(寄稿)2020年三宅村議会議員選挙レポート
都内では2月9日に離島・三宅島の三宅村議会議員選挙が実施された。さすがの私も現地までウォッチに行くことは出来なかったため、レポートを書く予定は無かった。しかし、三宅島を紹介するブログ「あしたば白書」に掲載されていた島の選挙の様子が大変興味深く(ただし、著者自身は本土在住)、許可をもらってここに転載することにした。
◼️東京都三宅島とは
三宅島は東京都に所属するの離島である。本土から南に約180キロ。アクセスするには竹芝埠頭から船で約6時間。あるいは、調布飛行場から飛行機で約1時間かかる。島の大きさは55.2 6㎞2、人口は2,419人(2月1日現在)である。
三宅島は雄山を中心とした火山の島で、有史以来たびたび噴火してきた。「三宅」とは、「御焼け」の意味だという説もある。近年でも1940年、62年、83年、2000年と噴火しており、2000年8月の噴火の際は全島民が島からの避難を余儀なくされた。避難生活は5年間にも及び、2005年に帰島が認められたものの人口は噴火前の3分の2に留まっている。
三宅島には現在、三宅村が1つあるだけである。もともとは阿古村、伊ヶ谷村、伊豆村、神着村、坪田村の5村あった。1946年に伊ヶ谷、伊豆、神着が合併して三宅村が発足。1956年には残りの2村も三宅村に併合された。
◼️桜田昭正村長・無投票当選
三宅村の現在の村長は桜田昭正氏である。2012年の村長選で前村長らを破って村長に就任した。
前回2016年は立候補者が他に誰もおらず、桜田村長が無投票で再選している。
村長選と村議選は2月4日に告示されたが、村長選には桜田村長以外に立候補者がなく無投票で3選を決めている。対立候補が立つとの噂は以前からあったのだが、結局立候補者はいなかった。
◼️村議選告示
一方の村議選は、定数8に10人の立候補者があった。
所属政党は公明党と共産党の公認候補が各1名。そして自民党推薦候補が3名。残り5名が無所属である。現職8人全員と新人2人が立候補した。新人のうち島崎候補は前回に続いての立候補となる。
◼️2016年村議選結果
前回の村議選の開票結果は次の通りである。
前回は現職が3人しか再立候補せず、新人が7人立つという混戦であった。開票の結果、現職の浅沼村議がわずか5票差で落選している。
今回は現職が全員立候補しているので、2人の新人候補には厳しそうな予感である。特に新人の北川候補は阿古地区の在住だが、同じ阿古には谷、沖山雄一、沖山肇、佐久間の各議員が住んでいるため、票が分散しそうである。ちなみに他の候補者は、水原議員が神着、平川議員と木村議員が坪田、石井議員が伊ヶ谷、島崎候補が伊豆在住である。(写真はすべて2016年村議選のもの)
◼️三宅村・ネット選挙
三宅島の人口は2400人であるから島民は候補者の事をよく知っている。そういった事情もあるからだろうか、選挙にネットを活用している候補者は少ない。
そんな中、一番熱心に情報を発信しているのは沖山雄一議員であった。Twitterでは選挙戦の様子をこまめに報告している。
沖山雄一候補は平野祐康・前村長や、平野辰昇・元村議会議長が応援しているとのことである。
島崎広光候補のブログ「三宅の島ちゃん」は普段は三宅島の名所などを紹介しているが、選挙戦の様子も述べている。
公明党公認の木村靖江議員は公式ホームページを持っているものの、現在はほとんど更新されていない。
共産党公認の平川大作議員は共産党東京都委員会のホームページの中で紹介されている。
◼️村議選当落予想
三宅村の2月4日現在の有権者数は2,124人である。前回同様投票率が70%台だとすると、投票総数は約1500票となる。
過去の選挙のデータから基礎票は公明党は170票、共産党150票と予想される。自民党の基礎票は約500票なので、推薦の谷、石井、沖山肇議員にそれぞれ150~170票ずつ行くだろう。
木村議員は唯一の女性候補、谷議員と石井議員は前回1位と2位のツートップだったこともあり、それぞれ前回同様200票台に乗せると予想。残りの約600票をその他の5人で分け合うと、当選ラインは120票前後となる。前回最下位当選の佐久間候補の得票が116票。そこに新人の北川候補が食い込むことが出来るだろうか…。前回81票の島崎候補は苦戦が予想される。
◼️村議選開票結果
2月9日に投票された三宅村議会議員選挙。即日開票され、8人の新しい村議が決定した。
開票結果は次の通り。投票率は76.85%だった。
トップ当選は新人の北川博史候補であった。北川候補は、阿古にある「キタガワ商店」の店長である。北川候補は阿古の青年団でも活躍しており、若者たちが地域を超えて支援したことが当選に繋がったと考えられる。前回トップ当選の谷寿文・村議会議長が前回より3票減らしただけであったにも関わらず、それを40票も上回っているのだから、北川候補の人気は相当のものだ。
自民党推薦の3人の候補の今回の得票の合計は568票で、4年前の687票を大きく下回っていた。特に前回2位当選だった石井肇・村議会副議長が前回より100票減らしている。
公明党の木村議員、共産党の平川議員は、参院比例区での公明党と共産党の得票を上回る得票を挙げた。共に組織票を手堅くまとめあげたという印象である。ただ、木村候補は前回の得票より75票も得票を減らしている。自民党推薦の3候補と木村候補の減った票を足すと200票近くになるが、これらの票の大半は今回北川候補に流れたと考えられる。
今回の当落ラインを120票と予想していたが、最下位当選の沖山雄一議員が123票で、ほぼ予想通りであった。しかし今回落選した候補者はいずれも100票に届かず、沖山雄一候補とは30票以上も差をつけられている。
前回最下位当選だった佐久間正文議員は永らく三宅島を離れていたこともあり、もともと組織力が弱いと言われていた。どうやら彼自身もそれを自覚していたようで、2018年頃からポスターを貼ったり外遊するなどの選挙活動を行なっていた。しかし結果は前回より50票以上減らしての最下位に終わっている。
島崎広光候補も前回に続いての落選。前回より12票増やし次点にはつけたが、当選には遠く及ばない結果だった。島崎候補はもともと北海道生まれで島外出身ということもあり、島社会の中で支持を広げることは難しいのかもしれない。
◼️三宅島の未来へ
三宅島の雄山の噴火の周期は約20年と言われているが、前回の2000年噴火から間もなく20年を迎えようとしている。来るべき災害に備えなくてはならない。
また、全島民の4割近くにも上る高齢者のための生活環境の整備も必要となっている。
そして、前回の選挙の時から多くの候補者が述べていたが、観光産業の充実の必要もある。例えば、噴火以降立ち入りが禁止されている雄山の火口付近の観光が間もなく条件付きで解禁になるとのことである。三宅島の魅力をアピール出来れば、島はより活性化していくことになるだろう。
今回当選した8人の新議員と、無投票で当選した桜田昭正村長には、これからも三宅島をより良くして欲しいと願う。
◼️2022年三宅村議会議員補欠選挙
2022年1月31日、東京都三宅村議会議員補欠選挙が行なわれた。
定数8名のうち村議2名の辞職に伴うものである。水原光夫村議は病気のため村議会をずっと欠席していた。また、前回最下位当選だった沖山雄一村議も辞職している。
定数2の補欠選挙には3人が立候補した。
島崎候補は過去2回、村議選で落選。今回が3度目の挑戦となる。また、佐久間候補は6年前の村議選で初当選したものの、前回落選して議席を失っていた。
果たして、開票の結果は…。
曽我部候補が初当選。また、佐久間候補も返り咲きを決めた。島崎候補はまたしても議席には届かなかった。
今回当選した議員の任期は2024年2月までとなる。少しでも島の発展に寄与して欲しいと願う。
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