藤井三冠、時間が足りない他
直近の糸谷八段戦、横山七段戦と後手番の相掛かりの将棋を評価値カーブがいわゆる藤井曲線を描くような完勝ペースで勝てたのは、今後の王将リーグや竜王タイトル戦を戦う上で非常に大きいものがありました。
ソフトの評価値といえば、数日前の週刊新潮で森下九段が「最近の若手はソフトの手順を記憶して対局している、一方古い世代は記憶力が衰えるのでどうしても分が悪い。」との趣旨の発言が記載されてました。
この記事は「昇り龍の藤井三冠、不振にあえぐ羽生九段」の文脈の中での抜粋です。確かにソフトが研究に本格的に活用される前に比べて、古い時代の棋士は苦戦を強いられてる状況にはあります。しかしソフトの手順を記憶してそれを実戦で指して勝てるほど甘くはないと考える次第です。
つまりソフトの評価値と手順を体感として感覚として納得できるのか?それだけ自分自身の読みが試されている部分が見逃されているのではないかと。
はっきり言ってしまえば、古い世代が営々と棋譜並べと実戦で鍛え上げてきた大局観や感覚がソフトによって切り開かれる将棋の新たな地平に合わなくなってきているのではないでしょうか。
羽生九段が自らのAI論で述べておられるように、「ソフトはその示す評価値と手順が何故導き出されたのかを説明しません。」しかし、若手はその差を埋めるために自らの読みで掘り下げているわけです。
藤井三冠は様々な戦型の互角とされる局面から、ソフトと実際に対戦しているそうです。(強度設定は若干緩めにはしているそうですが)対戦した後はそれをソフトで検証しながら納得がゆくまで読みを深めるのだと思います。
納得し体得しているから研究から外れてもで応用が効くのです。
言葉では簡単に言えますが、実際の作業は膨大なものになります。(藤井三冠の高速、大量の読みの能力を持ってさえ・・・)時間が足りない!過密な対局日程だからなおさらです。
それでも研究しないとたちまちの内に置き去りにされるほど、現代将棋の進化は速いのです。トップレベルで競う棋士としては対局の無い日は一日10時間以上は研究に没頭しないとその位置を維持することが難しい時代になっているのでしょう。
睡眠、リラックスタイム、体調管理がますます重要な要素として意識せざるをえない棋士達はまさにアスリートのような生活に近づいているように思います。
2021年度可能対局数残: 41局 10/01現在(敬称略)
順位戦22年03月 06局○○○○○○(今期5勝,1敗,次 郷田真隆 10/19)
JT杯戦21年11月 02局本戦○○(今期1勝,次 永瀬拓矢 11/03)
竜王戦21年11月 07局タイトル7*○(今期5勝,挑決1早失,次 豊島将之 10/08,09)
銀河戦21年12月 05局本戦○決勝トーナメント○○○○ (次 佐々木勇気 10/14)
王将戦22年02月 12局挑決リーグ○○○○○タイトル7*○(今期3勝,次 広瀬章人 10/04)
朝日杯22年02月 04局本戦○○○○
NHK杯22年03月 05局本戦○○○○○(次 深浦康市 10/31)
合計 41局(トーナメント全勝、挑決とタイトル戦フルセット勝利)
今期初可能対局数 100局
今期勝ち数計 30勝(勝率 0.833、振り駒勝率 0.473 9:10)
今期負け数計 6敗
今期喪失局数 18喪失(棋戦敗退による対局喪失)
今期早失局数 5早失(番勝負早期決着による対局喪失)
今期防衛・奪取棋戦:
棋聖戦21年07月 棋聖防衛 対渡辺明 (今期3勝,2早失)
王位戦21年08月 王位防衛 対豊島将之(今期4勝,1敗,2早失)
叡王戦21年09月 叡王奪取 対豊島将之(今期8勝,2敗)
今期敗退棋戦:
王座戦21年10月 本戦1回戦●×××タイトル5*×(今期1敗、8喪失)
棋王戦22年03月 本戦●×××挑決2*×タイトル5*×(今期1勝,1敗、10喪失)
今期対戦結果:
2021/04/09 ○ 広瀬章人 叡王戦 八段戦 決勝 (先手 相掛り)
2021/04/16 ○ 八代弥 竜王戦 2組 ランキング戦 決勝(先手 矢倉)
2021/05/06 ● 深浦康市 王座戦 本戦 1回戦(後手 矢倉)
2021/05/13 ○ 三浦弘行 順位戦 B級 1組 1回戦(先手 横歩取り)
2021/05/17 ○ 行方尚史 叡王戦 本戦 1回戦(後手 矢倉)
2021/05/31 ○ 永瀬拓矢 叡王戦 本戦 2回戦(後手 雁木)
2021/06/03 ● 稲葉陽 順位戦 B級 1組 2回戦(後手 角換わり)
2021/06/06 ○ 渡辺明 棋聖戦 タイトル戦 1回戦(後手 相掛り)
2021/06/13 ○ 屋敷伸之 順位戦 B級 1組 3回戦(後手 相掛り)
2021/06/18 ○ 渡辺明 棋聖戦 タイトル戦 2回戦(先手 相掛り)
2021/06/22 ○ 丸山忠久 叡王戦 本戦 準決勝(先手 一手損角換わり)
2021/06/26 ○ 斎藤慎太郎叡王戦 本戦 決勝(後手 角換わり)
2021/06/30 ● 豊島将之 王位戦 タイトル戦 1回戦(先手 相掛り)
2021/07/03 ○ 渡辺明 棋聖戦 タイトル戦 3回戦(後手 矢倉)
2021/07/06 ○ 久保利明 順位戦 B級 1組 4回戦(先手 四間飛車)
2021/07/10 ○ 山崎隆之 竜王戦 本戦 準々決勝(後手 相掛り)
2021/07/14 ○ 豊島将之 王位戦 タイトル戦 2回戦(後手 角換わり)
2021/07/22 ○ 豊島将之 王位戦 タイトル戦 3回戦(先手 角換わり)
2021/07/25 ○ 豊島将之 叡王戦 タイトル戦 1回戦(先手 角換わり)
2021/07/30 ○ 石田直裕 王将戦 二次予選 2回戦(先手 相掛り)
2021/08/03 ● 豊島将之 叡王戦 タイトル戦 2回戦(後手 角換わり)
2021/08/06 ○ 八代弥 竜王戦 本戦 準決勝(後手 矢倉)
2021/08/09 ○ 豊島将之 叡王戦 タイトル戦 3回戦(先手 角換わり)
2021/08/12 ○ 永瀬拓矢 竜王戦 挑戦者決定戦 1回戦(後手 三間飛車)
2021/08/16 ○ 稲葉陽 王将戦 二次予選 決勝(後手 角換わり)
2021/08/19 ○ 豊島将之 王位戦 タイトル戦 4回戦(後手 相掛り)
2021/08/22 ● 豊島将之 叡王戦 タイトル戦 4回戦(後手 相掛り)
2021/08/25 ○ 豊島将之 王位戦 タイトル戦 5回戦(先手 相掛り)
2021/08/30 ○ 永瀬拓矢 竜王戦 挑戦者決定戦 2回戦(先手 相掛り)
2021/09/02 ○ 斎藤明日斗棋王戦 本戦 2回戦(先手 相掛り)
2021/09/13 ○ 豊島将之 叡王戦 タイトル戦 5回戦(先手 相掛り)
2021/09/17 ● 斎藤慎太郎棋王戦 本戦 3回戦(後手 角換わり)
2021/09/20 ○ 木村一基 順位戦 B級 1組 5回戦(先手 相掛り)
2021/09/25 ○ 千田翔太 JT杯戦 本戦 2回戦(先手 相掛り)
2021/09/27 ○ 糸谷哲郎 王将戦 決勝リーグ 1回戦(後手 角換わり)
2021/09/30 ○ 横山泰明 順位戦 B級 1組 6回戦(後手 相掛り)