【怖い話】 集合体マンション 【「禍話」リライト⑤】
「僕が大学時代の話なんです」
Aさんはそう話し始めた。
「このへんの話じゃないんです。実家を出て、大学のある地域に住んで、実家に戻ってきて就職したんで。
だからもうあの地域には行くことはないです。絶対に近づきもしません」
Aさんは学生生活の傍ら、短期でポスティングのバイトをやっていた。
家やマンションのポストに入っている、うざったいチラシやダイレクトメール。あれを投函していく仕事だ。
「ポコポコ入れていくだけなんで、結構楽な仕事で」
給料も悪くなかった。
ある日、大学近くの地区の担当になった。各戸に適当にチラシを入れていくと、古びたマンションがひとつ建っていた。
さほど大きい建物ではない。マンションとアパートの中間、くらいだろうか。
外付けの集合ポストがあった。まとめて投げ入れていくには楽な場所だ。いつものようにさっさとやってしまおうと思ってふと見ると、こんな内容の貼り紙がしてあった。
ここには
チラシや広告などを
絶対に
投函しないで下さい
綺麗な紙に、とても丁寧な字で書いてある。まっすぐピッタリと、ポストに貼ってある。よほどきちんとしたタイプの管理人さんなのだな、と思った。
しかし、「管理人より」だとか「大家より」などの署名がない。注意書きだけである。では住人の誰かが代表して貼っているのだろうか。
とは言えこちらにも、これだけ配ってきてくれと課されたノルマがある。配っているのは「引っ越しのご用命は」云々のチラシで、猥雑なモノや怪しい代物ではない。
ちょっと悪いかなぁ、そう思いながらも、でもまぁいいか、とAさんはポストひとつひとつにチラシを入れていった。
と。最初は気づかなかったのだが、この集合ポストの個別の「箱」、部屋の番号が書いていない。
使われている形跡はあるので、ほぼ全室に誰かしら住んでいるようだ。
名前が書いていないのならわかる。個人情報が大切な時代だ。しかし、部屋の番号すら書いていないのはおかしい。これでは郵便物が個別に届かないじゃないか。
そんなことを考えながら、Aさんはポスティングを終え、その日は帰った。
数日後。
また大学近くの地区のポスティング担当になった。
そういえばへんなマンションがあったよなぁ、あぁここだ、と思いながら、当のマンションの前まで来た。
例の注意書きは先日と変わらぬ位置に、変わらぬ文面で貼ってあった。しかし、
ここには
チラシや広告などを
絶対に
投函しないで下さい
の、「 絶対に 」の箇所が、赤い二重丸で囲まれている。
それもグリグリッと雑につけた二重丸ではない。コンパスで描いたような、きれいなまんまるの2つの円が、「絶対に」の文字を包んでいる。しかしその円はフリーハンドで描かれているように見えた。
うわっ、怒っちゃったかな、とAさんは思った。しかし怒っているにしては、感情のこもっていない機械的な赤い丸で、それがむしろ不気味に思えた。
その瞬間、ふっ、と視線を感じた。
このマンションからなのか、それはわからない。ひとつの視線ではない。どこか一ヶ所からというのでもない。何故か「マンション全ての窓から住民全員が自分を見下ろしている」、そんなイメージが浮かんだ。
気味が悪くなったAさんは、その日そこには何も投函せずに帰った。
しばらくしたある時、大学の友人と遊ぶ機会があった。酒を飲んだりツマミを食べたりしていたら、そのマンションの話になった。
Aさんが前述の体験を語ると、友人の一人が「あぁ、あそこおかしなマンションだよね……」と話し始めた。
「あそこさぁ、昔はどっかの会社の、社宅だったらしいんだよ。
それがまぁなし崩し的にさ、普通のマンションみたいになってるんだよ。
あそこの住民さぁ、知ってる? みんなどっかケガしてるんだよ。
眼帯してる奴もいれば、腕に絆創膏貼ってる奴もいて、まちまちなんだけど。
松葉杖の人もいてさぁ。でもその人、ずーっと松葉杖ついてるんだわ。
だからケガとかじゃなくて、一生松葉杖生活な人なんだろうなぁ……
とにかくケガ人しか住んでないマンションなんだよ。障害がある人向け?
そうじゃないんだよ別に。でもケガ人しかいない。妙な場所だよな……」
そんなマンションだったのか、と改めてAさんは嫌な気持ちになった。
そのまた後日、夜になってから友人たちと歩いていると、ふとあのマンションのことを思い出した。
Aさんが深い考えもなく「ほら、こないだのマンションさ、ここの近くで……」と呟くと、ひとりが興味津々になった。「行ってみよう」と言う。
Aさん含め他の人間は「やめとこうよ……」と言ったが、行くだけ行ってみようぜ、奥まで入るわけでもないし、そのポストだけでもさ、と言うひとりに押し切られる形で、全員で向かうことになった。
途中。
ここを行くともうすぐ、というあたりまで来ると、曲がり角の先で工事をする音がした。
2月3月あたりの年度末、街のあちこちで聞こえるあの騒音だ。「ドドドドドドドド」「グォン グォン グォン」「ガシャン ガシャン」……はつる、穴を埋める、押し轢いて固める。あの音が聞こえる。
道路の補修でもやってるのだろうか。しかしそれにしては、作業員の姿が見えない。夜なのにライトの光もない。
機械や発電機やコードらしきものもない。すぐそばまで来ているのに、立て札も三角コーンもない。工事をしている気配がない。しかし激しく音はする。
妙だな、と思いながら、みんなで角を曲がった。
誰もいない。
何もない。
……えぇ? と顔を見合わせた。気づけば音も消えている。さっきまであんなにうるさかったのに……
マンションのそばまで来た。
だが、工事音の件で完全に萎縮してしまっていた。離れた場所に隠れるようにして、マンションと集合ポストを伺う。
Aさんはまた、いくつもの視線を感じた。マンションからなのかどこからなのか、たくさんの人間から見つめられている気がしてならない。
と、言い出した奴が、「じゃあいいよ、俺一人で見てくるから」と抜け出た。「やめとけよ……」と全員が言ったが、どんどん歩いていく。
彼は集合ポストにたどり着いて、貼り紙を見た。それから個別のポストをしげしげと見つめる。確かに部屋番号がないな、と確認している。
いきなり、ポストの口のひとつに手を突っ込んだ。
「おい!」「ちょっと!」と言う間もなく手を引き出した。指先に、郵便物を挟んでいる。封筒のようだった
「あいつ何やってんだよ……」と全員で呆れながら眺めていると、様子がおかしくなった。
彼が封筒を見る。「え?」という顔になる。その封筒を元の箱に投函し直し、別の箱にまた手を突っ込んだ。またぞろ指先に、郵便物を挟んでいる。それを見る。また「え?」という顔になる……
「おい! おい!」「やめろよバカ!」「戻ってこいって!」できるだけ小さな大声で彼を呼ぶ。すると彼は不思議そうな顔をしてこちらに戻ってきた。
軽犯罪なので軽く叱ってから、Aくんが「で、どんな風になってたんだ? 郵便」と聞いた。
「名前が全部消されてた」
そう答えた。
「郵便物はさ、水道代とか電気代とかの請求書か何かなんだけど、
住所はそのままで、名前の部分だけさ、黒く塗られて消されてるんだよ。
差出人が消すわけないし、管理人が届いた後で全部消してるのか?
黒いペンで、機械でシュッ、としたみたいに、綺麗にさ…………」
そう話していると、マンションのエスカレーターの扉が開いた。
思わず全員そちらに目をやると、若い男がひとり、ゆっくりと出てくるところだった。
男は、松葉杖をついていた。
こちらに歩いてくる。
郵便の覗き見は目撃されていないだろうが、こんな場所にたむろしていたら明らかに怪しい。まずい。
ちょうどすぐそばに自販機がある。あそこで飲み物を買って、散歩していた大学生が喉が渇いてジュースを買って飲んでいる、みたいなムードを出そう。
松葉杖の男を意識しないように自販機に向かい、各々適当な飲み物を買い、立ったままなりどこかに寄りかかるなりして、ごく自然な態度を装った。
松葉杖の男はコツコツ音を立てながら歩いてきた。自販機の前を通りすぎる、かと思ったが、止まった。
止まって、郵便物を抜き出した友達の顔をじいっ、と見ている。
声をかけるわけにもいかず、自然を装った態度を崩すこともできない。
「名前が、ないのが、そんなに、おかしいのかい」
男はだしぬけにそう言った。
郵便を見た友達が思わず、「あっ……はい…………」と答えた。
「そういう、個人、個人というものはね、
1つの集団になってしまえば、
まったく、全然、不要なものなのだと、
君も大人になったらわかるよ」
わけがわからなかった。
静かにそう言った男は、その場を去っていく。
震えながらその後ろ姿を注視していると、数歩歩くたびにこちらを振り向く。
ウッと息が止まったが、Aさんたちを見ているわけではなかった。誰かに肩を叩かれて振り向いている、そんな様子だった。
数歩歩いては、気づいたように振り返る、歩いては、振り返る。時折「うふッ」「あはッ」と嬉しそうに少し笑う。恋人にいたずらされているような、そんな微笑みだった。
男が遠くに行ったあと、Aさんたちは逃げるようにしてその場を離れた。
しばらくは何事もなかった。あの地域だけは避けていたが、Aさんはごく普通に大学に通い、サークル活動などにいそしんだ。
そんなある日、サークルの部室に行くと、部屋が静まり返っている。いつもはダラけた姿で座っている同学年の奴らも先輩も、重苦しい顔つきで立ったままである。
部室の中央のテーブル、そのそばの椅子に、あの彼が、郵便物を確認して男に声をかけられた彼が座っている。
彼は泣いていた。
「どうしよう……どうしよう…………」
誰に聞かせるでもなくそう呟きながら泣いている。
どうした、と聞いた。彼は涙を拭きながら、脇にどけてあった封筒やハガキを押し出した。
「これ……ウチに来た……郵便…………」
宛名が真っ黒に塗り潰されていた。
「俺の住んでるアパート、あいつ、あいつら、知ってるんだよ。なんで……
何で知ってるんだよ……後ろから来ないか、気をつけて帰ったのに……
他の部屋の奴らに聞いても、黒塗りなんかされてないんだよ……
俺だけなんでバレてるんだよ……どうしたらいいんだよ……ヤバイよ……」
「……お前ら、お前らさ、そういうことがあったら、俺に聞くべきだったんだよ」
窓際に立っている先輩が突然、震え声でそう切り出した。いつもは明るく楽しい先輩なのに、顔がひきつっている。指に挟んだタバコが小刻みに揺れていた。
「先輩、なんか……なんか知ってるんですか…………?」
「あのマンション、やべーんだよ。本当にやべーんだよ。ダメなんだよあそこ。
む、昔はな、建設会社の社宅だかが入ってたんだよ。普通の社宅だよ。
それがさぁ、会社の研修だかで、や、山奥にあるさ、建物に泊まったんだと。
そこな、以前は宗教だかセミナーの、変なグループの建物だったそうでな。
そこに泊まって帰ってきてから、み、みんなおかしくなったらしいんだよ。
どうおかしいのか、詳しくは知らないんだけどさ、なんか、聞いた話だと。
『指5本全部なくしても笑ってる』みたいなおかしさなんだってよ。
あいつら、住人、みんなケガしてただろ。腕とか足とか顔とか。
それ治るだろ。そうするとさ、またどこかケガするんだよ。新しくさ。
医者には来るらしいよ。治療も受けるんだよ。でも、治るとまたケガだよ。
病気とかそういうので受診はしないんだってよ。ぜ、全部、外傷なんだよ。
おかしいだろ。でも事件性はない、ってさ、警察も、動かないんだよ。
近隣とのトラブルも、一切ないんだよ。だから表面上はただの社宅だよ。
し、社宅つってもさ、あいつら、働いてないんだよ。でも家賃は払ってる。
水道や電気代も払ってるらしいんだよ。どうやってんだよ。おかしいんだよ。
で、でな、ここ何年とかでさ、こ、こらへんの、大学生とかフリーターとか、
ホ、ホームレスとかさ、何人も行方不明になってんだよ。蒸発だよ蒸発。
し、しかもさ、消えた奴らって、あのマンションの奴らと話したとかさ、
あ、あそこにチラシ入れたとか、関わりのある奴ばっかりなんだよ。
俺の知り合いもいなくなってさ、調べようとしたけど、やめたんだよ怖くて。
あそこはダメなんだよ、やべーんだよ、お前らホントさ……なんで……」
郵便を盗み見た奴はただどうしよう、どうしよう、と泣いている。
幸いなことに、大学の夏休みが近かった。
先輩から「とりあえずすぐに実家に帰って、休み明けにすぐ引っ越した方がいい」と忠告され、郵便の子はハイ、ハイ、と頷きながら聞いて、帰宅した。
夏休みに入った。彼のスマホの番号は知っていたが、Aくんはどことなく怖くて、夏休み中、連絡をとらなかった。どこかで「奴ら」に聞かれでもしたら、とも思っていた。
長い長い夏休みが終わった。新学期が始まる。説明会などがあるので学生たちは全員、大学に集まった。Aさんももちろん出向いた。
来ていない。
郵便物を抜き出した、住人に話しかけられた、あの彼が来ていない。
電話をかけるが、誰も出ない。メールを送るが、返事が来ない。
そんな、まさか、と友人知人の間に恐れが走った。いやしかし、実家から帰ってきていないのかもしれない。とりあえず数人で、彼のアパートに行ってみることにした。
彼のアパートは、集合ポストがあり、部屋のドアにもポストがついている。部屋まで行った。
「うっ…………」
部屋のドアについたポストの口に、郵便物がみっしり、花束のように詰まっていた。
宛名は全て黒く塗り潰されていた。
ドアの前で改めて電話をかける。出ない。室内からは呼び出し音もしないし、人がいる気配もない。おいいるのか? とひとりがドアノブを回すと、ドアが開いた。
「カギ、かかってない……」
おそるおそるドアを開けると、全員でそっと、部屋の中を覗いた。
部屋は綺麗だった。綺麗に掃除されていた。男の大学生の独り暮らしにしては綺麗すぎるくらいだった。
やっぱりまだ帰ってないのかな、と足を踏み入れて、ぐるりを見渡す。どこの乱れもなく、きちんと整理整頓されている。
しかしこれは、整頓されすぎていないだろうか? そう思った。「早めに実家に帰った方がいい」と言われたのだから、もう少し慌てた痕跡があってもよさそうだ。それがない。
居間にテーブルがあった。そこにメモが置いてある。
広告か何かをひきちぎったような紙に、「ただいま 留守にしています」と走り書きで記してある。
おかしい。なぜ室内にこんな雑な置き手紙を残していくのか。しかもその紙は、画鋲でガッチリとテーブルに止めてある。ますますおかしい……
と、その置き手紙の下に、もう一枚紙が残されていた。「090」で始まる、11ケタの数字だった。彼の電話番号ではない。
「……これ……これが……連絡先、ってこと……?」
ここに電話をかけなければならない、と全員が思った。しかし誰もかけたくなかった。
「……よし、わかった」例の先輩が口火を切った。
「俺の、俺のスマホを使ってもいい。それで後で何があっても俺が泥をかぶる。でも電話をかけるのは、頼むから、誰かやってくれないか……」
Aさんが、「自分がかけます」と手を上げた。そもそもの原因は自分にある、とひどく責任を感じていた。
Aさんは怯えながら、090……と押していく。
1コール目、2コール目……5、6コール目で、誰かが出た。
「…………もしもし?」
「…………おおォ」
友人の声だった。
「いや、夏休み中に連絡しなかったからさ」
「おお、ひさしぶりだなァ」
「お前今日さ、大学来なかったじゃん」
「うん、でも元気だよ。俺は元気だよ」
「で、今お前の部屋にいるんだけど、ポストに封筒が刺さってて、」
「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは。そうだよなァ」
「………………それで今、お前、どこにいるんだ?」
「俺? 俺はさァ、いま、遠いところにいるよ」
遠いところ?
と、彼らのいるアパートの近くを救急車が通った。すると、電話の向こうからも救急車の音が遠く聞こえてきた。
いる。近くにいる。
もしかしたら、あのマンションに。
そして、外の音が聞こえたということは、普通にスマホを耳に当てて話しているのではない。
そういえば声に奥行きがある。広がって聞こえる。どうやらスピーカーフォンを使っているらしい。
「お前まさか、あのマンションに」
「ウーン、まぁ物理的には近いんだけど、実際にはすごーく離れてるんだ。
まぁこれは、お前らなんかに言っても簡単にはわからないだろうけどなァ」
「……なに? 何言ってんだお前……」
「いやぁ、俺もいろいろあったけどさぁ、やーっとわかったんだよ……
やっとわかったんだよなぁ、いろんなことがわかったんだよ、うん……
……わかった!! わかりましたよおおおおおお!!!!!!」
その瞬間、向こうのスマホの周りで、十数人の男たちがドッ、と笑う声がした。
ゲラゲラ笑っている。嬉しそうに笑っている。あっはっはっはっはっはっは、と愉快そうに笑っている。
それに混じって、
「でもさァ若いからって頑張りすぎだよォ」
「ムチャするよねェ」
そんな言葉が聞こえた。
「お前……周りに誰かいるのか?」
「うん、いるよ」
「な、なんでいるんだよ?」
「今さぁ、電話機持ってるの、俺じゃないからさァ」
「な、なんで電話機持ってないんだよ?」
「俺さァ、今、
手で電話持てなくなっちゃってるんだよォ」
思わず、Aさんは電話を切った。
どうだった、と聞かれても、数秒反応できなかった。やっと電話の内容を話すと、全員が言葉を失った。
とりあえず部屋を出て、できるだけ雰囲気の明るい喫茶店に逃げ込むように入った。気持ちがどん底まで沈んでいた。
そこに女の子がひとり来た。仲間の誰かがどうにかして空気を軽くするために呼んだ知り合いらしい。
そんなことに女の子を呼ぶのも……と心苦しくあったが、ほぼ部外者である人物に話を聞いてもらうだけでも、と考えると、ありがたく思えた。
話を終えたが、女の子はさほど怖がっていない。むしろどこか、なるほどなと納得しているような表情を浮かべる。それから口を開いた。
「私、宗教学とか民俗学とかやってるんだけど、そういうの『ある』んだよね。
体を傷つけたり失ったりすることで、神様に近づく、みたいな考え方……」
それから、いなくなった彼は戻ってこなかった。
無人になった彼のアパートは引き払われた。親御さんが捜索願いを出したか、それはわからない。
卒業後、先輩もAさんも、これを知る仲間も、その地域には就職などせず、地元に帰ったり別の都市に移り住んだりした。そうせざるを得なかった。
「…………そういうことがあったので、僕は実家方面に就職したんです。もうあそこに行くことはないです。絶対に、近づきもしません」
Aさんは、そう繰り返すのだった。
(結)
★本記事は、無料ツイキャス「禍話(まがばなし)」、禍話R第9夜より、編集・再構成してお送りしました。
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