2024年東京都知事選挙告示直前レポート
2024年6月20日告示7月7日投票で東京都知事選挙が行なわれる。現職の小池百合子・都知事が3選を目指しているが、史上最多となる人数の候補者が乱立。史上稀に見る混戦になっている。しかも、変わった候補、変な候補が次々と名乗り出ており、まさしく“珍獣博覧会”。
それだからこそ、有権者には誤った情報には惑わされず、きちんと候補者を見極めて欲しい。このレポートが都知事選の投票の際の参考になれば幸いである。
◆東京都知事選挙立候補予定者一覧
東京都知事選挙の候補者数は2016年は21人、前回2020年は22人と、毎回のように過去最多記録を更新している。ところが、今回はそれを上回る候補者が出るのは確実だ。すでに50人以上が立候補に名乗りを上げている。
現時点で立候補を表明しているのは次の通り。
前回もそうだったが、出馬表明した候補者が全員実際に立候補するわけではない。だが、それでも40人以上が立候補することになるのではないだろうか。
この立候補者数の増加を受けて、東京都選挙管理委員会は例年以上に多くのポスターを貼ることが出来る掲示板を設置している。
番号は1〜30までしかないが、数字の枠のないところまで含めれば最大48枚貼ることが可能だ。
しかしそれすら足りなくなる可能性が出てきた。いったいどうなるのだろう。
どうやら掲示板の上の方に新たな掲示板を追加するようだ。
〈追記〉
実際に立候補したのは56人だった。佐々木信夫氏、山口節生氏、中谷昌文氏、小西達也氏が立候補しなかった。その代わり、千葉県知事選で小池都知事にプロポーズした加藤健一郎候補、少女のアバターで知られるゲームクリエイターのひまそらあかね(暇空茜)候補、牛窪信雄候補の3名が立候補している。
なお、不足したポスター掲示板についてはクリアファイルを配布し、候補者自身が掲示板の枠外に取り付けるということである。
◆小池百合子東京都知事
なんだかんだで最有力候補と考えられているのが現職の小池百合子・東京都知事である。3期目を目指している。
早くから3選出馬が確実と考えられていた小池都知事だったが、出馬表明は6月11日と遅かった。タイミングを計っていたのだろうか。
5月28日には、東京都の自治体62のうちの52の首長が小池都知事に出馬を要請している。出馬要請しなかったのは世田谷、渋谷、杉並、中野、立川、町田、小金井、小平、多摩、稲城の10の自治体の首長のみだった。そのほとんどが革新系自治体だ。
港区長選などで自民党の候補者が相次いで敗北したことか、与野党対立の構図に持ち込まれないためにも小池都知事は自民党の推薦を求めなかった。政権与党の足並みに配慮して公明党の推薦も求めていない。それどころか自身が特別顧問を務める都民ファーストの会とも距離を置き、無所属で選挙に臨んでいる。
自民党の萩生田光一都連会長は小池都知事を「支援をする方向で考えていこう」と語った。 また、党本部としての推薦ではなく、「確認団体」を設立しての支援を検討しているとのこと。
公明党も小池都知事を「自主的に支援する」としている。
◆蓮舫参院議員
小池都知事の最大の対立候補となるのが立憲民主党の蓮舫・参院議員である。5月27日に立候補を表明した。
蓮舫議員を都知事にという声は、これまでにも何度もあった。特に小池都知事が初当選した2016年の都知事選の時も最後まで出馬の噂が根強かった。同年の参院選東京選挙区で蓮舫議員は1,123,145票を獲得しているから、立候補していればあるいは当選していたかもしれない。
立憲民主党に加え共産党と社民党が蓮舫候補の支援を決定。その他、生活者ネットワーク、緑の党グリーンズジャパン、新社会党も蓮舫候補を推す、野党統一候補となっている。
その一方で、国民民主党や教育無償化を実現する会は、共産党が支援する候補を推すことは出来ないとしている。
蓮舫候補は「政党を通じた政治活動ではなく。無所属で、全ての都民のために働いていきたいと思います。」と立憲民主党を離党した。
◆石丸伸二・前安芸高田市長
広島県安芸高田市の石丸伸二市長(当時)は5月16日に出馬表明している。
それに先立つ5月10日、石丸市長は任期満了に伴う7月の安芸高田市長選挙への不出馬を表明していた。そして6月9日、任期満了を待たず市長を退任した。
1期で市政を投げ出し、任期途中での別の選挙への出馬には批判があったが、都政の方は途中で投げ出してもらいたくないものである。
石丸前市長は日本維新の会と親和性が高いとされている。実際、維新の会は石丸前市長に推薦を持ちかけたが、「完全無所属でいきたい」と断られたという。
維新からは政調会長の音喜多駿・参院議員の立候補を期待する声も大きかったが、結局候補者擁立を断念している。
◆田母神俊雄・元航空幕僚長
5月28日、田母神俊雄・元航空幕僚長が立候補を表明した。
田母神氏は2014年都知事選に出馬し610,865票を獲得している。この時の運動員に報酬を渡していたことが公職選挙法違反(運動員買収)となり、懲役1年執行猶予5年の有罪判決を受けた。また、5年間の公民権停止ともなっていたが、昨年末にようやく回復したばかりである。
田母神候補には右派票の結集が期待される。作家の百田尚樹氏は2014年都知事選では田母神候補を支援していた。しかし、4月の衆院東京15区補選において田母神候補は、百田氏が代表を務める日本保守党の候補ではなく参政党の候補者を応援していた。その参政党も今回は自主投票ということになり、田母神候補は梯子を外されてしまっている。
◆清水国明候補
5月28日、タレントの清水国明氏が立候補を表明した。
清水候補は1970年代にフォークグループ“あのねのね”のメンバーとして活躍。情報番組「噂の東京マガジン」(TBS)では、行政を含め多くの噂の現場を取材しているが、政治家としては正直未知数だ。
2007年都知事選には、やはりタレントの桜金造候補が立候補し69,526票を獲得した。清水候補も知名度があるだけに、ある程度の得票が見込まれる。
◆ドクター中松義郎
6月10日、発明家のドクター中松こと中松義郎候補が出馬表明した。
ドクターは1991年の都知事選に初出馬。以来、都知事選には7回挑戦している。2012年都知事選では129,406票もの得票を挙げている。
ドクターが都知事選に立候補するのは2014年以来10年ぶりとなる。その都知事選の後、ドクターは末期の前立腺癌であることを告白したが、それを克服している。まさに不死身の男だ。
95歳での立候補にも驚きである。誕生日は選挙期間中の6月26日なので、就任時には96歳になる。任期満了時には100歳。これはもちろん史上最年長知事の記録となる。もっとも、ドクターは145歳寿命説を唱えているので、全く問題ない。なんなら10期ぐらいは都知事を務められるだろう。
ドクターは今回、街頭演説は行わない方向だという。その上で、「誰もやったことのない選挙を発明する」とのこと。これは楽しみである。
◆AIメイヤー
AIメイヤーは政治にAIを活用しようという試みで、昨年の真鶴町長選挙にも出馬している。また、中の人は、2014〜22年の多摩市長選挙に出馬した経験もある。
そのAIメイヤーが仰天プランを打ち上げた。それは、大津綾香・みんなでつくる党党首の副知事起用である。
みんつく党ではAIメイヤーを公認・推薦するか党内で協議するとしているが、もしそうなればみんつく党は国政政党であるため、AIメイヤーは“有力候補”の一角として取り上げられることになる。
◆桜井誠・日本第一党党首
桜井誠・日本第一党党首は、3回連続での都知事選出馬となる。
過激なヘイトスピーチで知られる極右候補だが、2016年114,171票、2020年178,784票と、着実に票を伸ばしている。ただ、今回は同じ右派の大物・田母神俊雄候補がいるため、票が分裂してしまうだろう。右派政党が多く候補者を立てた2022年参院選比例区では、日本第一党はわずかに109,045票しか取れなかった。桜井候補個人の票も24,077票。東京選挙区に立てた菅原深雪候補も17,020票と振るわなかった。
◆NHK党・選挙ジャック
政治団体・NHKから国民を守る党(NHK党)の立花孝志党首は都知事選に30人もの候補者を立てるとしていた。立花党首は、この作戦を「選挙フェス」と呼び、30人分のポスター掲示板に「ポスターを貼る権利」を売るという。ポスター掲示板は都内全部で約14,000箇所あるが、その掲示板に選挙に出られない人のポスターを貼るというのである。その費用は掲示板1箇所につき5000円(6月以降は1万円)となる。
4月11日、最初の候補者13人が発表された。しかし5月23日の記者会見で立花党首は、「政治家になるためのステージをわれわれだけで独占するのはよくない」と語り、人数を縮小。最終的に候補者は19人となっている。また、ポーカー党、石丸幸人党、ゴルフ党、「カワイイ私の政見放送を見てね」、覇王党と関連団体の候補も5名いる。
ところで今回の都知事選は4年前のポスター掲示板と比べると番号の位置が異なっている。前回は若い番号が最上段だったが、今回は上から2段目になっている。おそらく候補者が大幅に増えた影響だろう。
候補者は掲示板のどこにポスターを貼るかは、届け出番号順になっている。届け出番号は、立候補受付開始時に集まった候補者は抽選で決まるが、それ以降に立候補を届け出た候補者だと先着順になる。NHK党はおそらく、わざと遅れて立候補を届け出ることで、30人のポスターが並ぶようにするつもりなのだろう。
従来のポスター掲示板であれば、中央部分から下をNHK党で独占することが可能だった。 ところが今回のポスター掲示板だと、NHK党のポスターは上下に分かれてしまう。これではあまり目立たない。なるほど、選管も考えたな。これはうまい作戦だ。
NHK党の立花孝志党首は、今回は敢えて抽選に参加して中央部分にポスターを貼る可能性も示唆している。
立花党首に心変わりさせたのだとしたら、選管もナイスジョブだ。
立花党首によると、19人の公認候補は「厳選」した顔ぶれだというのだが、とてもそうは思えない。2022年参院選東京選挙区の候補者の方がよっぽど厳選された顔ぶれがだった気がする。NHK党からはこのところそういった人材の多くが党を離れてしまっている。人材不足なのだ。
19人の中で大物と呼べるのは元宇都宮市議の遠藤信一候補と、元立川市議の久保田学候補ぐらい。その他、NHK党で選挙に出馬経験があるのは、2023年北広島市議選落選の福原志瑠美候補。22年参院石川・23年越谷市議選落選の山田信一候補。参院宮城・23年横須賀市議選落選の中江友哉候補。23年東大和市議選落選の前田太一候補。参院鹿児島落選の草尾敦候補。参院大分・23年別府市議選落選の二宮大造候補。 23年台東区議選落選の津村大作候補。参院静岡・23年和光市議選落選の舟橋夢人候補。もっともNHK党の候補者の大半は頭数合わせであり、ロクな政策も持っていないと思われる。
こうしたNHK党の掲示板ビジネスは、公職選挙法に違反しているのではないかという意見がある。
公職選挙法第235条の3には次のようにある。
ここではポスターに関しては触れられていないが、普通に考えてアウトだろう。寄付だからセーフというのは詭弁でしかない。
早稲田大学の日野愛郎教授も「当選以外の目的で選挙活動を利用するのは、民主主義への挑戦とも言える行為。有権者の政治不信につながりかねず、野放しにしてはいけない」と指摘している。
また、掲示板ビジネスに反対する署名運動も起きている。
◆福永活也候補
NHK党の福永活也候補は4月の衆院東京15区補欠選挙に立候補して落選していた。しかも福永候補は選挙期間中にエベレスト登頂のため不在で、選挙運動はほとんど行なっていなかった。それでもつばさの党の根本良輔候補よりは高い得票を挙げている。
福永候補は立花孝志党首に言われるがままに出馬を決めたらしい。弁護士だからといって物事がきちんと判断出来るわけでは無さそうだ。
◆久保田学(横山緑)候補
ニコ生主の横山緑こと久保田学・元立川市議もNHKから国民を守る党公認で都知事選に出馬する。
久保田元市議は覆面姿のニコ生主“横山緑”として活動している。元AV男優であり、某美顔器ローラーに「陰毛が入っている」と虚言を繰り返したため、名誉棄損で罰金20万円の判決を受けたこともある。
2018年の立川市議会議員選挙にNHKから国民を守る党公認で出馬。選挙期間中に多摩川で泳ぐなどの奇行を繰り広げたが、下位で当選を果たした。
しかし、2022年の市議選には出馬しなかった。同年の参院選にNHK党公認で比例区から出馬。17,947票で党内順位は5位だった。2023年の統一地方選では品川区議選に立候補して落選していた。
議員辞職後はNHK党のコールセンター長を務めていた。古参メンバーが次々と党を離れる中、未だに立花孝志党首に忠誠を尽くしている貴重な存在だ。
今回、久保田元市議はハンドルネームの「横山緑」名義で出馬を考えているようだ。以前は認められなかったが、今回はどうなるだろうか。
また、都知事選全てで覆面をかぶって運動するとも語っている。立川市議選の際は本人が特定できないからと覆面姿での活動は禁止されたのだが…。
もちろん久保田候補が都知事選で当選する可能性は全くない。だからといって安心していてはいけない。というのも久保田候補は、NHK党の参院比例候補で現在次点となっている。つまり齊藤健一郎参院議員が今後何らかの理由で辞めた場合、彼が繰り上げ当選となるのである。これは恐ろしいことだ。
◆カワイイ私の政見放送を見てね
政治団体「カワイイ私の政見放送を見てね」公認の内野愛里候補もNHK党の支援で立候補する。
内野候補は静岡県出身。カメラマンや飲食店経営を経て、今年ポケモンカードショップを開業した女性経営者だという。
政治団体名の「カワイイ私の政見放送を見てね」というのは確かにインパクトはある。が、都知事になって何をしたいのかがまったく分からない。そもそも「カワイイ」は「私」にかかっているのか、「政見放送」にかかっているのか。まあ、可愛い女性だとは思うのだが、服装も地味でいわゆる“カワイイ系”ではない。31歳で「カワイイ私を見てね」と言うのもだいぶ痛い気がする。いっそのこと恵中瞳さんぐらいには突き抜けて欲しい。
◆ポーカー党、ゴルフ党
NHK党が関連団体として擁立した政治団体には、ワンイシューの政策に特化したものが多い。その代表的なものがポーカー党とゴルフ党である。
ポーカー党は党首の尾関あゆみ候補が立候補する。「日本とポーカーを盛り上げたい」と主張している。
ゴルフ党は代表の小松賢候補を擁立。2020年にNHK党の上杉隆幹事長(当時)の設立したゴルフ党とは別物なのだろうか。ゴルフの普及を目指しているとしているが、実質的にはスマホゲーム「GOLFIN」の普及を目指しているとのことである。
また、お金持ち優遇政策を掲げる。さすがお金持ちのスポーツである。
◆石丸幸人候補
弁護士の石丸幸人候補は、その名も「石丸幸人党」から立候補する。アディーレ法律事務所の創立者で、「行列のできる法律相談所」にも最強弁護士の1人として出演したことがある。やはりNHK党が支援する候補者の1人だ。
出馬会見でNHK党の立花孝志党首は「たぶん、皆さんも(下の名前を)覚えていない。多くの有権者が分からないと思う。40、50人くらい候補者が並ぶと『石丸』と思って書く人がいる。安芸高田市の石丸さんと、お医者さんで弁護士の石丸さんが切磋琢磨していく」と語っている。
NHK党はこれまでにも2020年衆院補選に立憲民主党の田中健元代議士と同名の田中健候補を立てたり、2021年参院選比例区にれいわ新選組の山本太郎代表と同名の山本太郎候補を立てたりと、勘違いを狙った候補者擁立をしている。ただ、いたずらに有権者を混乱させるだけで、成功したとは言い難い。
石丸幸人候補も按分票狙い。悪く言えば石丸伸二候補への減票工作のための立候補である。結局はお騒がせ候補の1人でしかない。
◆加賀田卓志候補
6月14日のNHK党の定例記者会見で立候補が発表されたのが、覇王党公認の加賀田卓志候補である。先週の立花党首と焼き肉を食べたことが立候補のきっかけだったというからあまりに性急すぎる。
福岡県筑後市出身で現在は温泉事業に携わっている。東京の膨大な経済圏を温泉地でつなぐ。温泉地と手を取って経済を回すと主張している。
◆南俊輔候補
NHK党の候補者のトリ(19人目)として6月14日に立候補を表明。これまでにも、2011年中野区議選、18年杉並区長選、23年杉並市議選にいずれも無所属で出馬。2018年沖縄知事選にも立候補を表明したものの出馬はしなかった。いわば実績のあるインディーズ候補である。かつてNHK党は諸派党構想を掲げてはいたが、こうしたベテランのインディーズ候補にはそっぽを向かれ続けていた。そういう意味では貴重な存在である。
「出生率2.1の実現」は杉並区議選でも主張していた公約だが、取ってつけたように「NHKをぶっ壊す!」とも唱えている。
◆後藤輝樹候補
お騒がせ候補と言えば、都知事選に立候補するたびに政見放送が話題になる後藤輝樹候補がいる。3回連続立候補となる彼は4月30日に立候補を表明した。
2016年都知事選の政見放送では、放送に先立って「公職選挙法第150の2の規定をふまえて 音声を一部削除しています」との字幕とナレーションが入った。そして次から次に下ネタを連呼したため、音声をことごとくカットされた。
1983年参院選において、雑民党の東郷健党首は、政見放送で身体障害者が差別を受けたと言う文脈で放送禁止用語を使用したところ、その部分を放送でカットされてしまう。東郷はNHKを訴え、最高裁まで争われた。結局敗訴はしたものの、以降政見放送は削除されなくなった。
政見放送が「言論の聖域」と呼ばれるのは東郷健ら先人の積み上げた努力があったからである。それを瞬く間に無にしてしまう後藤候補の凄さがわかるだろう。
2020年都知事選でもやってくれた。こちらは民放版政見放送。
冒頭で「笑ウせえるすまん」の喪黒福造の真似をしたかと思うと、カメラの前から出ていってしまう。そして、帰ってきたかと思うと、またまた下ネタを連呼して、見事に音声をカットされてしまっていた。
続いてNHK版。
いきなりジャケットを脱ぐとTシャツには「ちんこ主義」の文字。前回の政見放送でカットされた言葉だ。さらに、そのTシャツとスボンを脱ぐとオムツ姿となる。そしてついにオムツまで脱ぎ捨て全裸(に見える)姿となる。
後藤候補は前回の政見放送で音声をカットされたことに触れているのだが、今回はなぜか音声を一切カットされなかった。始まってから終わるまでの5分間、私は呆気に取られてテレビの前から身動き出来なかった…。
2021年千葉県知事選挙の政見放送。
経歴に「彼女との馴れ初めは昨年の都知事選挙」とあったかと思うと、「ちなつさん大好きです。僕はあなたが大好きです。愛してます。」と語り出す。最後は「ちなつさん俺と結婚してください。これまでもこれからも変わらぬ愛を誓います。俺と一生一緒にいてください。…」と彼女にプロポーズした。
このように政見放送で好き放題している後藤輝樹候補。今回はいったい何をしでかすだろうか。
不安でしかない(笑)
後藤候補は都知事選以外にも積極的に立候補している。2021年の葛飾区議選の際には、落選した場合地方へ移住すると宣言。その約束通り長野県茅野市に移住する。その後は居住地を転々としながら、その地の地方議会選挙への立候補を続けている。2023年4月の茅野市議選、8月の秦野市議選、2024年4月の湯河原町議選と相次いで落選した。中でも惜しかったのが茅野市議選。定数18のところ次点の19位と健闘した。
後藤輝樹候補は選挙ごとに政治団体名を変えて立候補している。最初は2017年都議会議員議員選挙での「国民ファーストの会」。小池都知事が結成した都民ファーストの会が国政進出するということを受け、それに先んじて設立された。
2019年神奈川県議選では「横浜都構想を実現する会」。2020年都知事選では「(略称)トランスヒューマニスト党」。2021年千葉県知事選では「SDGs党」。葛飾区議選では「後藤輝樹と世界を変える党」。2022年参院選では「メタバース東京@信州長野県茅野市を玄氣にする会」。秦野市議選では「家庭ゴミ箱有料化に反対」。2024年湯河原町議選では「社会貢献党」。
今回は「ラブ&ピース党」とのことだ。
◆つばさの党獄中立候補
4月の衆院東京15区補欠選挙の際に他候補の演説を妨害したとして、公職選挙法違反(選挙の自由妨害罪)の疑いでつばさの党幹部の黒川敦彦代表、根本良輔幹事長、杉田勇人氏の3名が逮捕された。
つばさの党は当初、都知事選には黒川代表と根本幹事長の2人を擁立する方針であった。ところが、資金難もあって黒川敦彦代表に候補者を一本化することとなった。
黒川代表らは拘留期間が延長されたため、獄中立候補となる見込み。例え逮捕・起訴されていても、有罪判決にならなければ立候補することは可能である。最近だと2023年立川市長選挙に、YouTuber「羽田ゆきまさ」こと金村誠候補が獄中立候補したことがある。
黒川代表は東京15区補選において対立候補の演説にかぶせるように拡声器で怒鳴ったり、街宣車で執拗に追いかけたりと相当に質の悪い選挙妨害を行なった。都知事選でも同様の行為を行なうことを示唆していた。例え黒川代表は獄中にいても、支援者たちが同様の選挙妨害をしてくる可能性は十分考えられるから注意が必要だ。
◆河合悠祐・草加市議
ジョーカー議員こと河合悠祐・草加市議も市議を辞職して都知事選に立候補する。
河合市議は、2021年の千葉県知事選挙に白塗りのピエロメイクで立候補して話題になった。もちろん、惨敗したが、その後NHKから国民を守る党公認で参院選や総選挙にも出馬している。
2022年10月の草加市議選では決意のためにピエロメイクを封印し、見事に当選を決める。
ところが、当選した途端にピエロメイクを復活させる。さすがにピエロメイクでの議会出席は議会によって禁止されてしまったが、現在もピエロメイクでの活動を続けており、“ジョーカー議員”の異名を持つ。
Xでは「街頭演説ではつばさの党なみ?に主要候補者を凸質問しに行きますか?笑」と語っている。もともとNHK党とは親和性の高い候補だけに注意が必要だ。
◆山口節生候補〈不出馬〉
立候補歴20回以上。伝説のインディーズ候補、山口節生先生も今回名乗りをあげている。
私が山口先生を認識したのは1995年都知事選だった。山口先生はその後も2007年都知事選に立候補している。しかし、2016年と2020年の都知事選では立候補表明をしておきながらも結局届け出なかった。2018年沖縄県知事選挙や2019年埼玉県知事選挙でもやはり表明だけして出馬せず、“出る出る詐欺”だと囁かれた。
きっと出馬表明したことでマスコミに取り上げられるだけで満足してしまうのではないだろうか。今回は乱立であるため、例え立候補しても山口先生とはいえ埋もれてしまう可能性が高い。結局今回も出ないことになるのではないだろうか。
◆木宮光喜・未来党副代表
意外なことで騒がれた候補者もいる。未来党の木宮光喜・副代表。この人は噂では田中角栄・元首相の娘だという。ガチだろうか? 確実な証拠は今のところ出されていないが、田中角栄元首相は愛人との間に隠し子がいたこともあるので、あり得ない話ではない。そうなると田中眞紀子・元外相の腹違いの妹ということになる。
木宮候補で話題になったのは「ネサラゲサラ」。
出馬会見で木宮候補は未来党の主要な政策は「ゲサラ法」という国際法に基づいていると語った。彼女によるとゲサラ法とは「Global Economic Security and Recovery Act(世界経済安全保障改革法)の略。
国連加盟国200ヶ国以上が1990年にオランダのハーグの国際司法裁判所において承認した国際法とのことである。
さらに、このゲサラ法は「人類史始まって以来の徳政令」と言われており、これによって全ての借金が帳消しになる。カードローン、教育ローンなどが全てなくなり、消費税以外の税金も全て無くなるという。
これは私個人としては嬉しいことだが、もし実現すれば経済は大きな打撃を受け、会社の倒産も相次ぐだろう。
ネット上ではこの「ゲサラ法」が「ネサラ」と結びつけられている。「ネサラ」とは「National Economic Stabilization and Reformation Act(国家経済安全保障改革法)」の略。もともとは1990年代のアメリカで公表された経済改革案で、所得税や不動産担保ローンを廃止する代わり大幅な消費税を導入するというものである。
アメリカでネサラ法を制定した後にゲサラ法を制定するということが唱えられているが、もしそうなると現在の金融システムや通貨制度は根本的に変わることになる。
すでにアメリカでは連邦議会でネサラ法が秘かに通過し大統領も署名しているとか、911のテロはネサラ法を国民から隠すために仕組まれたものだったとも言われる。つまり陰謀論と深く結びついている。
ようするに「ネサラゲサラ」とは、オカルトの範疇に入る言葉なのだ。果たして大真面目に議論すべきものなのだろうか。そもそも木宮候補の語ったハーグの国際司法裁判所云々というのも眉唾ものだ。だいたい国連加盟国は193ヶ国で200ヶ国もない。
こうなると田中角栄の娘という噂さえも、都市伝説なのではないかと思えてくる。
そして何よりも重要な点は、例え木宮候補が都知事になったとしても、ゲサラ法の実現は出来ない。ゲサラ法は都政ではなく国政に関わる案件だから、そのためには未来党が政権を取る必要がある。
◆アキノリ将軍未満候補
今回の都知事選に最も早く立候補を表明したのはアキノリ将軍未満である。昨年10月には立候補の意志を示しており、2月18日に立候補表明した。
本名は相川絹二郎で、「アキノリ将軍未満」とは何とも人を食ったハンドルネームだ。なお政治団体は「ネオ幕府アキノリ党」である。
民族暦(皇紀)二六八二年(2022)2月、渋谷のDJスペースで「ネオ幕府」の建国を宣言した。
正式名称は「仮幕府/対抗政府共栄圏検討評議会」。その目標は「令和維新幕府」を創設し、令和武士による独裁を行なうことだという。また、「将軍未満」というのは称号で、「自ら征夷大将軍を目指す者」のこと。
令和維新を起こすためには「ネオ戦国状態」の実現が必要で、そこでの戦い方は「将軍未満同士の無根拠な音楽性のマウントの取り合いで、令和維新にもつれ込む」というものだそうだ。はっきり言って理解が全く追い付かない。
アキノリ将軍未満はnoteやブログなどを幾つか管理しているが、その内容は独自の用語を用いて独自の世界観を築いている。従って、それを知らず読んでも支離滅裂にしか感じない。どなたかよくご存知の方に解説をお願いしたい。
ただ1つわかったことは、ようするに“中2病”を引きずっているということ。
アキノリ将軍未満は民族暦二六四六年(1986)東京新宿生まれ。曽祖父に戦後に衆院議員を2期務めた池田清がいるが、その曽祖父のことを調べたのが政治に興味を持ったきっかけだという。
東京国際大学時代に国士舘大学の民族派系サークル「皇国史観研究会」に参加し極右陣営と交流を持つ。卒業後も維新政党・新風や日本国体学会と親睦を深めている。その一方で、極左系ノンセクト・ラジカルが中心となって運営されていたオルタナティブ・スペース「りべるたん」や関西生コンを運営母体とする大阪労働学校アソシエにも顔を出し、極左活動家とも交流したという。
そんな両極端な価値観のぶつかり合いの中から、アキノリ将軍未満はネオ幕府という思想を生み出したのであろう。その思想は一種の共栄主義で、「西洋諸国の価値観を否定し、全ての国家を民族主義による統治体制、日本においては軍事政権である幕府体制での構築が必要」と語る。
彼は「純粋に宣伝のために」都知事選に出馬したとのことだが、どれだけの支持を集めるであろうか。
個人的に一番気になることは、「アキノリ将軍未満」という名前が通称名として認められるかどうかである。
◆安野貴博候補
安野貴博候補はAIエンジニアでSF作家。
作家としては2019年の「コンティニュアス・インテグレーション」で星新一賞優秀賞、2021年の「サーキット・スイッチャー」でハヤカワSFコンテスト優秀賞を受賞している。テクノロジーを通じて未来を描くことをライフワークとしており、「東京の未来のビジョン」を描くことが立候補の最大の目的だという。
出馬表明に対するコメントを抽出し、AIで分析レポートを作成するなど、さっそくテクノロジーを選挙に活用している。
◆大和行男候補
大和行男候補は児童精神科医。
医者らしく政策は医療改革を主軸としているようだ。「クリニックも都知事選もワンオペ」と、1人で選挙戦を行なっているらしい。
◆佐々木信夫候補〈不出馬〉
????中心に活動してきた。自身が代表を務める「次世代の為の自由福祉党」公認で立候補する。
過去には進歩自由連合(1992年参院選・93年総選挙)、憲法みどり農の連帯(95年参院選)、自由連合(98・2001年参院選)、維新政党・新風(22年参院選)の公認を受けたことがある。左派の連帯と、右派の新風のどちらからも出た経験があるというのが、この人のキャパの広さを感じさせる。85歳にして東京の選挙への初進出となる。
◆竹本秀之候補
竹本秀之候補は前回に続いての都知事選出馬。前回は3,997票獲得している。
不正選挙を主張しているが、「あまり言うと自分の命が危ない」とも語る。Xを見ても、基本は陰謀論の人のようだ。
◆内海聡候補
内海聡候補は医者でYouTuber。ハンドルネームは「キチガイ医」。反ワクチンや、「自閉症や発達障害や知的障害はこの世に存在するわけない」などの発言で「トンデモ医者」とも言われる。
内海候補は政治団体「市民がつくる政治の会」の代表も務めている。
やはり医者だけに医療改革・改善を政策のメインに据えている。同じく医者で、参政党を離党した吉野隆明・元共同代表も内海候補を支援している。「小麦を食べたら癌になる」「電子レンジは寿命を縮める」といったこれまたトンデモ発言の吉野氏とのタッグは、まさしく最強だ。
◆小野寺紘毅候補
「忠臣蔵義士新党」なる政治団体から東京都知事選挙に立候補する小野寺紘毅候補は実業家で教育者とのことである。
1989年に企業の経営者が後継者となる息子への教育を行なうことを目的とする「財界二世学院」を設立し理事長を務めている。
それにしてもなぜ忠臣蔵? 赤穂浪士の扮装なのだろうか。
小野寺紘毅候補は、赤穂浪士の1人・小野寺十内の子孫なのだそうだ。その関係もあって、1991年より毎年12月14日の「義士祭」において歌舞伎座から泉岳寺まで赤穂浪士に扮した義士行列を行なっている。私も2018年の義士祭を見ているのだが、この時に大石内蔵助に扮していたのが小野寺候補だったのだ。
政治団体「忠臣蔵義士新党」は今年の5月23日に結成された。
「赤穂浪士の忠義や敬愛の精神を国民平安の道しるべとして、さまざまな困難に対して救援の活動をめざすとともに、国民の生活の向上を図」ることを目標としている。また、「赤穂浪士は死んで生きる道を選んだ。私も一回しかない人生をやるぞ、とそれしかない」とも語る。
都知事選の公約としては、「首都東京防災」と「『戦争』に対する防衛安保」を掲げる。また、「忠臣蔵義士の精神を伝える活動」と「ミャンマーの慰霊活動を続けてきたことでの同国との友好関係の促進」も主張している。
私はこの小野寺候補を見て、故・羽柴誠三秀吉氏を思い出した。羽柴誠三秀吉氏は、青森の不動産王で、豊臣秀吉の生まれ変わりを自称していた。1999年都知事選出馬で名前を売り、その後国政を始め各種選挙で活躍した。2007年の夕張市長選挙では、あと一歩で当選という大健闘。わずか342票差で破れた。2015年に肝硬変のため惜しくも65歳で亡くなっている。
小野寺候補は79歳と高齢だが、今回は95歳のドクター中松も出馬を表明している。小野寺候補にはこれからもぜひとも各種選挙に挑んでもらいたい。選挙に余生を賭けるというのも悪くない生き方だ。
◆福本繁幸候補
6月11日、作曲家でレコード会社Dream Door Records Holdings社長の福本繁幸候補が立候補を表明した。
プロフィールの資格欄には、行政書士や司法書士、宅地取引主任、作業療法士などが書いてあり、すげぇーと思ったら「知識程度に独学」とある。なんだそりゃ?
「この国の老後を支えてくれる。若者を支援していきましょう。」というのを政策の一番に掲げる。
◆野間口翔候補
野間口翔候補は36歳の郵便局員。再度公務員になる夢を叶えたとあるが、公職選挙法により、失職することが確定している。
「供託金1000万円」といった公約がユニーク。
公務員試験の合格通知を載せているのは経歴詐称疑惑のある小池都知事を意識しているのだろうか。
◆新藤伸夫候補
新藤伸夫候補は2013年参院選京都選挙区から出馬した経験がある。当時は「打出党」の候補者であったが、この時の政見放送が伝説となっている。いきなり「私はそのままマイケル・ジャクソンでございます」と語り、自ら作曲したメロディに乗せて国歌を歌い上げた。
今回は「お金をみんなへ シン独立党」から立候補。
◆古田真候補
古田真候補は前回の都知事選に立候補を表明していたものの結局立候補を届けなかった。その後、2021年都議選に町田選挙区から立候補。わずか427票で惨敗している。
彼の政治団体は「土頭を動かし最高裁裁判官5判事を弾劾する党」とやたら長い。ところで、21年都議選の際の政治団体は「土頭を働かし最高裁裁判官5人を弾劾をする党」だったので、微妙に変わっている。
最高裁判事5人を弾劾するというのが公約なのはわかるが、それ以外は何を言っているのかホームページを読んでも正直わからない。
◆中谷昌文候補〈不出馬〉
中谷昌文候補は社会貢献活動家。元中学教師で、熱血教師「なかよし先生」としても知られる。2011年に社会貢献活動家を養成する国際ビジネス大学校を設立し理事長に就任している。
1999年からは親のいない子どもにランドセルをプレゼントする活動を行なっている。「タイガーマスク」の主人公伊達直人の名前を騙ったことから「タイガーマスク運動」として全国各地に拡大したという。
◆桑島康文候補
2022年参院選東京選挙区に「核融合党」公認で立候補。1,913票で最下位落選。23年板橋区議選にも立候補した。
核融合発電所を建設し電力を安価で供給するというのは良いのだが、原水爆を開発することで通常兵力を削減し日米安保を解消というのは冗談にしか聞こえない。それでいて国政政党を目指しているとのこと。
◆小林弘候補
小林弘候補は5月19日に立候補表明。株式会社PLAS代表取締役とのこと。
Xで具体的な政策を聞かれても「6月20日以前に政策等をお伝えするのとは選挙法に抵触する可能性がありますので、現段階では控えざるを得ない状況にございます。」と答えている。真面目かよ。しかし初の立候補でこれだと、有権者に政策を分かってもらえないのではないか。
このレポート投稿直後に確認したところ、小林候補のXアカウントが凍結されていた。
一体何があったのか。どうやら他候補への誹謗中傷が問題となったらしい。
確かにこりゃ酷い。
◆澤繁実候補
澤繁実候補は6月15日に出馬表明した。
彼のホームページを見てビックリした。「現役の織田信長」って何?
澤候補は防衛大卒業後、陸上自衛隊に入隊。その傍ら東京工業大の大学院で人工知能と脳科学を研究した。2019年に自衛隊退官。
2020年に真言宗で得度。また、映画プロデューサーとして、日本文化の世界発信をテーマに映画製作に携わっている。俳優としても今年の4月に上演された演劇集団アトリエッジの「ちはやぶる神の国/異聞・本能寺の変」で主役の織田信長を演じている。だから現役の織田信長なのか。
トレードマークはヒゲと和服。2021年に「ほぼ毎日和服を着る会」を設立し会長に就任している。
政策としては、3人の父親であることもあり、「15歳までの子に毎年100万円支給」、「都主催の天才(ギフテッド)教育無償」、「国民は大御宝。ご皇室に敬意を払う」、「お金がめぐる新東京経済圏構想」、「民族自決、河川沿い開発、江戸城再建、芸術奨励」というものを掲げている。中には都知事の権限ではないものも含まれているし、精神的なものもあるが、小池百合子の「7つのゼロ」だって似たようなものだ。
いっそのこと、ネオ幕府の将軍未満(アキノリ将軍未満)、赤穂浪士の末裔(小野寺紘毅候補)と3人でユニットを組んでみてはどうだろうか。
◆内藤久遠候補
内藤久遠候補は4回連続の都知事選出馬。最多得票は2020年都知事選の4,145票。
元陸上自衛官。初出馬の時に主張していた「都の人口を半分にする」という公約にインパクトがあった。
しかしイロモノなどではなく、しっかりとした政策を述べているのが印象的。
◆向後真徳候補
向後真徳候補は公認会計士。日本の金融危機の時には、金融再生委員会事務局で大手銀行の経営健全化・資本増強を担当。当時、銀行界では税制改革の陰の司令塔、経団連では保育園問題の表の司令塔と言われていたとのこと。立候補にあたって、しっかりとした会見資料を作成し公開している。
小池都知事には国政に戻って欲しいため、その受け皿として立候補するのだという。
残念ながら街頭演説をする予定はないそうだ。
◆小西達也候補〈不出馬〉・穂刈仁候補・桑原真理子候補
小西達也候補、穂刈仁候補、桑原真理子候補は立候補者一覧に名前が載っているものの、ホームページやSNSがなく、どんな候補なのかがわからない。
ご存知の方はぜひとも情報を寄せて頂きたい。
◆小林興起・元代議士〈撤退〉
立候補を表明したものの公示を前に辞退した候補者もいる。
小林興起・元代議士は6月10日、出馬を表明した。小林元代議士は、もともとは自民党に所属していたが、2005年に郵政民営化法案に反対して離党。新党日本から立候補するも、自民党から刺客を送られて落選した。小林元代議士の地盤の東京9区に送られた刺客というのが、小池百合子代議士(当時)だった。
小林元代議士は、その後民主党に移籍し2009年総選挙は比例単独候補で返り咲くも、再び離党し落選。2013年に立ち上げた「つばさ日本」を母体として2019年「オリーブの木」結成に参加し代表に就任した。オリーブの木は方向性の違いにより分裂。現在は黒川敦彦代表の「つばさの党」となっている。小林元代議士は新党やまとを結成し、2021年総選挙に東京9区から立候補するも落選した。
小林元代議士と因縁深い小池都知事との対決が見られることが興味深かったのだが、出馬表明から1週間も経たない6月16日に出馬を辞退してしまった。
田母神俊雄候補と政策協定を結んだとのこと。会見で田母神候補が「保守が大同団結する時だ」と強調すると、小林氏元代議士も「保守が安心して応援できるのは田母神さんしかいない」と話した。
◆宇都宮小穂候補〈撤退〉
宇都宮小穂候補は31歳で2児の母。名古屋出身の元精神科と小児科の看護師とのこと。
現在は活動家として歌舞伎町での清掃ボランティアや、ヤングケアラーやトー横キッズの支援などを行なっているそうだ。
6月16日に立候補辞退を表明。
ストーカーに強姦されたとは心穏やかでない。
◆へずまりゅう候補〈撤退〉
元迷惑系YoTuberの“へずまりゅう”(本名:原田将大)は政治団体名「へずまJAPAN」を設立し出馬した。
へずまりゅう候補は2020年に会計前の魚の切り身を食べたことで窃盗の疑いで逮捕され、懲役1年6月、保護観察付き執行猶予4年の判決が出された。
NHK党公認で2020年の参院山口補欠選挙、無所属で2023年の豊島区議会議員選挙に立候補するも落選していた。
私は彼のXをフォローし、発言をずっと追っているが、彼の言動は今も迷惑系YouTuberの頃と変わらない。何一つ反省していない。
報道によると彼は、「都知事選には小池百合子さんや蓮舫さんらが出てきているがみんな口だけで、『政治で遊ぶな! 国民をなめるな!』と言いたい。」と語っている。いやいや、彼にそっくりそのまま「政治で遊ぶな! 国民をなめるな!」と言い返したい。
また、Xでは「東京都知事選にまともな人がいないから」と立候補理由を語っているのだが、まともでない人にそんなこと言われても説得力がない。
さらに「100%当選する未来しかない」とのことだ。もしそうなったら東京は終わりだが、幸いなことにそんな未来は100%来ない。
まあ、落選しても彼のことだから、豊島区議選の時のように「選挙に負けたけどSNSで勝った」みたいな屁理屈を言ってくるのだろう。なお彼はSNS引退宣言を行なっているが、これも毎度のことで、今や宮崎駿の引退宣言並みに誰も信じていない。
Xには彼が自腹で払うという供託金300万円を持った写真をあげているが、これを払った結果貯金ゼロになり、生活も苦しくなったという。「落選したらホームレス確定」なのだそうだ。
まさか、供託金のお金しか用意していなかったのだろうか。それではその後の選挙戦を戦うことすらできない。しかも間違いなく落選するのでホームレスは確定である。
へずまりゅう候補が都知事選でどう暴れるのか、内心楽しみにしていたのだが、6月19日に突如撤退を表明した。家バレして嫌がらせを受けたというのだが、出馬しないという賢明な選択をしたところから、彼にも多少の良識はあることがわかった。
◆候補者見送りの政党
ここまで候補者が乱立していても、候補者を立てなかった政党もある。
日本維新の会は先にも述べたように、石丸伸二・前安芸高田市長を支援する方針であったが、固辞されたこともあり候補者擁立を断念した。
参政党の神谷宗幣代表は「党内でいろいろ意見があって、出すべきとの声もあったが、(衆院東京)15区の選挙をやったばかりですし、なかなか大きのな選挙戦。あまり選挙に出て、名前を売るみたいなことばっかりをやっている党だとも思われても困る」と党公認の独自候補は擁立せず、自主投票とするとした。
もっとも、神谷代表は田母神候補について「どうぞみなさん、応援してください」と、個人としては応援するとしている。
日本保守党の百田尚樹代表は、「勝算は非常に難しい」として、「今回は見送りが正しいという結論に達した」と語った。ただ、これは支持者の間でも賛否が分かれている。
過去3回都知事選に候補者を立てたこともある幸福実現党も今回は候補者を立てないようだ。前回、七海ひろこ候補は選挙戦途中で「マスコミの報道の不平等」を批判して撤退を表明したが、今回も状況は変わらないだろう。党創設者の大川隆法総裁が昨年3月に亡くなったが、鶴の一声を失ったことで、今後は選挙の規模を縮小していくことも考えられる。
日本国民党の鈴木信行代表(元葛飾区議)は2014年都知事選では田母神候補の陣営に入っていたが、今回は自主投票。勝てる候補に投票先がないからだという。
◆なぜ過去最多更新なのか
再三述べているように、今回の都知事選は史上最多の立候補者数となる見込みだ。
これまでの都知事選の当選者と候補者の人数は次の通りとなる。
これまでは現職が退任した後の都知事選で候補者が増えるという傾向があった。当選のチャンスと思うのだろうか。ところが、ここ3回は回を追って候補者の数が増えている。最多記録となった前回は現職の小池都知事が盤石で当選の見込みは低かったにも関わらずだである。どうやら最近の候補者は、必ずしも当選を目的とはしていないようなのだ。
NHK党の立花孝志党首は、ポスター掲示板にポスターを貼る権利を販売しているが、それは都知事選が宣伝になるからである。ポスター掲示板は都内全14,230箇所。それに加えて選挙公報が都内全世帯に配布され、政見放送も1人5分30秒、NHKと民法で公共の電波を使って放送される。供託金300万円を払えば、都民1億4千万人に広くアピールすることが可能になるわけだ。これを安いと考えるか、高いと考えるか。
◆2020年都知事選結果
4年前の都知事選の結果は次の通りだった。
22人の候補者のうち供託金返還となる得票率10%を超えたのは小池百合子、宇都宮賢児、山本太郎の3候補のみ。小野泰輔候補はあと738票足りなかった。19人が供託金300万円を没収されている。
落選者にとって供託金300万円に見合った宣伝効果はあったのだろうか。落選者のうち、その後国会議員となったのは山本太郎候補(21年総選挙・23年参院選当選)、小野泰輔候補(21年総選挙当選)、齊藤健一郎候補(22年参院選繰り上げ当選)の3人のみ。地方議員に当選したのもスーパークレイジー君こと西本誠候補(21年戸田市議選当選→当選無効、23年宮崎市議選当選→辞職)しかいない。
後は、21年葛飾区議選などで落選の後藤輝樹候補、23年渋谷区議選落選の込山洋候補、23年中野区議選落選の市川浩司候補、23年八王子市議選落選の押越清悦候補と、いずれも地方議会選挙ですら当選出来ていない。
確かに西本誠候補や、国民主権党の平塚正幸候補は都知事選後に知名度が向上したといえるのだが、その理由は必ずしも都知事選に出たことではない。むしろその後に起こした事件やスキャンダルのほうが理由だろう。石井均候補、長澤育弘候補、牛尾和恵候補など、都知事選後まったく噂を聞かなくなった人も少なくない。
都知事選を通して1億4千万人の都民にアピールをした結果がこれである。わざわざ300万円をかける意味があるのか、私にははなはだ疑問である。それだけのお金があるなら、もっと違う宣伝方法があるのではないか。
◆都知事選得票予想
最後に、まだ告示前で候補者が出そろっているわけではないのだが、各候補の得票予想を立ててみたい。
大量の候補者の内おそらくマスコミで“有力候補”とされるのは、現職の小池百合子・都知事、蓮舫・参院議員、田母神俊雄・元航空幕僚長、石丸伸二・前安芸高田市長、清水国明候補の5人かと思われる。
まず、基礎票となるのが前回2020年都知事選の得票。上位5人と、ホリエモン新党の3人の候補者の得票の合計は次の通り。
前回、小池都知事は366万票もの得票を挙げたが、今回は経歴詐称疑惑もありさすがにそこまではいかないだろう。実際、目黒区長選挙や衆院東京15区補欠選挙では小池都知事が支援した候補は落選している。せいぜい2016年初当選時の291万票ではないか。しかも今回は、女性である蓮舫候補、右派の支持の厚い田母神候補、同じタレントである清水候といった小池都知事と支持層の被る有力候補が多く存在している。女性票約20万票が蓮舫候補に、右派票約40万票が田母神候補に、タレント票約10万票が清水候補に流れると予想して、小池都知事の得票は220万票前後になると予想。
一方、蓮舫候補は反小池票である宇都宮候補の84万票と山本太郎候補の65万票を併せた149万票が基礎票。そこに小池都知事から流れた女性票20万票を加えて約170万票。これは2010年参院選での彼女の得票と同じくらいである。
石丸伸二・安芸高田市長は維新の会とも親和性が高いという。とはいえ維新推薦ではないので前回の小野泰輔候の約61万票には届かない。また、ネット上では高い知名度を誇っていても、全都的にはまだまだ無名。せいぜい50万票に届くかどうかだろう。
田母神俊雄候補は2014年は61万票を獲得している。しかし4年前は今と違って悪いイメージが無く、しかも当時は10歳若かったことを考えると、今回の得票がそれを超えるとは思えない。取れて50万票。前回は小池都知事に流れていた右派票を奪うことにもなるだろう。同じく右派候補の櫻井誠候補の票もこちらに流れるだろう。
清水国明候補は知名度はあるが、2007年の桜金造候補が6万票だったことを考えると、それよりは多い約10万票か。同じタレント候補の小池都知事から票が流れると予想。
櫻井誠候補は4年前は17万票という大健闘を見せたが、今回は右派票を田母神候補に奪われ苦しい。2021年参院選で日本第一党の菅原深雪候補は1万7千票しかとっていない。下手をすると5万票を下回る可能性もある。
4年前、立花孝志党首らホリエモン新党の候補者3名は合計5万票の得票だった。今回はNHKから国民を守る党公認で19名。関連団体を含めて24名が立候補する。みんなでつくる党との分裂騒ぎなどでNHK党の評判はかなり地に堕ちている。いくら候補者をかき集めても5万票には届かない。3万票行けば良いほう。
ドクター中松義郎は毎回10万票前後獲得しているが、今回は候補者乱立で10万票には届かない。6、7万票。
その他、都知事選では毎回数名が2~3万票を獲得している。今回も内海聡候補や安野貴博候補のように比較的知名度が高い候補者がいる。一方、イロモノ系は話題にはなってもせいぜい1万票に届くかどうか。
そんなわけで、各候補の得票予想は次の通り。
小池百合子都知事有力というのは変わらないが、その差は約50万票。近年では青島幸男候補が石原信雄候補に勝った1995年都知事選の47万票差とホボオナジ接戦だ。蓮舫参院議員にも勝つ可能性は十分にある。もし蓮舫候補が落選すると、「2位じゃダメなんですか」との合唱が巻き起こることは必至。
鍵を握るのは石丸、田母神、清水の各候補。彼らの当選は難しいが、彼らが両候補からどれだけの票を奪うかによって戦況は変わってくるだろう。まだまだ投票日まで時間がある。その間に風がどう吹くかでも、結果は大きく変わってくる。
◆おわりに
東京都知事選の告示日がいよいよ6月20日に迫った。選挙前から選挙に関係ないことで盛り上がっているきらいもあるが、どんな形であろうと都知事が話題にあがることはいいことだと、長年選挙を見ている立場からはそうも感じる。ただ、それだけに誰に投票するのか、しっかり見極める必要があるだろう。
そのためにはまず候補者のことを知って欲しい。選挙公報、選挙ポスター、政見放送、選挙公報などを読み、候補者の情報を収集して欲しいと思う。そしてもし気になる候補者がいたら、街宣に出かけて候補者と会ってみることをお薦めする。街宣のスケジュールをホームページに挙げている候補も多いからそれで確認して欲しい。そうして実際に会って、一言二言でいいから声を交わして貰いたい。そうすればその候補者がどのような人なのか、人となりがわかるだろう。もし何らかの困っていることがあれば、候補者に直接お願いしてみるのも良い。私は小池都知事が「多摩格差ゼロ」を主張していたことから、必ず候補者にそのことをお願いしている。横柄な態度だったり、ロクな答えをしてくれない候補者も時折いるが、そういう候補者には投票しなければいいまでだ。
今回、NHK党のポスター販売ビジネスで、ポスター掲示板が有名無実化する可能性がある。しかし、そういった部分も含めてポスター掲示板を見て欲しい。
政見放送も候補者乱立により、放送時間は計10時間にも上る見込み。さすがにそれを全部見ろとは言えないが、少しだけでいいから見て欲しい。やはり今回の選挙の異常さがわかるだろう。
ブログ「栄光なきドン・キホーテ」やXでも、都知事選の期間中は出来る限り都知事選の情報を発信していくつもりである。
この「2024年東京都知事選挙告示直前レポート」についても、今後候補者についての新たな情報が入り次第内容を更新してしていこうと思ってくいる。また、誤り等あればコメントで知らせて頂きたい。
みんなで東京都知事選挙を盛り上げ、そして楽しもうではないか。