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本音屋さん     【ショートショート】

この店を出てくる人は、みんなスッキリした顔をしている。
溜まっていた本音を吐き出したからだろう。

しかし、暫くすると閉店してしまった。
たまりに溜まった本音の処分が出来ず、保管倉庫がイッパイになったかららしい。

最初は、焼却処分をしていたのだが、どうも苦情が出たようだ。
焼却場の風下の地区から、ストレス性の頭痛を訴える住民が多数出たのだ。
それも、焼却した後の数日、特に風の弱い曇り空の日に集中していた。

保健所は、調査の結果、この地域の住民が訴える頭痛は、本音の焼却ガスが影響しているとの推測を発表した。

そもそも「本音」は物質では無い。エネルギーの一種のようなモノなので、熱を加えても分離拡散するだけらしい。

ストレスの溜まりやすい社会の中で、その発散方法は、早急に解決する必要に迫られていた。

そんな時、食品殺菌機器を製造している企業の研究が、世界からの注目を集めた。
研究の結果、紫外線を含む青い光を当てることで「本音」が分解するとの報告がされたのだ。

さっそく試作機が造られたが、実用化には至らなかった。
その光は、自然光に近く、特に晴天の太陽光に酷似していることが分かったからだ。

そう、「本音」を青空に向かって叫ぶことで、自然に消滅するのだ。

どうも、青い空を見上げると気分が爽快になるのは、そのためらしい。

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