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藤井五冠、戦略的千日手
一般的に棋士は実戦の棋譜やソフトを利用して自らの研究手順を拡げ、深めて行ってます。
その中には当然、対局中に指されなかった読み筋も入ってますから、その量は膨大なものになると思われます。
基本的にはその研究が詳細であればあるほど、中終盤までとどく深さがあればあるほど、相手に対して有利になることは、全棋士がほぼこの研究合戦に参加している以上間違いはないでしょう。
ここからは個人的な推論になりますが、その研究の中で千日手や持将棋になる順が増えているのではないでしょうか。双方が最善を尽くせば評価がイーブンになる地点を目指すことになり、究極は千日手であり持将棋だからです。そして当然ですがその地点から先の研究は不要になると。
藤井竜王の高みを目指す新しい景色に、つまり研究を重ねれば重ねるほど千日手や持将棋に行き当たる確率が増えるので、否応なく入りこみそのブラックホールは大きくなっているのでは。
ゲームは違いますが、チェスは囲碁や将棋に比べて引き分けが多く、また先手が有利なゲームとして知られています。上位者の対戦概ね200万局を調べたところ、勝率は白(先手)が85万回勝利で38.8%、黒(後手)が65万回勝利で29.8%でした。なんと引き分けは69万回の31.4%で後手勝利より多い!というデータもあります。
チェスは将棋より盤面が狭く、駒数も少なく、取った相手の駒を使えないなど、複雑性は段違いです。
しかしそれ故ソフトでの解析がそれだけ進んでいることでもあります。
あくまで可能性の問題ですが、今後ソフトでの解明が進めば将棋の先手・後手勝率と引き分け率がチェスのそれと近似してゆくことも十分あり得るかと。
つまり後手番としてはまず引き分け狙いで進めてゆき、先手がそれを打開しようとした瞬間を捉えてその隙を突くといった戦略が普通になる・・・事実「角換わり」など比較的研究の進んでいる戦型は今や手待ちの巧拙が勝敗を分けるような状況も見られます。
前回の藤井棋聖と永瀬王座の棋聖タイトル戦第一局では千日手が二回続きましたが、その傾向はトップ棋士同士の研究が進んで実力伯仲になればなるほど、発生頻度は高まるかと。
確かに熱戦、接戦と捉えれば・・・しかし頻出すれば、結着が付かない、遅れる、といった理由で将棋の興行・運営面ではマイナス要因かも知れません。
棋士もそうですが、観戦するファンも今後は体力勝負か・・・