軟水
"鉱水とは、原水の種類のひとつです。本品は硬度21mg/Lの軟水です。"
友人の結婚式に参列した。
中高時代の友人は、明るさを持ちつつもちょっと大人しいグループにも溶け込めるような人で、真面目で可愛い感じだった。
結婚式の参列者は大学時代の仲間が多いらしく、男はほとんどツーブロであんまり見かけないカラースーツを着ていたし、女の子はみんな可愛くてはっちゃけてる感じだった。みんな、異様に声が大きかった。
その場にいる多くの人が、マイクを回されてもそんなに面白くないことを堂々と言えるような謎の自信を持っていて、それが結構怖かった。羞恥心はギュッてすると恐怖になることを知った。
友人本人は大きく変わったようには見えなかったけれど、大学時代はこんな人たちに囲まれていたんだなとしみじみ思っていた。
賑やかな周りの声をBGMに、結婚式で配られたペットボトル水の説明を読む。(これをやったことがある人とは、きっと仲良くなれる。)
"鉱水とは、原水の種類のひとつです。本品は硬度21mg/Lの軟水です。"
難しい。え、難しい日本語だな。
軟水と硬水の違いは見かけたことがあるけれど、鉱水と原水は知らない。「鉱水とは」で始まるから「鉱水」なんだなと思って読み進めると、最後には「軟水です」とある。硬水は苦手だから安心したけれど、"え、鉱水ってなんだ?"と疑問は残った。原水の種類のひとつ…。すみません、原水から教えてもらってもいいですか。
この謎は、つまらない周りの雑音を消すのにちょうどよかった。
何より、この日本語の響きが結構好きだった。
今日はこの言葉に会うために来たんだなぁ。このペットボトルはどこにでもありそうだけど。
(結婚式はとても素敵だった。カッコ書きの中で申し訳ないけれど、改めて結婚おめでとう。)
最近、軟水というお笑い芸人さんにハマっている。
コント師なんだけど、ネタはセリフの少ないものが多くて。"コントなのにセリフこんなにない!?"ってびっくりするのがちょっと楽しい。
大川内さんとつるまるさんという方のおふたりで「軟水」という名前のコンビなのだが、”水-川-鶴”のワードが縁語みたいでなんか好き。並べたときの字面がとても美しい。でも水回りのネタはやっていない。
……水回りのネタ?
軟水のおふたりは、鉱水と原水の違いがわかる人なのかな。