機械不良市街大戦〈マシンヤンキーシティーウォー〉
「10年早ェんだよ!」とは言った。
だが10年後“から”、10年早く来るとは思わなかった。
登校途中に落ちてきたデカい金属の中から出てきたのは三日前にボコった橋本。
「三沢ァ! 言われた通り10年早く来たぜェッ!」
顔だけ橋本で他は橋本じゃない。全身銀色2mのメタルボディに学ラン。
「何だテメー? シルバーでキメやがってよォ?」
凄んだダチの吉田が奴の蹴りでブッ飛ぶ。3mの距離、橋本の足が伸びた。
「見たかよテメー? 工業高校ナメんじゃねぇぞ?」
「あんだコラァ! 武器使ってンじゃねェ!」俺が叫ぶと、
「バッカヤロー武器じゃねぇよ! 改造した自分の体だよ!」と返事。
何か言おうとしたらグーパンチが飛んできて俺はギリでよけた。
「手も伸びるようになったからよォ!」
ふざけんな。工業高校でいきなりこんなもんが作れるか。
俺はデカい金属を見た。10年後とか言ってたから、あれで未来から来たんだ。
足下の砂を掴んで橋本に投げた。「わっ! ブ!」とひるんだ隙に金属に乗り込んでドアを閉めた。
「テメー俺のマシンだぞ!」と橋本が叫ぶのを無視。俺は「GO」と書かれたボタンを叩き押した。
揺れた。衝撃。着いた。
ドアを開けると俺の住んでる町が超グチャグチャになっていた。
「来たなオイ」
声がした。すぐ横に年上のチンピラがいた。誰かに似ている。毎朝洗面所の鏡に写る顔だ。
「お前、俺?」
「そーだよ未来のオメーだよ。オメーが橋本をほっぽってきたせいでよ、世界がマジヤベーことになったんだよ」
未来の俺はマシンを指す。
「乗れや。すぐ10年前に戻って、橋本シメんぞ」
「おい、あの橋本とやれんのか?」
「やれるに決まってンだろ、見てみ?」
でかい音を立てて未来の俺の胸と腹と足が開いた。
「ミサイルとかメッチャつけたから。ヤベーぜ?」
「ずりぃぞ! 俺にもなんか武器つけろや!」
「時間ねぇんだ。これだけやるわ」
黄色いペンみたいなのをくれた。
「何だこれ」
「核」
「あ?」
「核」