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【怖い話】 古着屋の別人 【「禍話」リライト 掌編③】
古着屋巡りが好きなAさんが体験した、短くて、ちょっと変な話。
恋人と一緒に出向いた店で、いい感じのシャツがあった。
「おっ、これよくない?」
「いいじゃん。着てみなよ」
恋人にも勧められたので、店員さんに試着室の場所を聞いた。
中に入ってカーテンを閉める。
袖を通して、頭をスポッとくぐらせて、さてどうかな? と鏡に目をやった。
鏡の中に、そのシャツを着た見知らぬ男が立っていた。
「うわあっ!?」
叫んでカーテンを開けた。外で待っていた恋人に思わず、
「おっ、俺がいない!」
そう言うと、「ちょっ……いきなり何? 静かにしてよ……」と叱られた。
「いや、だって、ほら」
振り返った鏡の中には、いつもの自分しかいなかった。
彼女や、店内の他の客はAさんを白い目で見ている。
「で、でもさぁ……」
居心地が悪くなり目を泳がせると、さっきの店員がこっちを見ていた。
どことなく、「すいませんね……」と言いたげな、申し訳なさそうな顔つきだったという。
「ですからねぇ、あの試着室がヤバいんだと思うんですよ。絶対そうですよ」
なので、そのシャツは買って帰った。
「いや、いい感じだったんで……安かったし……」
よく着ているが今のところ、何も起きていないそうである。
【完】
☆本記事は、無料&著作権フリーの怖い話ツイキャス「禍話」、
禍話インフィニティ 第十四夜 より、編集・再構成してお送りしました。
★禍話については、こちらもボランティア運営で無料の「禍話wiki」をご覧ください……
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