適切なダイヤグラムの引き方①
「鈍足化」相次ぐ大規模ダイヤ改正
今年は各地の鉄道会社で、大きめのダイヤ改正が相次いでいます。
昨今の利用状況の急激な変化により、列車の運用を見直していることによる物ですね。
特に目立ったのが「最速列車の鈍足化」です。
例を挙げればたくさんありますが、全体的に「末端区間での各駅停車化」が進んでいるように感じます。
これにより何が起きるかと言えば「速達効果の均等化」、すなわちこれまで各駅停車のみ停車だった駅の利便性が向上し、自社ブランド価値が向上することが期待されるわけです。
京急の格差事例
上り各停の方が早い。
実は京急の各停は、下りと上りで所要時間が違うのはご存知でしょうか?
日中時間帯の場合、品川~浦賀間の各停は、上りの方が 約20分早いです。
もうこれだけでも、京急のダイヤが複雑怪奇なことが伝わるのではないでしょうか。
京急は現在(2022年10月)最速種別である快特が5分間隔で運転されています。横浜方面と羽田空港行きが交互に10分間隔で走っているためで、非常に高頻度運転です。
各駅停車はこの超高密度の優等列車の合間を縫って走らなければならず、半分の10分間隔での運転です。
快特の最初の停車駅・京急蒲田までの間には9駅もありますが、この間に2本の快特に抜かれるのが一般的なダイヤとなっています。
これによって何が起こるかと言えば「物理的に近い駅の方が所要時間がかかる」という、時間と距離の逆転現象が起きているのです。
たとえば京急蒲田の1つ手前の梅屋敷の場合、品川から各停で素直に向かった場合17分かかりますが、快特で京急蒲田から戻った方が14分程で到着できてしまいます。
例:
各停 品川11:01発→ 梅屋敷11:18着(所要17分)
快特 品川11:00発→ 京急蒲田11:06着13発→梅屋敷11:14着(所要14分)
しかも、停車本数が各停駅が毎時6本に対し、京急蒲田は18本です(快特12、各停6)。
快特停車駅と各停停車駅で、両極端な格差が生まれてしまっているのです。
次回のダイヤ改正でどう変わる?
今回の改正では、快特の半分が特急に格下げとなります。品川~京急蒲田間では、青物横丁と平和島に停車するようになるため、平和島で特急各停の緩急接続が行われる予定です。
全列車が必ず、というわけではないとは思いますが、途中駅での各停↔優等列車への乗換がしやすくなるはずです。
この他、神奈川新町でも緩急接続が行われるでしょうから、横浜周辺の各停停車駅も便利になることでしょう。
まだ詳細な時刻は、正式には発表されてはいないようですが、これほどの規模の改正だと前々から準備していたと考えるべきでしょう。
改正実施1ヶ月前の突然の発表でしたが、準備は進めていたようです。
※実際のダイヤとは異なる可能性があります。
空港線・途中駅↔品川方面は1本で行けなかった。
そのほか現在のダイヤの場合、空港線・途中駅から品川方面は必ず乗換が必要となっていました。というのも、空港線の各駅停車役を、エアポート急行が担っているからです。
これによって何が起こったかと言うと、空港線・途中駅↔品川方面は、必ず乗換が必要になってしまったのです。
改正前の逗子行きエアポート急行は、京急蒲田で必ず横浜方面行きホーム1番線に入ります。これは進行方向が変わるため、横浜方面に入れる線路がそこしか無いからです。
品川方面へ行くには、下の階のホームの4・5・6番線の電車に乗り換える必要があります。
ところが、現在のダイヤだと、エアポート急行が到着すると同時に、本線の快特が発車してしまうんですね。少し遅れていたら運よく乗継できるかもしれませんが、まず難しいでしょう。
後続の快特は羽田空港発の快特であり、エアポート快特だった場合は京急蒲田は通過してしまいます。
そのため、基本的には京急蒲田では10分後の快特に乗り継ぐのが正解なあけです。ちょっと待ち時間が長いですよね。
しかもその間に、品川方面の各駅停車が奥の5番線から発車します。
これがなかなかにトラップで、「そこにいたのか!」と駆け込んでしまうと、先ほども説明した通り、途中で2本の快特に抜かれてしまいますから、品川に着くのが更に8分遅れてしまう、というわけです。
次回のダイヤ改正でどう変わる?
今度は、エアポート急行の半分が特急に格上げとなりますが、空港線内はどちらも各駅停車なので特に変わりません。
かわりに品川方面発着となるため、空港線途中駅から乗換なしで品川方面に行けるようになる、というわけです。
今度は品川方面ホーム4番線に入線するようになりますから、品川方面各駅停車に乗り継ぎたい場合は同じ階のホームでの乗換となり、簡単になります。
また、エアポート急行は横浜方面、特急は品川方面とわかりやすくなります。それぞれ20分間隔ではありますが、現在に比べれば利便性は良くなったと言えるはずです。
もちろん下りについても同様です。
この空港線特急、元々は品川~羽田空港間の快特でしたから、末端区間各停化&鈍足化の典型例と言えるでしょう。
とはいえ、特に空港線途中駅沿線の人にとってはかなり便利になるはずです。
今後羽田空港利用者が増えてきたとしても、当面維持されてもいいダイヤなのではないかと、個人的には思います。