2023年都議会議員(大田区)補欠選挙レポート
5月26日告示、6月4日投票で都議会議員補欠選挙(大田区)が行なわれた。
◆都議会議員補欠選挙(大田区)立候補者
自民党の鈴木晶雅都議(当選)と都民ファーストの会の森愛都議が大田区長選挙のために辞職したことに伴う補欠選挙で、定数2に6人が立候補した。
区長選で落選した森愛・前都議が、自身が辞職したことが理由の補欠選挙に再出馬してきたことから疑問の声があがった。国会議員であれば、自らが辞職した選挙区の補欠選挙に出馬することは禁じられているが、地方議員の場合その限りではない。とはいえ、区長が駄目だったから都議というのでは理屈が通らないのではないだろうか。森前都議は「お寄せいただいた期待を、(次の区長選がおこなわれる)4年後まで放置することはできない」ことが再出馬の理由だと語る。
都民ファースト会の尾島紘平都議によると、区長選に際して森前都議は「完全無所属」、「小池知事の政策方針に反しない」、「都議補選では都民ファ候補を応援する」という3点を制約していたという。ところが、実際には区長選では立憲民主党と共産党の支持を受け都民ファーストの会の推進するJR蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐ新空港線(蒲蒲線)にも反対の立場を取っていた。そして今回3つめの約束を破り、自ら補選に出ることで都民ファーストの会の候補者と対決することになったのである。
その都民ファーストの会は、2021年都議選で次点だった奥本有里候補を擁立した。父親は俳優の秋野太作、母親は元タカラジェンヌの温碧蓮だそうだ。
自民党は21年都議選で落選した鈴木章浩・前都議を擁立。鈴木前都議は、2014年に塩村文夏都議(現・参院議員)が少子化問題について答弁している際に、「自分が早く結婚したらいいじゃないか」というセクハラヤジを飛ばしたことで問題になった。2017年都議選では議席を守ったものの、前回議席を失っていた。
今回の補選の候補者6人のうち、実に5人までが2021年の都議選に出馬している。
唯一初出馬となったのが、日本維新の会の細田純代候補。区内の工場の3代目社長とのこと。ただ維新の会は都議会唯一の議席を大田区に保持している。もしここで細田候補が勝ってしまうと、再来年の都議選での候補者調整が難航する可能性がある。
溝口晃一候補は、統一地方選では区議選に立候補して落選していた。ポスターには「断固!無所属 政党渡り鳥はもういらない」と書いてあるのだが、彼自身、みんなの党(2011年区議選)→闘う改革の会(2015年区議選)→オリーブの木(2019年参院選)と渡り歩いている。これは自戒の念だったのか…。
原忠信候補は71歳。同じく区議選に続いての出馬。都議選に出馬するのはこれが3度目となる。
自民党と都民ファーストの会が議席を維持するのか。それとも、他の候補が食い込むのか。激戦となりそうな予感。
◆大田区都議会議員補欠選挙ウォッチ
都議会議員補欠選挙(大田区)をウォッチした。
大森駅前で日本維新の会の細田純代候補が街宣を行なっていた。地元、大田区選出の区議会議員らがビラを配っていた。
この中に見覚えのある顔が。参院選東京選挙区で立候補した経験もある海老沢由紀氏だ。
応援演説に日本維新の会の小野泰輔代議士が立った。
そこに、細田純代候補が登場。女社長だと聞いていたので勝手に偉丈夫を想像していたのだが、思っていたよりも小柄で可愛らしい感じだった。
ちょこまかと落ち着きなく動く細田候補と、通行人にも動じず淡々と演説を続ける小野代議士。なんとも言えない不思議なコンビネーションだ。
続いて、蒲田駅へ。こちらでは、都民ファーストの会の奥本有里候補が街宣中であった。
なかなかの美人。これで46歳、23歳と17歳の2人の息子を育てたシングルマザーだというから驚きだ。
おまけに声が綺麗。さすがは俳優だった両親譲りといったところ。なんだかずっと聞いていたいと思わせるような声だった。
結局、今回会えたのはこの2人だけだった。
◆大田区都議会議員補欠選挙投開票
6月4日(日)、東京都議会議員補欠選挙(大田区)が投開票された。
投票率は25.33%。開票結果は次の通りとなった。
森愛・元都議と、鈴木章浩・元都議の2人が見事返り咲きを決めた。新人候補たちは及ばなかった。
昨年の参院比例選の各党の大田区内での得票と比較してみたい。なお参院選の投票率は56.02%で、今回の倍以上となっている。
今回の都議選の投票率で計算すると、自民党は約4万6千票となる。ところが、鈴木候補の得票はそれよりも6千票も少ない。おまけに、国政でタッグを組む公明党の票がまったく加わっていないことになる。公明党は次期総選挙では自民党候補の推薦をしないことを決めているが、その辺りの影響もあったのだろう。
一方、森候補は立憲民主党と共産党の支援を受けており、それらの票は併せて約3万票。そこからかなりの上乗せとなった。公明党の票は約1万6千票となるが、そこからそれをほぼ吸収した計算になる。
細田純代候補を公認する維新の会は約2万3千票。奥本有里候補を公認する都民ファーストの会は参院選には候補者を立てていないが、推薦する国民民主党は約1万票となっている。共に票を伸ばした。
実を言うと私は、自身が辞職した選挙に出馬するという不可解な行為の森候補と、セクハラヤジ問題の鈴木候補には厳しい結果になるのではないかと予想していた。結果的に値下げ予想を大きく外してしまった。
◆これからの都議会
森元都議は都議会では1人会派「東京の緑を守る会」を立ち上げた。
都議会の会派構成は次のようになる。
前回の都議選は2021年7月に実施されている。従って次の都議選は2025年7月頃。今回の補選はちょうど任期の折り返し地点に差し掛かるところで実施されたことになる。また、都知事選挙が2024年に予定されている。今回の補欠選挙の結果はそれらの選挙の戦略にも大きな影響を与えることになるだろう。
確かに自民党は公明党の支援なしで当選した。ただ、大田区はもともと公明党が都議会に2議席を持っており自民党候補も推薦無しで戦っている。つまり都議会全体での影響はわかりにくい。
一方、森元都議が立憲民主党と共産党の支援で当選したことは大きい。都議選では前回同様候補者を一本化する動きが加速するかもしれない。
都民ファーストの会の奥本候補は、小池百合子が応援に立つなどしたものの4位に終わった。森元都議が離党したこともあり、都民ファーストの会は大田区での議席を失った。2度都民ファーストの会で当選した森元都議は知名度も高く、相変わらず都民ファーストの会の候補だと勘違いした有権者もいたのかもしれない。
日本維新の会の細田候補は次点で善戦だといえるのだが、前回松田龍典都議が獲得した票は29,701票。細田候補の票はさほど増えておらず、他党の支持者への浸透が全く計れなかった。2年後も維新は大田区で議席を獲得することは出来るかもしれないが、他地域にも勢力を広げるにはまだ課題が残ると言え。
都内の情勢はまだまだ流動的であるだけに、各党ともこれからの2年間の振る舞いが大きく影響してくるはずである。
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