カレー激戦区・神保町にある、現存する日本最古のカレー屋【スマトラカレー共栄堂】
めくるめく神保町カレーと共に(第6回)
現存する日本最古のカレー専門店
東京は神田、神保町。
徳川幕府のときには大名屋敷や旗本屋敷が立ち並び、明治時代になると大学をはじめとする教育機関が集まった、歴史と伝統のある街。
そんな神保町には、現存する日本最古のカレー屋がある。
その店はなんと大正13年——1924年創業。今年で100年目を迎えた。
神保町のカレーの歴史を最前線で見届けてきたお店、その名は【スマトラカレー共栄堂】。
関東大震災の翌年に創業した、世にも珍しい「スマトラカレー」のお店である。
日本でここだけ、スマトラカレー
神保町駅から徒歩2分のところに、そのお店はある。
このお店で出しているのは、イギリス系の欧風カレーとも、インド系のスパイスカレーとも違う、【スマトラカレー】だ。
東南アジアのスマトラ島のカレーの作り方を日本人向けにアレンジしたという、ここでしか食べられない逸品である。
半地下になった階段を下ると、そこにあったのはどこかレトロな雰囲気のお店だ。
神保町は総じてレトロな雰囲気のお店が多く、ノスタルジーが刺激される。昭和レトロや平成モダンがトレンドにもなった昨今、神保町の魅力は衰えるばかりか、いっそう輝きを強めている。
さて、店内に入ってみよう。
訪問時刻は平日の12:30ごろ。客入りは8割程度だ。4人掛けのテーブルが12卓ある。神保町のカレー屋にしてはキャパシティが広めだ。この日も待たずに入ることができた。
しかし、ここで注意なのが、1人で行くと相席に通されるということだ。相席とはいえ、相手との間に透明なパーテーションがあるのでそこまで気にならない。学食やフードコートの長机を苦に思わないのであれば、気にする必要はないだろう。
相席を気にする人は2名以上で行くのが無難だ
ちなみにメニュー表の位置が若干分かりづらい。卓上にはなく、ソファーの背もたれと壁の間に置かれており、筆者はてっきりヘッドレストと間違えた。
席に着くや否や、コーンポタージュが運ばれてきた。どうやらサービスらしい。
とりあえず一番人気だという【ポークカレー】を注文して席で待つ。
店内の雰囲気をメモしておこうとスマホを取り出したその時——
「——おまたせしました!」
「えっ」
牛丼チェーンもかくやというレベルの、爆速の提供だった。
はっは~ん、さては他のお客さんのオーダーと間違えたな? と思って辺りを見回してみると、全員の手元にカレーがある。つまりこれは紛れもなく筆者のカレーであり、実に注文から1分足らずで席まで運ばれてきたことになる——おそるべし、老舗。
実食
運ばれてきたのは、驚くほど黒々としたカレー。
前回紹介した【キッチン南海】もルーが黒かったが、その比ではない。写真では照明の都合で伝わりづらいが、イカ墨のような黒さだ。
では、福神漬けを添えて——いただきます。
ぱくり。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・うん。
まず真っ先に感じるのは、苦みだ。
焦げたような苦みがあり、その後に、平面的な辛さがやってくる。
正直かなりクセがあり、人は選ぶだろう。スパイス感やコクは少なく、独特な世界観——エキゾチックな味わいが最初から最後まで展開される。
エキゾチックといえば本連載2回目に紹介した【エチオピア】を連想するかもしれない。しかし、あちらと比べるとスパイス感が少なく、また苦みの印象が強い。同じエキゾチックなカレーでも、性格はまったく異なる印象だ。
ルーはサラサラしており、ご飯との相性は良い。粘度の高い米がルーと合わさることで口当たりが軽くなり、するすると喉を通っていく。
さらにポーク。ポークは非常に美味しい。ルーの苦さがポークの甘みを引き立て、非常に良いコンビネーションを生み出している。ポークの大きさは小さいものの、数がかなり入っているため、最初から最後までポークとのコンビネーションが堪能できる。
また、苦めのルーは福神漬けやコーンポタージュとも相性抜群で、ポーク・福神漬け・コーンポタージュの3つの神器をローテーションすることで、最後まで飽きずに食べることができた。
ごちそうさまでした。
総評
かなりクセのあるカレーだった。このカレーの味は、人を選ぶだろう。唯一無二の味ではあるので、好きな人はリピートするかもしれない。(ちなみに筆者の口には合わなかった。)
スマトラカレーのオリジナリティは神保町のカレー文化を牽引するに相応しい輝きを持っていた。100年の歴史を持つカレーを食し、神保町の、ひいては日本のカレー文化に想いを馳せる。
そんなひと時も乙なものだろう。
唯一無二のスマトラカレー。
一般的なカレーに飽き飽きした人や、物足りなさを感じる人にはぜひご賞味いただきたい。神保町カレー界の”奥深さ”を象徴するようなカレーだ。
テイスティングノート
さいごに
さて、いかがだっただろうか。
神保町にある、現存する日本最古のカレー屋【共栄堂】の魅力を少しでも伝えることができたのなら幸いだ。
ちなみに余談だが、冬季限定で焼きりんごもメニューに登場する。冬に行った際にはぜひご賞味あれ。
次回更新は【7/24】ごろの予定だ。
ぜひぜひ楽しみにしていて欲しい。
それではそれでは。
スマトラカレー共栄堂:https://www.kyoueidoo.com/
※本記事の情報は。2024年7月現在のものです。
メニューの価格や内容、営業時間は変更になる可能性があります。
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