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【怖い話】 赤いランドセル 【「禍話」リライト 掌編⑩】

 本当によくない話だと、話す前から「ヤバい」とわかるらしい。
 そんな短いお話。


 仲間内で世間話をしていて、怖い体験を語る流れになった。
 金縛りとか、変な人に付きまとわれたとか、そういう話が続く。

 ある女性が「あ、そういえば」と声を上げた。

「ちょうど昨日の夜なんだけどさ、なんかスッゴい怖い夢見ちゃって」

 顔をしかめながら言う。よほど怖かったらしい。
 どんな夢だったの、と聞くと、

「あのね……赤いランドセルを背負った女の子に、ずうっと追いかけられる夢なんだけど、」

 ここまで言って、「うわっ。あぁ怖ぁっ! 思い出すだけでゾッとしちゃう」と身をすくませた。

 え、どんなシチュエーション? 
 女の子ってどんな感じの? 
 場所は? どこで追いかけられたの?
 最後はどうなったの?

 みんなが口々に質問しても、

「あーヤダヤダ、鳥肌立つ。ゴメン、マジで怖くて話せなくなっちゃった。言い出したの私なのにね。ゴメンね」
 と謝るばかりだった。


 エーッ気になるぅ~、と不満の声が上がる。
 それでも女性は「いやもう、本当に怖くてさぁ」と頑なに話そうとしない。

 そのうちひとりの男が
「何だよ~もったいぶって! 話してよ!」
 と言いながら、左手で女の子を指さした。


 ばちんっ


 男のしていた腕時計のバンドが、音を立てて吹き飛んだ。

 話の場がしぃん、となった。
 少し経ってから、男は床に落ちた腕時計を拾った。
 簡単にちぎれるようなバンドではないのは、誰が見てもわかる。

 それから十秒くらいしてから、まったく別の明るい話題に切り替わった。


 赤いランドセルの夢の話は、それっきりだという。




【完】




☆本記事は、無料&著作権フリーの怖い話ツイキャス「禍話」、
 真・禍話 第二夜
 より、編集・再構成してお送りしました。


★禍話についての情報は、リスナーのあるまさんに建造していただき、現在は聞き手の加藤よしきさんに引き継がれた「禍話wiki」をご覧ください。
 これまでの300回オーバー、3000話越えの全放送アーカイブ収録。タイトル検索可。
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