タイム増シ~ン
世界人口が100億人を突破した人類は、深刻な食糧不足に直面していた。
食味で一番好まれていた牛も、そのゲップに含まれているメタンガス(温室効果ガス)の大量放出と言う問題を抱えており、簡単に増やすわけにはいかなかった。
ホルモン剤で成長を早める研究も、食品安全の観点から中止され、タンパク質の供給は、昆虫へと移りつつあった。
そんな時、研究発表されたのが「タイム増シ~ン」である。
太陽風が弱まると宇宙線が強く地上に届くことが知られている。つまり、太陽の影響(太陽時間)が弱まると、宇宙からの影響(宇宙時間)が大きくなり、時空の歪みに太陽風と宇宙線をバランス良く当てることで、時間の流れを2倍に早めることが出来ると言うのだ。
和牛は通常、生後30ヶ月で出荷されるが、15ヶ月の出荷で生産能力が2倍になる計算だ。
研究開発が進み、これで食糧問題は解消されると期待されたが、研究は中断された。
太陽の黒点活動が沈静化したことで、太陽風と宇宙線の共鳴で時空に歪みが生じ、何もしなくても、地球時間が2倍の速度になったのだ。
おかげで生産能力は倍増し、食糧不足は解消へと向かっていった。
しかし、それ以上に食糧不足が解消された原因は、人類の平均寿命も半分になったことが大きく影響したことは言うまでも無い。
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