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カレー激戦区・神保町にある、現存する日本最古のカレー屋【スマトラカレー共栄堂】

めくるめく神保町カレーと共に(第6回)


▲本連載のタイトル

現存する日本最古のカレー専門店

 東京は神田、神保町。
 徳川幕府のときには大名屋敷や旗本屋敷が立ち並び、明治時代になると大学をはじめとする教育機関が集まった、歴史と伝統のある街。

 そんな神保町には、現存する日本最古のカレー屋がある。
 その店はなんと大正13年——1924年創業。今年で100年目を迎えた。

 神保町のカレーの歴史を最前線で見届けてきたお店、その名は【スマトラカレー共栄堂】。 
 
 関東大震災の翌年に創業した、世にも珍しい「スマトラカレー」のお店である。

日本でここだけ、スマトラカレー

 神保町駅から徒歩2分のところに、そのお店はある。

▲神保町・スマトラカレー共栄堂
ちなみにこの上には、1909年(明治42年)創業の
老舗洋食屋【ランチョン】がある。

 このお店で出しているのは、イギリス系の欧風カレーとも、インド系のスパイスカレーとも違う、【スマトラカレー】だ。
 東南アジアのスマトラ島のカレーの作り方を日本人向けにアレンジしたという、ここでしか食べられない逸品である。

 半地下になった階段を下ると、そこにあったのはどこかレトロな雰囲気のお店だ。

▲店舗入り口

 神保町は総じてレトロな雰囲気のお店が多く、ノスタルジーが刺激される。昭和レトロや平成モダンがトレンドにもなった昨今、神保町の魅力は衰えるばかりか、いっそう輝きを強めている。

 さて、店内に入ってみよう。
 訪問時刻は平日の12:30ごろ。客入りは8割程度だ。4人掛けのテーブルが12卓ある。神保町のカレー屋にしてはキャパシティが広めだ。この日も待たずに入ることができた。

 しかし、ここで注意なのが、1人で行くと相席に通されるということだ。相席とはいえ、相手との間に透明なパーテーションがあるのでそこまで気にならない。学食やフードコートの長机を苦に思わないのであれば、気にする必要はないだろう。
 相席を気にする人は2名以上で行くのが無難だ

▲卓上セット。塩コショウ・らっきょう・福神づけ・ナプキン・つまようじ

 ちなみにメニュー表の位置が若干分かりづらい。卓上にはなく、ソファーの背もたれと壁の間に置かれており、筆者はてっきりヘッドレストと間違えた。

 席に着くや否や、コーンポタージュが運ばれてきた。どうやらサービスらしい。

▲サービスのコーンポタージュ。

 
 とりあえず一番人気だという【ポークカレー】を注文して席で待つ。

 店内の雰囲気をメモしておこうとスマホを取り出したその時——

「——おまたせしました!」
「えっ」

 牛丼チェーンもかくやというレベルの、爆速の提供だった。
 はっは~ん、さては他のお客さんのオーダーと間違えたな? と思って辺りを見回してみると、全員の手元にカレーがある。つまりこれは紛れもなく筆者のカレーであり、実に注文から1分足らずで席まで運ばれてきたことになる——おそるべし、老舗。

実食

▲ポークカレー(1200円)

 運ばれてきたのは、驚くほど黒々としたカレー。 
 前回紹介した【キッチン南海】もルーが黒かったが、その比ではない。写真では照明の都合で伝わりづらいが、イカ墨のような黒さだ。

▲ソースポッド入りのカレー。実に黒い。


▲ご飯にかけると、その黒さが際立つ。


  では、福神漬けを添えて——いただきます。

▲適度な大きさのポークが沢山入っている。
いただきます


 ぱくり。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・うん。

 まず真っ先に感じるのは、苦みだ。
 焦げたような苦みがあり、その後に、平面的な辛さがやってくる。
 正直かなりクセがあり、人は選ぶだろう。スパイス感やコクは少なく、独特な世界観——エキゾチックな味わいが最初から最後まで展開される。

 エキゾチックといえば本連載2回目に紹介した【エチオピア】を連想するかもしれない。しかし、あちらと比べるとスパイス感が少なく、また苦みの印象が強い。同じエキゾチックなカレーでも、性格はまったく異なる印象だ。

 ルーはサラサラしており、ご飯との相性は良い。粘度の高い米がルーと合わさることで口当たりが軽くなり、するすると喉を通っていく。

 さらにポーク。ポークは非常に美味しい。ルーの苦さがポークの甘みを引き立て、非常に良いコンビネーションを生み出している。ポークの大きさは小さいものの、数がかなり入っているため、最初から最後までポークとのコンビネーションが堪能できる。

 また、苦めのルーは福神漬けやコーンポタージュとも相性抜群で、ポーク・福神漬け・コーンポタージュの3つの神器をローテーションすることで、最後まで飽きずに食べることができた。

 
ごちそうさまでした。

総評

 かなりクセのあるカレーだった。このカレーの味は、人を選ぶだろう。唯一無二の味ではあるので、好きな人はリピートするかもしれない。(ちなみに筆者の口には合わなかった。)

 スマトラカレーのオリジナリティは神保町のカレー文化を牽引するに相応しい輝きを持っていた。100年の歴史を持つカレーを食し、神保町の、ひいては日本のカレー文化に想いを馳せる。
 そんなひと時も乙なものだろう。

 唯一無二のスマトラカレー。
 一般的なカレーに飽き飽きした人や、物足りなさを感じる人にはぜひご賞味いただきたい。神保町カレー界の”奥深さ”を象徴するようなカレーだ。

テイスティングノート

▲評価はあくまでも個人の感想

さいごに

 さて、いかがだっただろうか。
 神保町にある、現存する日本最古のカレー屋【共栄堂】の魅力を少しでも伝えることができたのなら幸いだ。

 ちなみに余談だが、冬季限定で焼きりんごもメニューに登場する。冬に行った際にはぜひご賞味あれ。

▲焼きりんご。ミルクポーションがついてくる。

 次回更新は【7/24】ごろの予定だ。 
 ぜひぜひ楽しみにしていて欲しい。

 それではそれでは。


スマトラカレー共栄堂:https://www.kyoueidoo.com/

※本記事の情報は。2024年7月現在のものです。
 メニューの価格や内容、営業時間は変更になる可能性があります。

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