【怖い話】 生放送にて 【「禍話」リライト 超番外編】
これは、あるツイキャス(Twitterアカウントと機材があれば誰でもできる生放送)で起きた不思議な出来事である。
記録として、ここに書き留めておきたい。
時は2020年2月15日の23時。そう、つい2時間半前。
現場は怖い話ツイキャス「禍話」、通算142回目の生放送。
語り手は九州に住む「かぁなっき」さん。毎週毎週、収集したオリジナルのすげぇ怖い話を、軽妙に笑いを挟みながら語ってくれてしかも完全無料という太っ腹なツイキャス(音声のみの放送)なのだが、今夜の放送はいつもと事情が違った。
まず、いつも参加してくれる後輩の佐藤実さんや、同じく後輩の加藤よしきさん(Twitterでは「ビデオ試写室」のアイコンと映画レビューでおなじみの、あの加藤さんです)が、今夜は来れない。
他の知人や後輩を呼ぶこともできず、今夜は久しぶりに、かぁなっきさん一人きりの放送になってしまっていた。
それだけでもいつもと違う状況なのだが、今夜はさらにおかしかった。
開始直後から、生放送の音がブツブツ途切れたり、妙な声がしたり、早送りのような速度になったりするのである
(当方[筆者]のスマホでも同様の現象が起きていた)
とは言え142回も放送をしていると、そういうことはたまにある。
土曜の夜だから電波が混みあっているのか、天気のせいで通信状況が悪いのか……とにかくさほど珍しいことではない。
「ブツブツ言う」「途切れます」などとの文言が並ぶコメント欄を見て、かぁなっきさんも最初のうちは
「いないからかな? 2人(加藤よしきさん・佐藤実くん)が?」
「(Wi-Fiも)4つついてる!」
「ということは、後で録音を聞いた方がいい!」
「うちのパソコンの画面もね、ゆっくりになってますから」
などといつものように軽く流していた。
と。
かぁなっきさんが冗談半分のように、
「もしコレでね! これでノイズがなくなったらイヤだね!」
「これは……どっち? どっち? これ?」
と言いながら何か小さく作業をした。
すると、かなりノイズが減る。
「どうですか?」とかぁなっきさんが言うと、「よくなりました」「改善しましたけどまだプツプツ言います」「そこそこ聞こえます」などのコメントがずらりと並んだ。
それを見たかぁなっきさんは、にわかにうろたえた。
手数が多く、立板に水のような喋りで楽しませてくれる方なのだが、
「えー? ……マジで? マジで?」
「え? 皆さんそれ“盛ってる”でしょ? 合わせてくれてるでしょ?」
「えぇ? マジか? えぇー……」
と、なかば言葉を失っている。
どうしたのだろう、と私を含めたリスナーが固唾を飲んでいると、彼はこう言った。
「えーとねぇ、あのねぇ、今ねぇ、(怖い話)一個全部消したんですよ。もらったメモを携帯から全部消したんですよ」
「えー、やっぱアレ、無理かぁ……そうか……」
我々リスナーも「えぇ……」とコメントにならないコメントを残すしかない。
それでもまだ少なからずノイズが走る。環境によっては、まだブツブツ途切れているとの言葉が流れる。
「まだダメですね」などのコメントを見ていたかぁなっきさんは、
「まだブツブツ言うんだ……」
「……じゃあコレ消すかっ?」
「これ消したら全然話すモノないんですけどね!」
と笑いながら、再び何か作業をした。
すると、雑音がまるっきりなくなり、いつものクリアな音声になった。
直った、大丈夫です、完全に直りました、などのコメントが並ぶのを見たかぁなっきさんは「ええっ? うわー……」とテンションが下がった。
「…………ということで、禍ホーム(※家にまつわる怖い話の別称)、2つとも消しました」
「しかもねぇ、その話、話すと夢に出るんですよ。私も実際見て、今若干、熱っぽいんですけど」
「2つとも消した瞬間にみんな『あー直った直った直った』って……」
「ちなみにね、ちょっと待ってくださいね、って言ってから、パソコンもWi-Fiも一切いじってないですから」
「えー、マジで? マジで? 『マジで』ってしか言ってないですけど……」
「メッチャ怖いんすけど……うーわ、ウーエッ……やっぱよくなかったんだアレ……」
「ヤバいらしい話」を2つ消したあとは、少なくとも当方のスマホでは目立った雑音や「早送り」現象は起きることはなかった。
そういう現象が、今夜の生放送で起きたのである。
しかし…………
一番恐ろしいのは、こんなことがあってからも普通に1時間、他の怖い話をきっちりしたことである。
剛の者、としか言いようがない。
…………その放送の録音が残っているのですが、それはどうなってるのかって? 雑音は聴こえるのかって?
では、是非、 こちらから 聴いてみてください…………
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【終】
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