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【壁を愛すスリ】    #毎週ショートショートnote

人類が火星に立ってから千年以上が経つというのに、
犯罪は消えることがない。

悪事に向かわせる遺伝子も特定されたが、
個人情報を国が管理することへの反発が大きく、
その後の研究はストップしたままだ。

しかし、
逃走を繰り返してきた体は
逃げおおすための進化を遂げている。
代表的な進化は、
狭い隙間に逃げ込むことが出来るようになったことだろう。

特に、
レンガやコンクリート壁の狭い路地が多いヨーロッパで顕著にみられ、
握りこぶしが入れば、
すり抜けることが出来る体に進化している。

ワールドニュースにこんな記事が載った。

財布を抜き取る瞬間を見つかったスリが、
10㎝足らずの隙間に滑り込んだものの、
途中で少し膨らんでいた壁に挟まりました。
重機での救出も検討されましたが、
ビルの所有者の同意が得られず、
犯罪者に税金を使うなとの世論もあり、
壁に挟まれたままで刑期を過ごすこととなりました。
今では観光地化され、
「壁を愛するスリ」
の看板が立っています。

(407文字)

進化は良い方向だけとは限りません。
特に昨今においては「騙す」ことの技術の発達は目まぐるしい進化を遂げています。
手の進化が技術を発展させたなら、逆に技術の発展が体を進化させても不思議では無いでしょう。
ただ、技術の発展が体を退化させない様にと、私は強く願っています。


たらはかに(田原にか)さんの#毎週ショートショートnoteに参加しています。
今回は裏お題に参加


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