カレー激戦区・神保町でいちばん愛されるカレー【ライスカレーまんてん】
めくるめく神保町カレーと共に(第3回)
大人の給食。ノスタルジック・カレー
東京は神田、神保町。
昔ながらのカフェと古本屋、そして珠玉のカレー屋が軒を連ねる街。
そんな歴史ある神保町には、口に入れた瞬間にもう2度とは戻れない”あの頃”を思い出すカレー屋が存在する。
その店の名は【ライスカレーまんてん】
珠玉のカレー屋がひしめく神保町において、最も愛されるカレー屋だ。
神保町最高峰のコスト・パフォーマンス
神保町駅から徒歩5~10分。
入り組んだ裏路地を抜けて辿り着いた場所には、なにやら列ができていた。
お世辞にも分かりやすいとは言えない場所だ。
建物も年季が入っており、ひさしのビニールは錆び汁で薄汚れている。窓枠に使われている木材はところどころ剥げており、さながら田舎の古い祖父母宅のような風体だ。
にもかかわらず、平日の午後4時に5人程度の並びができていた。
そう。何を隠そう、ここが【ライスカレーまんてん】だ。
店先には昭和を感じさせるノスタルジックな看板と、ガラスケースに入った食品サンプルが置いてある。
私は平成14年生まれであり、昭和の雰囲気は全く知らない。しかし、このレトロな佇まいを見ると、郷愁にかられてしまう。
…………ん?
やっっっっっす!!!!???
ちなみに、神保町のカレーの相場はだいたい1000~2000円だ。
先日紹介した【マジカレー】は920~1000円台前半。
コストパフォーマンスに優れた【エチオピア】も同程度の価格帯であると考えると、その安さが際立つ。
安さに期待と不安を膨らませながら、待つこと5分と少し。
回転が速いため、列ができていてもかなりスムーズに入ることができた。
客層は、来店時の時間の影響もあってかサラリーマンと現場系の方と学生が4:4:2くらいの比率だった。
見たところ、かなりの数の客がリピーターらしい。
店内は狭く、コの字型のカウンター席のみだ。手刀を切って謝りながら、サラリーマンたちの後ろを通って着席。
入るや否や、店員さんが威勢よく「ご注文は!?」と聞いてくれるので、あらかじめ何を頼むか決めておくのが良いだろう。この日はカツカレーを注文した。
さて。
注文と同時に卓上に置かれた、コレ。
……ソースだろうか。それとも新手の味変用アイテム……?
気になって舐めてみると、なんとアイスコーヒーだった。
ショット程度のミニコーヒーだが、サービスでコーヒーがついてくる心意気がなかなか嬉しい。
大人の給食カレー
待つこと数分。
大きな揚げシュウマイが入ったシュウマイカレーがやって来た。
ルーは神保町で最も粘度が高いと思えるくらいにドロドロしていて、具材はシンプルにひき肉(と、トッピング)だけだ。
さっそく福神漬け(写真を撮り忘れたが、かなり赤みを帯びたタイプだ)をたっぷり添えて——いざ、実食!
——んん! 美味い!!
ねっとりとしたルーから広がる、シンプルで濃厚な味わい。
角の取れた辛みの奥に、小麦粉に包まれたスパイスの存在を感じることができる。
トッピングの揚げシュウマイも絶品で、味のイメージはメンチカツに近い。ぎゅっと引き締まった肉々しい味わいが、辛みの効いたルーとよくマッチしている。と
シンプルながらも鮮烈な味わいは、小学校のカレーライスを食べた時の原体験を思い起こさせる。
あの時はカレーは甘口しか食べられなかったけれど、いつの間にか辛口が食べられるようになったなぁ……そんな、柄にもないノスタルジーに浸りたくなるような味だ。
まさに、大人の給食カレー。
しかし、他の神保町のカレー屋と比べると、どうしても味が平坦な印象を受ける。複雑なスパイスの深さはない。
——だから、カレーとしてはおいしくない。
そう思うのは、あまりにも早計だ。
まんてんのカレーは、スパイスカレーでも、欧風カレーにも、カレーライスにも非ず。今一度、店名を思い出してみてほしい。
——そう。ここは、”ライスカレー”まんてん。
スパイス×スパイスによって完成される他のカレーとは違い、このカレーはライス×スパイスによって完成される!
トッピングの揚げシュウマイによってジューシーさが加わり、アイスコーヒーによってコクが演出された粘度の高いルー。
その粘度の高さは、まさに「おかず」としてのカレールーの存在を意味している。
なるほど、シンプルだが飽きがこない構成だ。
普通盛りでもかなりの量がある&アイスコーヒーがついてくることからも、コストパフォーマンスも素晴らしい。
確かに、これは毎日でも食べに行きたくなる味だ。
ごちそうさまでした。
総評
味を一言で表現するなら”原風景”——そう、原風景。
小学校に入学して、はじめて「給食のカレー」を食べた時の感情を思わず振り返りたくなるような、日本人の根源にあるノスタルジーを刺激する一皿だ。
ライスに最適化されたルーと、肩肘張らない等身大のトッピング。真っ赤な福神漬けによって生み出される世界観は、まさに昭和そのものだ。
素朴で、狭くて、足りなくて。
けれど、あまりにも満ち足りている——そんな、少年期の日々を感じさせるカレーだった。
テイスティングノート
さいごに
さて、いかがだっただろうか?
素朴な味わいのライスカレーは、あなたにきっと、戻ることはない少年期の日々を思い起こさせることだろう。
ぜひぜひ、昭和の世界観の残る”神保町”へと脚を運んで、このカレーをご賞味いただければと思う。
次回は【6月11日】更新の予定だ。
ぜひぜひ楽しみにしていてほしい。
それではそれでは。
※本記事に記載されている情報は、2024年5月時点のものです。
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