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2022年杉並区長選挙・区議会議員補欠選挙レポート
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6月12日、東京都杉並区長選挙が告示された。4年前は私も区長選をウォッチしており、当選した田中良区長や有力な対立候補だった野党系の三浦佑哉候補と会うことが出来た。残念ながら今回の区長選はコロナ禍ということもあり、十分にウォッチすることが出来なかった。しかし、4年前以上の激戦の末、意外な結果がもたらされることとなった。
◆杉並区長選挙立候補者
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杉並区長選挙に立候補したのは次の3人。
田中裕太郎 46 無所属・新
田中 良 61 無所属・現
岸本 聡子 47 無所属・新(立憲民主党、共産党、れいわ新撰組、社民党、生活者ネット、新社会党、緑の党推薦)
4選を狙う現職の田中良区長に、2人の新人が挑む。
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4年前は自主投票ながら実質的に田中区長を支持していた立憲民主党、社民党、生活者ネットが今回は岸本聡子候補を推薦している。
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また、田中裕太郎候補が3期務めた区議を辞職して出馬。保守系で、初当選時は自民党の公認だった。
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田中良区長は杉並区議、都議を経て2010年区長選に民主党、社民党の推薦で立候補して初当選。その後、自民党の支持も取り付けオール与党体制で2度区長の座を守ってきた。前回2018年区長選も、野党系の候補者にダブルスコアで圧勝している。このところ、田中区長には政治資金問題や公用車の不正使用疑惑、あるいはパワハラ・セクハラなど様々な疑惑が湧出しているものの、今回も最有力候補であることは否めない。
だが、昨年の総選挙で杉並区の大半が属する東京8区では、野党系の吉田晴美候補が自民党の重鎮・石原伸晃元幹事長を破っている。また、2018年6月には隣の中野区長選挙で野党系の酒井直人候補が与党系の現職・田中大輔区長を破った。その酒井区長は2022年6月の区長選でも再選を果たしたばかりである。もしかしたらということも十分にあり得る。
◆杉並区議補選立候補者
今回の区長選挙に合わせて区議会議員補欠選挙も告示された。立憲民主党の関口健太郎区議が都議選出馬(当選)に伴い辞職したことによるもの。定数1に元職2名を含む9名が立候補する激戦となった。
候補者は次の通り。
松本 浩一 41 立憲民主党・新
鈴木 千鶴 51 維新の会・新
増田 幸枝 52 共産党・新
逸見 純一 31 自民党・新
増田 裕一 45 無所属・元
小林華弥子 54 無所属・新
倉本 美香 29 無所属・新(自由を守る会推薦)
佐々木 浩 57 無所属・元
宇田川祐治 38 都民ファーストの会・新
自民党はもともとは税理士の白井すみこ氏を公募により擁立の予定であったが、5月下旬に突然立候補辞退となった。そのため急遽石原伸晃・前代議士の秘書だった逸見純一候補を擁立した。
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立憲民主党の松本浩一候補は早稲田大学ラグビー部出身。3年前の杉並区議選に自由党から立候補して落選している。区長選と異なり、区議補選は野党系の候補が乱立した。
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共産党からは増田幸枝候補が立候補。
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日本維新の会からは鈴木千鶴候補。3児の母ということだが、増田候補、小林華弥子候補といずれも子育て世代の女性候補が目立っている。
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その小林華弥子候補は元大分県由布市議(3期)・湯布院町議。エジプト生まれだが、杉並区は小学校以降を過ごした“故郷”とのことで、今後は杉並区で活動していくつもりなのだろう。選挙公報を見ると、「無所属区民派」所属の結柴誠一区議と新城節子区議が支援している。共に中核派を母体とする「都政を革新する会」出身。また、社民党出身の保坂展人・世田谷区長らも支援しているようで、左派色の強い候補のようだ。
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29歳と最年少の倉本美香候補は上田令子都議率いる自由を守る会が推薦している。自由を守る会は統一地方選では生田尚史候補を擁立していたが、最下位で落選するという惨敗ぶりを見せていたため、候補者差し替えとなったのだろう。
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都民ファーストの会からは宇田川祐治候補。茜ヶ久保嘉代子都議の元秘書とのこと。都民ファーストの会は昨年の都議選で杉並区ではその茜ヶ久保都議がトップ当選している。
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また、元区議が2名無所属で立候補している。佐々木浩候補は、区議を5期務めているが、前回落選。2014年の区長選にも出馬し次点となっている。過去に日本創新党から立候補してこともあるように、山田宏・前杉並区長と近い関係にあるようだ。
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増田裕一候補は民主党出身。区議を3期務めるも、前回は国民民主党から立候補して落選している。
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杉並区議会は来年の統一地方選で再び改選を迎えることになる。今回、候補者が乱立した背景には、来年の区議選に向けて知名度を向上したいという目的があるのだろう。
◆杉並区長選・区議補選ウォッチ
杉並区長選・区議補選をウォッチするために高円寺駅を訪ねた。
南口に区長候補の田中裕太郎・前区議がいた。なんと和服姿である。日本の歴史や文化の大切さを伝えるために議会でも和服でいるのだという。元幼稚園教師で、劇作家としても活動しているそうだ。
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日の丸に「杉並をセンタク致し候」と記した幟を使用している辺り、極右の人物なのではないかと思わせる。
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実際、田中裕太郎候補のすぐ横では佐々木千夏・杉並区議がビラを配っている。佐々木区議は2018年区議選にNHKから国民を守る党公認で当選後、離党している。佐々木区議はヘイトスピーチ等でも知られる極右議員なのである。他にも自民党の吉田愛区議や、立石晴康・元都議も田中裕太郎候補を支援しているようで、保守系であることをアピールしていた。
田中裕太郎候補はまた、岸本聡子候補が20年以上に渡って海外(ベルギー)在住であったことを批判していた。
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高円寺駅ではもう1人、区議補選に立候補していた小林華弥子・元大分県由布市議に会うことが出来た。
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◆前回投票結果
当選73,233(50.30%)田中 良 57 無所属・現
37,067(25.46%)三浦 佑哉 34 無所属・新(共産党、新社会党、緑の党推薦)
29,806(20.47%)木梨 盛祥 68 無所属・新
5,467( 3.75%)南 俊輔 33 無所属・新
前回2018年6月17日の投票結果は、田中良区長が他の3人の候補を抑えて圧勝している。
共産党こそ弁護士の三浦佑哉候補を支援したが、他の政党・会派は田中区長を支援するオール与党体制で磐石であった。ところが、今回は立憲民主党、社民党、生活者ネットが岸本聡子候補の支援に回っている。さらに、自民党や保守系議員の一部が田中裕太郎候補を支援している。田中区長は左右双方から刺客を立てられた形となっている。なお、前回は対立候補だった木梨盛祥・区議は今回は田中裕太郎候補を支援している。
◆杉並区長選挙結果
杉並区長選・区議補選は6月19日に投票され。翌20日に開票された。
区長選の投票率は37.52%で、前回の32.02%は上回った。
開票結果は次の通り。
当選76,743岸本 聡子 47 無所属・新(立憲民主党、共産党、れいわ新撰組、社民党、生活者ネット、新社会党、緑の党推薦)
76,556田中 良 61 無所属・現
19,487田中裕太郎 46 無所属・新
なんと187票差という接戦で岸本聡子候補が田中良区長を下した。
都内で現職の区長が落選するというのは、区長公選制が復活した1975年以降では、1975年の世田谷区長選、1991年の新宿区長選、1999年の杉並区長選、2018年中野区長選に続いて5例目という極めて珍しい事態である。杉並区では1999年に山田宏・元代議士が現職の本橋保正区長を破って当選しているが、杉並区は2度現職区長が敗れた初の自治体となった。
当選した岸本聡子候補は杉並区初の女性区長となる。東京都区部全体でも、中山弘子・元新宿区長、近藤弥生・足立区長に次ぐ3人目の女性区長ということだ。
◆杉並区議補選開票結果
一方の区議補選は投票率37.51%となった。
開票結果は次の通り。
当選26,879逸見 純一 31 自民党・新
25,181増田 幸枝 52 共産党・新
22,631倉本 美香 29 無所属・新
21,076松本 浩一 41 立憲民主党・新
20,609宇田川祐治 38 都民ファーストの会・新
16,471鈴木 千鶴 51 維新の会・新
13,836小林華弥子 54 無所属・新
12,160佐々木 浩 57 無所属・元
10,407増田 裕一 45 無所属・元
激戦を制したのは自民党の逸見候補。急遽立候補という状況からかろうじて議席を獲得した。次点の共産党の増田候補に迫られたのは準備不足がたたったということだろうか。
逸見純一新区議は、自民党会派には加わらず、1人会派「自民党」を結成した。
杉並区議会の会派は次の通りになった。
9 自由民主党杉並区議団
7 公明党
6 杉並区議会自由民主党
6 日本共産党杉並区議団
4 立憲民主党・無所属クラブ
4 いのち・平和クラブ
4 自民・無所属・維新クラブ
1 都政を革新する会
1 正理の会
1 わくわく会議
1 共に生きる杉並
1 杉並を耕す会
1 自由民主党
1 無所属
(欠員1)
◆まとめ
公式ホームページによると岸本新区長は次の点を公約に掲げている。
1. 子どもの視点で、子どもの育ちを支えます。
2. 誰もが暮らしやすい地域をめざします。
3.「対話」を大切にしたまちづくりを。
4.豊かな環境と平和を守り、文化を育てます。
5.区民のいのち・くらしを大切に。
「区立施設の統廃合や駅前再開発、大規模道路拡幅計画など、住民の合意が得られないものはいったん停止し、見直す。」とのことである。岸本新区長は、12年間の田中良区政の見直しが求められる。
同時に公用車不正使用疑惑といった田中区長の問題の解明も急がれるだろう。
杉並区議会は逸見純一新区議を含めて48議席(欠員1)。うち岸本与党は共産党6、立憲民主党4、生活者ネット2の計12。他の政党・会派の動向はこれからだろうが、田中良区長のオール与党体制を崩すのは並大抵ではない。岸本新区長の手腕に期待したい。