2023年足立区長選挙・区議会議員選挙レポート
5月14日、足立区長選挙・区議会議員選挙が告示された。つい先日、 統一地方選挙が終わったばっかりだが、足立区では毎回この時期に区長選と区議選が実施される。1999年、共産党系の区長だった当時の吉田万三区長の不信任決議が可決されたため、6月にやり直しの区長選が実施された。以来、足立区の選挙は統一地方選挙より少し遅れて実施されている。
◆足立区長選挙候補者
区長選挙に立候補したのは次の通り。
5選を目指す現職の近藤弥生区長に、野党系の西山千恵子候補が挑む。4年前に引き続き、女性候補同士の激突となった。
もっとも、現職に共産党系の新人が挑むという形では、勝敗は始めからわかっているようなもの。正直、盛り上がりに欠けるものだった。
◆足立区議会議員選挙候補者
一方、区議会議員選挙は定数45に64人が立候補する激戦となっている。
党派別では次の通り。
現有17議席の自民党と、13議席の公明党が引き続き議会過半数を維持出来るかどうかが焦点となる。
4年前は候補者が次点で破れた日本維新の会は、新人3人を立てる攻めの姿勢。
統一地方選で躍進した参政党とれいわ新選組も候補者を立てて議席の獲得を狙っている。
4年前、NHKから国民を守る党は区内に居住実態のない26歳の加陽万里布候補者を問題定期のために敢えて擁立した。8番目の得票となる5,548票を獲得したものの、当選資格がないことから得票は無効とされていた。今回は、26歳の井前聖良候補を擁立してきた。井前候補は元々、政治家女子48党の所属だが、今回「井前せいらと次世代あだち」の公認候補として立候補している。先日の統一地方選で旧NHK党の候補者のうち都内で唯一当選したのが「次世代あらかわ」名義で立候補した夏目亜希党首だけだったことに倣っているのだろう。おそらくNHK党関係であることを隠す“ステルス候補”として選挙戦を戦うつもりなのだろう。
統一地方選でNHK党と政治家女子48党の候補者が共倒れとなったことを受けて、半年前から足立区議選に向けて準備していたNHK党の黒瀬信明氏を直前に下ろしている。黒瀬氏はこれが原因か、うつ病を発症。NHK党からも離党している。
その他、諸派では日本改革党と、渡辺喜美元代議士率いる「みんなの党」が候補者を立てている。このところずっと候補者を立てていた緑の党は、今回候補者擁立を見送った。
◆足立区長選挙・区議会議員選挙ウォッチ
足立区長選・区議選を見るために、綾瀬駅に降りた。さっそく駅前では何人かの候補者が演説を行なっていた。
自民党現職で3選を目指す伊藤信之区議。
公明党現職で4選を目指す佐々木雅彦区議。
候補者のポスターを眺めてみた。井前聖良候補のポスターには、NHK党や政治家女子48党を匂わせる記述は微塵もない。
むしろ26歳の若い候補者であることをアピールしている。
この井前候補に会えないかなと期待していたのだが、ちょうど外宣車が綾瀬駅前を通りかかった。助手席では井前候補自身がマイクを握っていた。
ポスター掲示板の井前候補のすぐ隣には日本維新の会の川村美琴候補のポスターがある。やはり26歳と若い。NHK党としては若い女性候補で男性票を獲得しようとの目論見だったのだろうが、これは井前候補にとって強力なライバルだ。
井前候補と川村候補のポスターが並ぶと、実にフレッシュ。もっとも、足立区というとどうしてもフレッシュなイメージはないのだが…。
今回、日本維新の会からは27歳の富田健太郎候補も立候補している。
維新は4年前は唯一の候補だった口石竜三候補が次点で落選しているが、今回は野沢哲也候補を含め3人を擁立する。
美人候補としては、今回再選を目指す立憲民主党の銀川裕依子区議がいる。38歳の社会福祉士。
4年前は見事トップ当選を果たしている。
都民ファーストの会は4年前は新人の中島晃一郎候補がギリギリ最下位で当選を果たした。都民ファーストの会の後藤奈美都議の夫で、今回再選を狙う。
都民ファーストの会は、他にも佐藤愛候補を推薦している。
第3極も候補者を立てている。統一地方選で躍進したれいわ新選組は今回初めて候補を擁立した。高橋繭美候補。
同じく参政党は加地正尚候補。
ユニークな候補も多い。その1人が松丸誠・みんなの党元区議。民主党、みんなの党を経て、日本維新の会公認で初当選も、4年前は立憲民主党に移籍して立候補して落選していた。今回は、渡辺喜美・元代議士率いる政治団体「みんなの党」から立候補している。
綾瀬駅東口で松丸元区議が外宣しているところを見た。
夫婦別姓、同性婚、LGBT法案など何でも“大反対”と主張。立憲民主党にいたことがあるとは思えない程のゴリゴリの極右。チラシやポスターには「推薦人」としてSNSインフルエンサーの名前があるのだが、その顔ぶれたるや「海乱鬼」、「にこ姉」、「闇のクマさん世界のネットニュースch 」と、一癖も二癖もあるような連中ばかりだ。
松浦克行候補も極右政党の日本改革党から立候補。日本改革党はNHK党所属だったこともある沓沢亮治・前豊島区議(代表)が2021年に設立している。
宮島絵里香候補は、昨年の参院選に東京選挙区から立候補して落選した乙武洋匡氏が推薦する。乙武氏は統一地方選では千代田区議選で富山葵弓候補を応援し、見事当選させている。乙武氏は今後の政界進出を見据えて、影響力をつけようとしているのだろうか。
橋本孫美候補は元ヤクザで、YouTuber「ホンチの在日アングラ塾」とのことである。
残念ながら区長選の候補者には会えなかった。綾瀬駅東口には、西山千恵子候補の政治団体の外宣車はいたのだが、西山候補自身は不在だった。
ちょうどそこへ近藤弥生区長の外宣車が差し掛かったが、こちらにも近藤区長は乗っていないようだった。
◆2019年足立区長選挙・区議会議員選挙結果
4年前2019年の結果はどうだったのか。
区長選挙。
現職の近藤弥生区長が共産党推薦の大島芳江元都議を大差で下している。
区議選。
NHKから国民を守る党の加陽麻里布候補の得票が0票となっているが、これは加陽候補が足立区に住民票がなく、投票無効とされたからである。実際には5,548票を獲得していたという。
◆足立区長選挙・区議会議員選挙開票結果
5月21日、足立区長選挙・区議会議員選挙が投開票された。投票率は共に42.79%。区議選の候補者数が4年前より増えたにも関わらず前回の42.89%を下回った。
区長選の結果は次の通り。
予想通り大差で、現職の近藤弥生区長が5選を決めた。
一方の区議会議員選挙の結果は次の通り。
党派別では次の通りとなる。
自民党は現職5名を含む7名が落選。前回よりも4議席も下回る惨敗を喫した。
公明党が13人全員当選した結果、第1党の座を明け渡すこととなった。
共産党は1議席減に留めたものの、かつて足立区議会で与党だったころとは比べ物にならないほどの凋落ぶりである。
母子で立候補して話題となった西之原親子は、娘の夢真候補が当選したのの、現職の母の恵美子区議は議席を失い、揃って当選とはならなかった。
立憲民主党は前回と同じ3議席だったが、銀川裕依子区議が4年前に引き続きトップ当選。しかも4年前より1000票以上得票を増やしている。
日本維新の会は、川村美琴候補が3位、富田健太郎候補が4位で当選。
野沢哲也候補を含めて全員当選となった。
都民ファーストの会の中島晃一郎区議も今回は危なげなく当選。推薦の佐藤愛候補も当選した。
また、初めて候補者を立てたれいわ新選組の髙橋繭美候補、参政党の加地正尚も当選。近いうちに行なわれる総選挙で両党が台風の目になりそうな予感。
「井前せいらと次世代あだち」の井前聖良候補は2,906票を獲得するも、次々点に終わり当選ならなかった。足立区の開票速報では、一時期当選圏に入っていたことから、期待されたものの、結局届かなかった。
候補者は1人に絞り党名を隠しても当選出来ず、NHK党はますます窮地に陥ったといえる。今後どのように打開策を練るのであろうか。
松丸誠・みんなの党元区議、松浦克行・日本改革党候補、宮島絵里香候補はいずれも落選。最下位は橋本孫美候補だった。どうやら今回の選挙はいわゆる“イロモノ”系に厳しかったようだ。結果となった。
日本維新の会を離党し、4年前は立憲民主党から立候補して議席を失った松丸誠・元区議は、今回は渡辺喜美元代議士率いる「みんなの党」から立候補した。足立区民の良識もまだまだ捨てたものではないようだ。
◆偽ブランド販売容疑
しかしながら当選したばかりの新人議員に不祥事が起きてしまった。立憲民主党公認で初当選した和田愛子候補が、3月に偽ブランド品販売容疑で書類送検されていたことが発覚したのである。
和田候補は偽物のアニエスbのバッグをフリマアプリで8,300円で転売し、2,115円の利益を得たという。和田候補は略式命令を受け、罰金20万円を支払った。
このことに批判が集まり、和田候補は5月24日に所属していた立憲民主党からの離党を表明。だが事態を重く見た立憲民主党は、和田候補を除名処分としたうえで、議員辞職を勧告した。和田候補は当初は議員辞職は否定していたが、結局26日になって辞職を表明。その日が足立区議会の任期の開始日はだったことから、和田区議はわずか1日での辞職という事になった。
無免許運転で交通事故を起こしたことが理由で辞職した木下富美子・前東京都議を思い出す。だが、和田区議の場合、事件を隠していたことへの不信感はあるものの、既に罰金を払って解決済みでもあり、さほど問題であったようには思えない。しかも4ヶ月もの間、議員辞職を拒み続けていた木下前都議とは違い、すぐに辞職している。
まだ38歳と若い。しっかり反省して、再出発してもらいたい。
和田区議の辞職に伴い、足立区議選では次点だった自民党の吉岡茂・前区議が繰り上げとなった。その結果、公明党と自民党が共に13議席で第1党となったのである。
また、井前聖良候補が次点となった。3ヶ月以内に、誰か1人でも議員が欠ければ繰り上げ当選の可能性がある。
統一地方選で宇都宮市議選に立候補し、次点で落選したNHK党の遠藤信一・前市議は、当選した2名の市議の居住実態が怪しいと異議申し立てをしているという。井前陣営も今後同様の訴えを起こしてくる可能性がある。
ただ、NHK党は4年前の足立区議選では、足立区内に住民票のない加陽万里布候補を立てており、得票が無効となっている。松田美樹・元新宿区議、嶋谷昌美・元東大阪市議の場合も、居住実態が無いことで当選無効となった。今更NHK党に居住実態をどうこうという権利はないのではないか。だいたい井前候補自身が3ヶ月前に足立区に来たばかりの落下傘候補であることを感がえると、むしろ井前候補の方にこそ後ろめたいことがありそうである。
井前候補には、告示前に自身の名前の入った襷を使用した公職選挙法違反の疑いが起きている。井前陣営は「井前せいらと次世代あだち」という政治団体の襷であって問題ないとしているが、今後問題が大きくなる可能性もある。
足立区長選挙・区議会議員選挙をウォッチするのは4年ぶりである。今回もまた外野も含めて盛り上がった選挙だったのではないだろうか。
これからも足立区の様子はきちんと見ていく必要があるだろう。今回当選した近藤区長も、議員たちも、見ている人がいるのだから慢心せず、しっかりと区政に取り組んでいって欲しいと思う。
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