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2024年八王子市長選挙レポート
八王子市長選挙が1月14日告示された。
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3期務めた石森孝志市長(66)が引退。新人5人の争いとなった。1月21日の投票日に向けて激しい選挙戦となった。
◆八王子市長選挙立候補者
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八王子市長選挙に立候補したのは次の5人。
滝田 泰彦 41 無所属・新(立憲民主党、共産党、社民党、生活者ネット、新社会党支持)
両角 穣 61 無所属・新
初宿 和夫 59 無所属・新(自民党、公明党推薦)
服部 貴之 40 無所属・新
鎌田 孝之 58 無所属・新
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石森孝志市長は初宿和夫候補を後継指名。「初宿」は「しやけ」と読む難読漢字。さっそく出陣式で自民党の茂木幹事長が「しけや」と名前を間違えたらしい。八王子市は自民党の萩生田光一・前政調会長のお膝元だが、安倍派の政治資金パーティー裏金問題がどう選挙戦に影響するか。
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2021年の都議選で、八王子市では都民ファーストの会の滝田泰彦都議と、両角穣都議が揃って落選した。その両氏が今度は市長選で激突することになる。野党各党は滝田泰彦・前都議を支援している。両角穣・前都議は上田令子都議率いる自由を守る会が支援する。
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都民ファーストの会創設者の小池百合子都知事はどう動くのか。一説には、江東区長選挙で自民党が小池都知事の側近の大久保朋果・現区長を支援する見返りに、八王子市長選では候補者を応援しない取り決めがあったのだという。ところが、小池都知事は自民党の初宿候補の応援に立ったのである。
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服部貴之候補は、昨年の市議選に立候補して落選している。「民間経験を生かしたい」と語っている。
鎌田孝之候補は派遣社員。選挙公報も見たが何をしたいのかわからない。
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◆八王子市長選挙ウォッチ
八王子市長選挙をウォッチした。
八王子駅で下車。滝田泰彦・元都議陣営の街宣が始まった。候補者本人はまだおなかったが、野党各党が推す「超党派候補」ということで各党の関係者が応援演説に立っていた。
まずは八王子選出の青柳有希子・共産党都議。
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続いて、都民ファーストの会の高橋剛・八王子市議。
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都民ファーストの会は、滝田泰彦候補以外にも元所属議員の両角穣候補が市長選に立候補している。さらに創設者・小池百合子都知事は、与党系の初宿和夫候補の応援演説に立つなど、陣営が3分裂。そのため、党としては特定の候補者を推薦していない。高橋市議は個人として応援しているのだろう。昨年の市議選でも滝田元都議は高橋候補の応援をしていた。
続いて、生活者ネットワークや社民党の元市議らが演説に立った。
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ようやく滝田泰彦候補自身が到着。
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すると小さな子供が駆け寄って来た。どうやら滝田候補の息子らしい。
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選挙戦が始まり忙しくて構ってあげられないので寂しかったらしい。
滝田泰彦候補は、「神輿に乗るのではなく、みんなで神輿を担ぐ政治家を目指す」と語っていたが、彼自身が野党各党の神輿になっているのではないかと思ってしまった。
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滝田陣営の演説の最中に、両角穣候補の街宣が到着し、ニアミスに。候補者がかち合った場合、お互いに声をかけたりする様子は普通に見られるが、ここではまったく声をかけたりしない。それぞれの街宣でもお互いについて触れることはなかった。滝田候補と両角候補はもともとは都民ファーストの会の盟友であるが、確執は相当に深いのではないだろうか。
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右の奥にいるのが上田令子・都議
超党派の滝田候補の街宣に、大勢の支援者につめかけていたのと対照的に、「完全無所属」の両角候補の聴衆はまばらであった。
陣営の中に江戸川区選出の上田令子都議がいた。両角候補を応援しているようだ。ただし、彼女の率いる「自由を守る会」の推薦ではなく、「完全無所属」なのであくまで個人で応援しているとのこと。
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多摩地区では昨年から立川市長選、立川市議補選、青梅市長選挙と与党系の候補者が相次いで破れている。ここ八王子も、地元選出の萩生田光一代議士が現在疑惑の最中にいる。与党には逆風となっている。かといって迎え撃つ野党系も一枚岩ではない。都民ファーストの会が3つに分裂しており、ますます激戦に拍車がかかった。最後の最後まで情勢の見通しが利かない状態である。
◆2020年八王子市長選挙結果
2020年1月19日に投開票された八王子市長選挙の結果は次の通りであった。
当選78,372石森 孝志 62 無所属・現③(自民党、公明党、国民民主党、生活者ネット、新社会党推薦)
47,426白神優理子 36 無所属・新(立憲民主党、共産党推薦)
15,602高木 順一 65 無所属・新
3,403小柳 次郎 54 しょぼい政党・新
現職で与党系の石森孝志市長が、野党系の白神優理子候補を大差で下して3選を決めている。
◆八王子市長選挙開票結果
八王子市長選挙が1月21日投開票された。
結果は次の通り。
当選63,838初宿 和夫 59 無所属・新(自民党、公明党推薦、東京維新の会支援)
57,193滝田 泰彦 41 無所属・新(立憲民主党、共産党、社民党、生活者ネット、新社会党支持)
44,913両角 穣 61 無所属・新
10.292服部 隆之 40 無所属・新
2,276鎌田 孝之 58 無所属・新
投票率は38.66%。前回の31.46%は超えたものの、相変わらず低い水準で、関心の低さが問題である。
激戦の末に石森孝志市長の後継の宿和夫候補が初当選を決めた。初宿候補は与党に加え、投票2日前になって急遽、東京維新の会が支援を決定。また、小池百合子・東京都知事も応援演説に立った。これらの支持を集め、競り勝った。
事前の予想では、野党系の滝田泰彦候補優勢が伝えられていた。実際、出口調査では滝口候補がリードしていたようだ。しかし蓋を開けてみると、接戦の末に競り負けている。
完全無所属の両角穣候補も健闘した。滝田候補と合わせれば初宿候補を上回っていただけに、野党系の分裂は痛かった。両角候補は2022年に都民ファーストの会を離党し、日本維新の会の阿部司代議士の政策担当秘書として活動していた。そのため維新とは親和性が高く、地元の維新関係者が両角候補を支援していたとも言われる。それが、投票直前に東京維新の会が初宿候補支援を表明。完全に梯子を降ろされた形となった。ひょっとしたら、両角候補は滝田候補への刺客としての意味合いが大きかったのではないだろうか。両角候補の立候補によって都民ファーストの会支持票が滝田候補と分断される。それが終盤に初宿候補劣勢という流れを受けて、急遽維新が初宿候補支援に転向したのかもしれない。魑魅魍魎蠢く政界では十分あり得そうな話である。
もともと八王子市は与党が盤石で、地元選出の萩生田光一・元自民党政調会長は2021年総選挙で6割近い得票を挙げていた。ところが今回、初宿候補の得票は3割5分に留まっている。萩生田代議士の政治資金パーティをめぐる裏金問題に発する政治不信の影響は決して小さくなかったようだ。
当選した初宿和夫・新市長には、こうした政治不信を払拭する、しっかりとした市政運営を行なってもらいたいと願う。