、オレンジじゃなくもはや赤いブラッドオレンジジュースだった。食べ終える頃ようやく外が明るくなってきた。ハロー、ビルバオ。今日から2日間よろしくね。
外は寒いし、さっきまで雨が降っていたけどその雨も散策しだしたのと同時に上がった。明るくなってきてやっと街を見渡すことが出来た、本当に美しかった。ビルバオは近代的なイメージを持つ人が多いかも知れない。後に行くグッゲンハイム美術館も有名だし、なんなら私もその中の一人だったのだが、旧市街地も色濃く残っている。私たちはそちら側のホテルをブッキングし旅の拠点にすることにした。そして目的がもう一つ、ベレー帽だ。ここバスクで誕生したと言われるベレー帽。私たちは大の帽子好きと言うこともあって是非、日本につれて帰りたいと思っていた。目的の帽子屋さんを目指して歩き出したものの、目に飛び込む全てが絵になって、写真を撮らずにはいられない。なんて美しい街なんだろう。川沿いもキレイに整備されていて歩きやすいし、早朝からランニングをする人たちが目立つ。…私もこの街に住んだら、走る楽しさを感じられるだろうか?
写真をバシバシ撮りつつやっとの事で目的地に着いた。ELOSEGUI(エロセギ)という老舗の帽子屋さん。店内に入ると色とりどりのベレー帽達と、笑顔が素敵な男女が出迎えてくれた。早速たくさんのベレー帽を試着してみたがカラーが凄まじいほどあって中々決められない。どれもこれも可愛くって、あれやこれやと欲しくなる幸せループ。最終的に笑顔が素敵な彼女にセレクトしてもらったパッと目を惹くキレイなオレンジと、深い色味が美しいチャコールグレーを連れて帰ることにした。どちらももちろんこの冬も大活躍中だ。ここでは友人夫婦にも購入し、セレクトしてくれた彼女ともお喋りを楽しみ店を出た。さっきまでどんより曇り空だったのが一変、青空が見えはじめ、スペインで初めて太陽を見た。温かかった。
この街は、兎に角美しい。整備が行き届いていて、それでいて古き良き建造物もしっかり残っている。散歩しているだけでまるでタイムスリップしたような気分にすらなる。そして人々の笑顔が温かい。さっきの男女もそうだけど、道ですれ違う人たちや、バルで楽しげな人たち、みんなみんな良い顔をしていた。それってなんて素敵なことだろう。まだ訪れて数時間しか経っていないけど、どんどんこの街に惹かれているのが分かった。そしてちょっぴり反省もした。日本へ居るとき、私は人々をこんなに細かく観察できているだろうか?きっと日本にも温かなぬくもりや笑顔はあるはず。でも意識して見ていなかったかも知れない。それより仕事のことで頭がいっぱいになっていたり、早くメールに返信しなくっちゃとスマホやpcの画面しか視界に入っていなかったかも知れない。でもこれって意識次第。このことに気付いて欲しくって私をスペインに渡らせたのかも知れない、なんて後になって意味づけをしてみたが、きっとそうだったんだろう。たくさんのことを吸収して、さっき手に入れたベレー帽と共に、日本へ持ち帰ろう。そしてどんどん活かしていこう。
購入したオレンジのベレー帽を早速かぶり、次の目的地グッゲンハイム美術館へと歩き出した。